硯(すずり)や屋根の材料として知られる雄勝石の新製品「雄勝の濡(ぬ)れ盃(さかずき)」が19日、先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議歓迎レ セプションの展示で初めて披露される。東日本大震災被災地の素材を生かした商品を国内外にPRするとともに、東北の日本酒の需要拡大にもつなげたい考え だ。
出展するのは雄勝石を最先端の加工技術で削った平たい杯(直径10センチ)と深底のぐい飲み(同5センチ)。滑らかな質感で、水に触れると器が灰色から光沢を帯びた黒色に変わる。保湿性、保冷性に優れ、冷酒用の器に適しているという。
雄勝石の需要は震災前の6割程度にとどまる。雄勝硯生産販売協同組合(宮城県石巻市雄勝町)の沢村文雄理事長は「食器など新しい用途を広く知ってもらう機会になればうれしい」と期待を込める。
大崎市の官民でつくるNPO法人「未来産業創造おおさき」が、東北大大学院の堀切川一男教授(摩擦学)の指導を受け、2015年5月ごろから商品化を生産 販売組合や加工業者らに働き掛けた。課題だった雄勝石を2ミリ程度に薄く削る技術を、金型製造のキョーユー(美里町)が今年1月に確立させた。
濡れ盃は被災地の産業振興や宮城の日本酒のPRにつながることなどから、仙台国際センター(仙台市青葉区)で開かれる歓迎レセプションへの出展が決まった。会場には、G7財務相をはじめ関係者ら約600人が来場する。
堀切川教授は「酒を目、指、唇、舌で楽しめる最高の器で、酒飲みにはたまらないはず。贈答品として日本人はもちろん外国人にも喜んでもらえる」と太鼓判を押す。
未来産業創造おおさきは、1個の製造に24時間かかる生産性を改善し、本年中にも受注販売をスタートさせる。連絡先はしまぬき022(223)2370。