auもiPhone販売でアンドロイド逆風、端末メーカー黄信号

米アップルが「iPhone(アイフォーン)4S」を発表し、国内ではKDDI(au)も販売に乗り出すことで、日本の携帯電話端末メーカーが窮地に追い込まれそうだ。日本のスマートフォン市場は、米グーグルのOS(基本ソフト)「アンドロイド」を搭載した端末がシェアでアップルを上回る。だが、KDDIのアップル参戦は、日本勢の販売戦略に立ちはだかる。アイフォーンの販売に弾みがつけば、国内市場が奪われ、海外進出のもくろみも崩れかねない。
 9月に行われたKDDIの新機種発表会。主力機種として紹介されたのは台湾HTCや米モトローラの機種で、これまでKDDIに貢献してきたシャープなど国内メーカーの端末は存在感が薄かった。NTTドコモでも、韓国サムスン電子や英ソニー・エリクソンが人気機種。アイフォーン頼みのソフトバンクだけが9月の発表会で、シャープやパナソニックの端末を新型モデルとして発表した。
 4Sは外観が現行の「4」とほぼ同じで、市場や投資家には「期待はずれ」に映ったとされる。だが、心臓部品や基本ソフト(OS)を刷新して基本性能を高めている。
 背景には、性能の向上が著しいアンドロイド端末に対抗する狙いがあるとみられる。アイフォーンは機種別で主要国の大半でトップの販売シェアを誇るものの、基本ソフト別シェアではアンドロイド端末の約42%に対し約27%と劣勢という事情があるためだ。
 アンドロイドを搭載している日本の端末各社は、アンドロイドに勢いのある間に日本でのシェア固めをしておきたい。かつて従来型の携帯で競争に敗れ、海外から相次ぎ撤退してきた日本メーカーにとっては、「国内の土台を固めたうえで、スマートフォン市場の拡大にあわせ海外に再進出し、規模を拡大することが生き残りの絶対条件」(大手メーカー)だからだ。日本各社にとって、KDDIによるアイフォーン発売は、その勢いに水を差しかねない。
 米国では今年2月、それまでのAT&Tに続いてベライゾン・ワイヤレスがアイフォーンの販売を開始。アップルは1~3月に過去最高となる1865万台を世界で販売したが、ベライゾンは220万台を売り、販売増に大きく貢献した。
 MM総研の横田英明取締役は「日本の消費者はスマートフォン=アイフォーン、という意識が特に強い」と語る。KDDIが日本で販売を始めることは、ブランド力で抜きんでたアップルが米国以上に販売を伸ばす可能性があり、アンドロイド勢にとって高い壁になりそうだ。

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