携帯電話向け音楽配信サービス「着うたフル」の利用数が、KDDI(au)分だけで1億曲を突破した。サービス開始から2年3カ月で大台到達。携帯電話が音楽プレーヤーとしての地位を確立し、売り上げはCDシングルをしのぐまでに成長、音楽業界も重要な楽曲提供手段として注目している。KDDIに先行を許したNTTドコモやソフトバンクモバイルも対応端末を充実させており、市場のすそ野は急速に広がっている。(小雲規生)
着うたフルは、楽曲を丸ごと携帯電話にダウンロードできるサービス。KDDIが平成16年11月に他社に先駆けて開始した。通信速度の向上やデータ通信定額制の導入などを背景に利用者を伸ばし、サービス開始から1年半で5000万曲を突破。その後、1億曲到達まで9カ月と加速している。KDDIは「想像以上のペースで浸透した」(メディアビジネス部)と“誤算”を喜ぶ。
■音楽業界も刺激
日本レコード協会によると、パソコン・携帯電話向け音楽配信の売上高は昨年10~12月実績で初めてCDシングルを上回った。売上高の9割は着うたフルと、その前身にあたる「着うた」が占めるという。その一方で、CDシングルも売り上げを維持。音楽業界にとっては新たなドル箱市場が創設された格好だ。
音楽配信会社「レーベルゲート」の村田知樹企画開発部プロデューサーは「中高生は、携帯電話のスピーカーで友達と一緒に音楽を聴くといった楽しみ方をしている」と指摘する。
ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)やエイベックスなどの大手は、ドラマの主題歌を放送開始に合わせて提供したり、アルバム発売前に収録曲の1曲を先行配信するなど、プロモーション活動への力の入れ具合も違ってきた。
■新たな定番に
先行したKDDIは、「音楽に強い」とのイメージもあいまって、新規契約の純増数で3年連続トップを快走中だ。昨年12月からは動画付きの音楽ビデオの配信など、新たなコンテンツの提供にも乗り出した。
当初、音楽配信に懐疑的だったライバル2社も、ソフトバンクモバイルがボーダフォン当時の17年8月に着うたフルをスタート。NTTドコモも18年6月から配信を始め、追撃の度合いを強めている。
着うたフルの1曲あたりの料金は着うたの倍以上の300円程度と割高だが、競争激化はサービス合戦も加速する。新たな定番に成長した携帯向け音楽配信の勢いは当分、止まりそうもない。
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