宮城県内の産学官金連携組織「みやぎ自動車産業振興協議会」は、2030年度まで10年間の自動車関連産業集積に向けた行動指針「みやぎ自動車産業振興ビジョン」を作成した。20年度までの前指針で掲げた「車づくりが根付く」から、「車づくりを深化させる」へと一段高い目標を設定。世界的に生産が拡大する電気自動車(EV)市場への参入を促す新たな施策は盛り込まれなかった。
ビジョンは前指針の「みやぎ自動車産業振興プラン」の期間が20年度で終了したことを受けて、ことし7月に策定した。
30年の自動車関連の製造品出荷額を1兆2605億円(18年比18%増)、付加価値額を4916億円(15%増)と明記。10年間を第1期(21~24年度)、第2期(25~27年度)、第3期(28~30年度)に分け、第1期の目標を記した。プラン期間中の成果指標と実績も添付した(表)。
「10年間で300件以上の新規受注」を目標指標に掲げた前指針では、期間中に468件を受注し「目標を大幅に上回るなど、着実に成果が上がっている」と総括。コンパクトカーの生産拠点化が進む一方、取引維持や新規参入の難しさを今後の課題に挙げた。
ビジョン下の具体的な取り組みとして、新規参入を目指す企業に自動車部品の機能などを解説する技術研修、次世代自動車技術の情報を提供するセミナー、トヨタ自動車東日本や大手部品メーカーのOBによる技術助言といった事業の継続を盛り込んだ。
CASEに代表される大変革が進んでいることにも触れ「付加価値をさらに高めていくことで、生産拠点として『車づくりを宮城で深化させる』段階へとステップアップを図ることが必要」と目指すべき姿を提示した。
また「世界各国で電動化目標が設定され、ガソリン車の市場縮小は避けられない」などとEVシフトへの言及はあったが、変化に対応する明確な考え方や新たな施策は示されなかった。
協議会事務局を務める県自動車産業振興室は「(各種研修会やアドバイザー派遣など)施策の仕組みは変わらないが、扱う内容をアップデートしていく」と説明している。
[CASE(ケース)]インターネットとつながる(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェアリング(Shared&Service)、電動化(Electric)の頭文字を取った次世代自動車技術の総称。