二酸化炭素(CO2)を回収して地下に貯留する「CCS」の事業化に向け、経済産業省が国内外の7か所を選出したことが明らかになった。CCSは温暖化対策の切り札とされ、政府が集中的に支援して早期にビジネスモデルを確立させる狙いがある。近く発表し、2023年度から事業支援を始める。
選出したのは、エネオスグループと電源開発が計画している九州沖合や、出光興産などが検討中の北海道の沿岸に加え、東北と新潟、首都圏の国内計5か所と、マレーシア沖とオセアニア海域の海外2か所。
いずれも日本企業が主導するプロジェクトで、火力発電所や製油所などからCO2を集め、船舶やパイプラインで輸送して貯留することを目指している。
CCSは、海外では1990年代から実用化されているが、初期費用が数百億円と巨額で、採算が見通しづらいことから、日本では実証実験にとどまっている。
経産省は日本での事業化を急ぐため、4月に支援対象となる「先進事業」を公募していた。学識経験者らによる委員会がCO2の回収・輸送方法や貯留地域などを精査して7か所に絞り込んだ。
政府は30年までに、年600万〜1200万トンのCO2を地下に貯留する目標を掲げている。今回の7か所が事業化されれば、30年度には日本が1年間に排出するCO2の1%強に相当する約1300万トンを貯留できると見込んでいる。
各プロジェクトに参加する企業は、経産省所管のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と業務委託契約を結ぶ。23年度はCO2回収設備の設計や貯留地域の選定に向けた調査などを進める予定だ。
経産省の試算では、50年にCO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するには、CCSによる貯留量を年1・2億〜2・4億トンにする必要がある。
◆CCS=二酸化炭素を回収して海底や地下に閉じ込め、実質的に排出量を減らす技術。英語の二酸化炭素(Carbon dioxide)、回収(Capture)、貯留(Storage)の頭文字を取った。