温室効果ガスの排出を削減するためのルールは 概 ( おおむ ) ね整った。国際社会には、着実な取り組みが求められている。
ポーランドで開かれていた国連気候変動枠組み条約の第24回締約国会議(COP24)が閉幕した。2020年以降の地球温暖化対策の在り方を定めた「パリ協定」の実施指針(ルールブック)を何とか採択した。
パリ協定では、全ての国が削減目標をそれぞれ設定して実行する。先進国のみが削減義務を負った「京都議定書」とは、この点が大きく異なる。各国の自主性に負うところが大きい協定だ。
先進国と途上国は、共通のルールを用いることで合意した。今回の会議の成果である。削減の具体的手法や、削減結果についての報告や検証の方法を統一化する。
先進国に不公平感が高まった京都議定書の教訓を踏まえれば、ルールの共通化は大切だ。削減量の計測技術などで、先進国から途上国への支援は欠かせない。
会議を通して目立ったのは、パリ協定に対する熱意の低下だ。
協定は、米中が中心となって16年に発効したが、温暖化に懐疑的なトランプ米大統領は昨年、脱退を表明した。支持基盤である石炭産業などへの配慮からだ。オバマ政権時代に表明した途上国への資金援助も滞っている。
最大の排出国である中国も今回、「中国は最大の途上国」などと強調し、先進国と同じルールの適用に最後まで抵抗した。
米中を合わせた排出量は、世界全体の4割以上を占める。2大排出国として応分の責任を果たすよう、日本など各国は粘り強く働きかけていく必要がある。
欧州連合(EU)は長らく、温暖化対策を主導してきた。マクロン仏大統領は「米国の代わりになる」と積極姿勢を見せ、燃料税の引き上げ実現を目指した。
だが、負担増に反発する市民の抗議デモが激化し、撤回に追い込まれた。厳しい経済状況下では、温暖化対策への広範な支持は得られない。今後の教訓である。経済成長と環境対策を両立させる重要性は一層、高まっている。
石炭火力への依存度が比較的高い日本は、原子力発電や再生可能エネルギーの活用をさらに促進すべきだ。持ち前の省エネ技術で、途上国支援も拡充させたい。
異常気象が頻発する中、仮に各国が削減目標を達成しても、温暖化を十分には抑えられないとの指摘がある。温暖化への「適応策」にも力を注がねばならない。