住友商事とIT大手のインターネットイニシアティブ(東京、IIJ)が宮城県登米市など東北を舞台に、農作業の省力化につながる水田の水位管理システムの普及に乗り出す。これまで多額の初期投資が必要だった設備を安く提供し、高齢化が問題となる生産現場の負担軽減を図る。
両社は2019年に水位管理システムの試験販売を始める。水田に取り付けたセンサーから基地局を経由してデータをインターネット上に集約。水田の水位、水温を常時観測できる。
生産者は水田に足を運ばなくても、手元にあるスマートフォンやパソコンでデータを確認できる。
住友商事によると、従来の水位センサーは日射量や風向、風速なども計測する多機能型がメイン。導入費用が1台5万~6万円と高額で、生産現場への導入が進んでいない。
両社が採用するセンサーは観測データを水位と水温に限定し、1万円台に価格を引き下げる。IIJが実用化した通信体系を活用し、毎月の通信費用も低額に抑えられるという。
住友商事とみやぎ登米農協は8月、先端技術導入に向けて提携を結んだ。18年中には登米市内の2経営体がセンサーを試験運用。19年は同農協組合員の約10経営体、山形、秋田、福島各県でも計25経営体程度が導入を検討している。
住友商事によると、データが毎年蓄積されることでベテラン農家の経験や勘に基づいた農業技術の伝承が可能になる利点がある。
同社の担当者は「経験の浅い生産者も、気象条件に応じて簡単に水管理ができるようになる。米どころ東北を手始めに、全国に展開したい」と話している。