IT業界、大口受注へ連携広がる

宮城県内のIT業界で、複数の関連企業がタッグを組み、システムやソフトを共同で開発する動きが広がってきた。1社単独では難しい大型案件などの受注に向 け、得意分野を持ち寄り、企業の枠を超えたチームで受け皿をつくろうという取り組み。IT需要が集中する首都圏への人材流出を防ぎ、地元エンジニアの技術 力向上を図る狙いもある。(報道部・山口達也)

IT事業者でつくる一般社団法人、宮城県情報サービス産業協会(MISA)は4月、仙台市青葉区に開設した共同拠点「仙台開発センター」の開所式を市内のホテルで開いた。早坂栄二会長は「協力して質の高い製品を開発し、実績を重ねたい」と語った。
MISAには現在、県内IT事業者の4割強に当たる約200社が参加。会員企業がエンジニアを出し合い、開発センターで共同作業する。売り上げはエンジニアの提供数などに応じて割り振る仕組みだ。
既に、東京の大手IT企業「DTS」を通して金融システム事業の受注に成功。会員企業5社から派遣されたエンジニア約40人がシステム開発に取り組む。
共同拠点を設けた背景には、空洞化する地方のIT産業への危機感がある。
経済産業省などの調査によると、2012年のソフトウエア事業の売上高は全国で約11兆250億円。シェアは東京が54.1%と突出しており、2位の神奈川(10.1%)を除くと、残りは全て1桁台で、東京への一極集中が著しい。
東北では、宮城が1.1%(約1200億円)で全国10位と健闘するが、需要の多くは「東京の大手企業に相当取られている」(MISAの会員企業)状態。多くのエンジニアも待遇の良い首都圏の大手企業に流れているという。
宮城県内では4月、ウェブサイト制作業務などを米国の大手IT企業から受注することを狙う共同企業体「ASA Digital(アサ・デジタル)」も発足した。仙台市のIT企業2社と、IT技術者育成を手掛ける石巻市の社団法人で構成する。
各社のエンジニアが、協力してウェブサイトやアプリケーションを開発する。既に数件の契約や相談を受けており、会員企業の一つ、アビリオン(仙台市)の赤羽根圭悟社長は「東北発のIT技術の高さを世界に発信したい」と語る。
両組織に共通するのは、会員企業が小規模事業者であることだ。MISAは8割が社員30人以下の規模。ASAも最大で48人で、単独では大手に太刀打ちできない状態にある。
MISAの早坂会長は「共同の開発拠点を設ける枠組みは全国で初めてと聞いている。金融システムを中心に事業を受注し、宮城を金融システム開発の先進地にしたい」と意気込む。

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