日本政府は26日、クジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を発表した。今後、日本の捕鯨はどうなるのか。クジラの科学調査や国際的な捕鯨論議はどう変わるのか。ポイントをまとめた。
Q 脱退を決めた背景に何があったのか
A 近年、IWCの議論は、クジラの持続的利用を求める国々と反捕鯨国との対立が深まり、機能不全に陥っていた。反捕鯨国は、IWCの設立目的である「捕鯨産業の秩序ある発展」からクジラの捕獲を一切認めない立場に。日本の食文化を支えてきた商業捕鯨の再開が困難と判断した日本は、IWCの正加盟国から離脱することを決断した。現在、IWC非加盟国のカナダやインドネシアも商業捕鯨を行っている。
Q 捕鯨のあり方は変わるのか
A IWCが許可してきた南極海での科学調査を目的とした捕鯨(調査捕鯨)ができなくなる。調査捕鯨では、クジラの肉を流通させることが認められていたが、今後、南極海産の鯨肉は市場から消える。
Q 国内の捕鯨はどうなるのか
A 脱退の効力が発生する来年7月以降、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)に限定し、商業捕鯨を開始。十分な資源量が確認されているミンククジラなどを捕獲し、市場に日本近海産の鯨肉を供給する。北海道釧路市や和歌山県太地町などが捕鯨拠点となり、地域の活性化が期待されている。
Q 日本は科学調査をもう行わないのか
A 海洋資源の研究発展への国際的な義務を果たすため、南極海でもクジラを捕獲しない手法での目視調査を継続する。国連海洋法条約に基づき、日本近海での科学調査も行い、オブザーバーとしてIWCの科学委員会へデータを提供する。非加盟国だが、ルール上許されているIWC総会にも出席し、将来の捕鯨のあり方の議論にも加わる。
Q 反捕鯨国は今後、どのような姿勢を取るか
A 欧米諸国などが国際社会での圧力を高めるのは必至だ。ただ、南極海での調査捕鯨に反対してきたオーストラリアやニュージーランドはむしろ、南極海から撤退したことで、従来の強硬姿勢を緩和させる可能性がある。一方、シー・シェパードなどの反捕鯨団体はあらゆる手段で妨害活動を強める恐れがある。