地震やミサイル攻撃などの緊急情報を国が地方自治体に送る全国瞬時警報システム(Jアラート)について、約3割超の市区町村で「自動起動機」が使えず、住民への瞬時の情報伝達ができない状態となっていることが11日、会計検査院の調査で分かった。自動起動機が未設置だったり運用していない自治体があるためで、国が整備した情報網も“宝の持ち腐れ”となっている。検査院は総務省消防庁などに態勢を確立させるよう求めた。
平成19年7月に運用が開始されたJアラートは、人工衛星を経由し、約2秒で自治体の専用端末に緊急情報が届くシステム。自治体から防災無線などを通じ、自動的に住民へ伝わる仕組みだ。機器の購入額に応じ、21年度は国が約92億2千万円の交付金を支給。今年4月現在で全自治体の99・4%に当たる1719市区町村で受信機と受信アンテナが整備された。
だが、検査院が調査した結果、受信した情報を自動的に住民に伝える「自動起動機」を設置していたのは1241市区町村(全自治体の71・8%)にとどまった。
このうち91市区町村(同5・2%)では自動起動機を設置していたが、電源を入れないなど運用されていなかった。自動起動機がない場合、市区町村の職員が庁舎にいれば受信情報をアナウンスできるが、深夜や未明では情報が住民に伝わらない可能性が高い。
検査院の聞き取りに対し、未設置の自治体は「(設置しても)スピーカーなどの機器が古く自動起動に対応できない」、運用していない自治体は「緊急地震速報が誤っていたりしたため、運用を見合わせている」と説明している。こうした状況について、検査院は「Jアラートの整備目的が達成されていない」と指摘している。