ジャニー喜多川氏の性加害問題を巡り、NHKの稲葉延雄会長は27日の定例記者会見で、ジャニーズ事務所による被害者への補償と再発防止策の着実な実施が確認されるまで、新規に所属タレントの出演依頼を行わない方針を明らかにした。大みそかの「紅白歌合戦」も対象で、同局は同事務所からの出場者がゼロになる可能性もあるとしている。契約済みの番組は起用を続ける。
この問題の報道が不十分だった点について、会見で稲葉会長は「深く反省している」と述べ、その上で「所属タレントの起用は(本人の)能力を勘案して決めてきたが、今振り返ると十分でなく、事務所のありようも検討しないでやってきたのが問題だった。忖度(そんたく)ではなく、考慮すべき要素が欠落していた」とした。
会見では長年、芸能やドラマ部門にいた理事が退職後に同事務所顧問になったことなど、同事務所とNHKの過去の関係も問われたが、稲葉会長は第三者委員会などでの調査は行わない方針を示した。「甘いと言われるかもしれないが番組の中で一つ一つ取り上げ、国民に説明したい。放送人としてのありようが試されており、自覚的、自省的に物事をとらえ、考えていく」と説明した。
一方、その後に行われたメディア総局長の定例記者会見では、「紅白」に同事務所所属タレントが出場しない可能性について、山名啓雄総局長が「新規の出演依頼を当面行わない方針が解除されないとそういうことになる」と改めて基本姿勢を示した。
「紅白」に関しては、性加害を認定した東京高裁判決が2004年に最高裁で確定後も同事務所からの出場タレントが増え続けた。これについて山名総局長は「この問題に関して、人権を侵害する重大なことという意識がすごく薄かった」と反省を口にした。
また、同事務所所属のCDデビュー前の若手らが出演する音楽番組「ザ少年倶楽部」は契約期間の年度末までは放送を続けるが、「視聴者から様々な意見をいただいており、内容変更も含めて検討する」という。
同番組に関しては、所属タレントがほぼ占有している部屋が収録先の東京・渋谷のNHK放送センター内にあるとも批判されている。これについて山名総局長は、「特殊なことではない。一般的に言えば、何年も続いている番組であれば恒常的にリハーサル室が必要となる。そういうことを示しているのかもしれない」と述べ、その存在を認めた。