NTTグループが年内にも始める予定の光回線の卸売り事業に暗雲が漂っている。卸売料金の開示の必要性や地方の通信事業者との競争確保などの問題があるとして、自民党が待ったをかけたのだ。NTTは料金開示は不要としていたが、総務省は料金表として開示する方向で検討。NTTドコモはNTT東西地域会社から光回線を仕入れ、2015年2月から携帯電話とのセット割引を始める計画だが、11月下旬に予定していた具体的なサービス内容の発表が延期される可能性も出てきた。
「都会でもうけた利益で地元のCATV会社と競争するということでは、地方はもたないのではないか」
12日に開かれた自民党の情報通信戦略調査会(会長・川崎二郎元厚生労働相)で、NTTとNTTドコモの役員に同党の国会議員がかみついた。
川崎氏らは、ドコモの光回線と携帯電話とのセット割引が地方で光回線が利用される機会の拡大に貢献する可能性を認めながらも、値引き競争が激化すれば地方でインターネット事業を展開するCATV事業者への影響が大きいとの考えを強調し、懸念を示した。
また別の議員は、NTTによる光回線の卸売りが、ドコモへの事実上の営業支援につながることを危惧。「卸売料金が(ドコモ以外の卸売り対象と)同じだというなら公表して透明性を確保すればいい」として、NTTに料金の開示を求めた。
さらに、ドコモがセット割引を来年2月に始めると発表したことに対して「議論の結論が出る前に見切り発車するという話だ」(川崎氏)といった批判も飛び出した。
現在の電気通信事業法では、電気通信サービスの卸売り販売について、企業間の交渉で直接料金を決める相対取引を認めている。しかし、通信市場の支配的事業者であるNTT東西が光サービスを全面的に卸売りすることは想定されていなかったのが実情だ。
この点でNTTによる光回線卸売りは、法の不備を突いた新事業ともいえる。しかし、自民党側も認めるように、さまざまな事業者が卸売りを利用して新事業を立ち上げれば光サービスの拡大につながる。
光回線の卸売り事業は、NTTにとってグループ事業の再構築という大仕事であり、日本の通信市場にとっても大きな転換点となり得る。川崎氏は調査会の会合後、報道陣に「(衆院解散という)水が入ってしまった。1月に議論を再開する」と説明した。(芳賀由明)