NTT東日本は6日、大規模地震などの緊急時に備えて、今夏に1千キロリットル規模の石油備蓄設備を東京都内に建設する方針を明らかにした。東日本大震災時のように通信機能が滞らないよう自家発電用燃料などを確保することが狙いで、災害直後の2日間程度は大型交換機などの設備を稼働できるとしている。石油を消費する企業が大規模災害を想定し、これほど大規模の備蓄を行うのは異例だ。
通信事業者で緊急時の石油を備蓄するのは初めて。同社が備蓄するのは、自家発電機用の軽油と移動電源車に使うガソリンで、1千キロリットルは最新の大型ガソリンスタンド十数カ所分に相当する規模となる。
具体的には東京都新宿区の本社やNTT霞ケ関ビル(東京都千代田区)など約10カ所の重要拠点ビルで自家発電を行う。
また、同社は2月下旬から、首都圏で震度6弱以上の地震が発生した際、東日本地域にある移動電源車と衛星通信移動無線車が本社の指示を待たずに東京周辺に集結する緊急配備ルールを導入。備蓄ガソリンは、これらの電源車に活用する考えだ。
軽油とガソリンの二段構えで補給態勢を整えるのは東日本大震災時の教訓がある。震災時、岩手、宮城、福島の3県で計41のNTTビルが津波などで壊滅状態となった。
さらに商用電源が途絶えたり装置が使用不能になったビルは約1千カ所。このためNTT東日本や西日本の移動電源車約130台が非常電源用に現地に配備されたが、ガソリンや軽油など燃料確保が困難な状態が続き、通信回復が大幅に遅れた。
震災後、NTT東日本はバッテリーや発電機の容量増強を進めているが、ビル内にある燃料タンクは数時間から1日程度しか稼働しないのが実情。大災害発生直後の混乱時にも重要通信を迅速に復旧させるためには、自前の設備での備蓄が不可欠と判断した。