国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向け、東北各県は遅れの挽回が求められている。NPO法人「人間の安全保障」フォーラム(東京)がまとめた進行状況の総合ランキングによると、山形を除く5県が37位以下と低迷。東日本大震災の犠牲者が多い影響もあるが、健康、経済、教育などでも全国順位が低く、フォーラムは「一人一人の尊厳を大切にしたまちづくりが必要だ」と指摘する。
ランキングは、SDGsの17の目標に関わる(1)命(生命、健康)(2)生活(経済、労働、教育福祉、環境など)(3)尊厳(子ども、女性、地域社会など)(4)自己充足度(5)人との連携性―の5指標で算出。(1)(2)(3)は平均寿命や自殺者数、県民所得といった91のデータを基に、(4)(5)はインターネットアンケートの結果を基にした。
東北各の総合順位は山形の18位が最高。他は岩手37位、秋田38位、福島41位、宮城45位で、青森が最下位の47位だった。
指標別でみると、「命」の低さが目立つ。青森47位、岩手46位、福島44位、秋田43位などとなった。命はさらに細分化され、「自然災害の死者・行方不明者」が、震災被災地の宮城、岩手、福島の順で全国最多。「自殺者」も人口10万当たりの少なさでみると、宮城を除く5県が40位以下。「平均寿命」は男女とも青森が最下位だった。
指標の「生活」は、宮城が東北で最も低い45位。1人当たりの「県民所得」こそ24位だったものの、1世帯当たりの「可処分所得」が全国最下位。「女性雇用率」「障害者雇用率」がともに42位、「高齢者有業率」は46位で、フォーラムが「取り残されがち」と位置づける人々の雇用状況が良くなかった。
「生活」「尊厳」の双方にカウントされる子どもに関するデータでも、宮城は苦戦。「学力」「運動能力」はそれぞれ38位と37位でともに東北最低。「不登校率」「児童相談件数」は全国ワースト、いじめの多さは全国3番目だった。一方、秋田が全国で最も少なく、学力は2位、運動能力は6位などとなった。
人生への満足度などを聞いた「自己充足度」は、6県とも低め。他者との関わりを尋ねた「連携性」は、被災3県で低い傾向がみられた。
国連事務総長特別顧問でフォーラムの高須幸雄理事長は「SDGsが目指すのは環境や経済の持続可能性だけでなく、『誰一人取り残さない』社会に向け、住民一人一人の尊厳を大切にすること。ランキングは課題がどこにあるか明確化してくれる」と説明する。
東北の低迷の理由については「震災の影響だけでは説明できない。健康や所得面などでも課題が大きく、取り残されがちな人々への対策も必要」と指摘。「行政は住民の尊厳を重視したまちづくりを進めるべきで、企業や住民団体などとの連携も大切だ」と訴える。