原子力規制委員会は22日の定例会で、原発事故時の住民避難方針をまとめた原子力災害対策指針を改定した。東京電力福島第 1原発事故で政府によるデータ公表の遅れが問題視された緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)は活用せず、原発30キロ圏の放射 線監視装置(モニタリングポスト)の実測値を基に対応を判断することを正式に決めた。
SPEEDIは原発事故時に放出された放射性物質の量や気象、地形条件から、放射性物質の拡散状況を予測するシステム。福島原発事故の後、規制委内で予測の精度を問題視する声が出た一方、一部の原発立地自治体は継続的な運用を求めていた。
定例会ではSPEEDIに否定的な見解が示され、更田豊志委員は「(他国が採用しない)ガラパゴス的な対策。予測できれば、という願望や安全神話にすぎな い」と強調。代替手法として、30キロ圏に多数のモニタリングポストを配備し、事故後の放射線量の実測値を集約するシステムを活用する方針が了承された。
ただ、モニタリングポストの拡充整備などは進んでいない。宮城県によると、東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の30キロ圏は50カ所ほど新設する 必要があるが、設置に今後2年程度かかる見込み。測定値の集約システムは6月にも鹿児島県に導入されるものの、女川原発周辺への導入時期は決まっていな い。
指針改定ではこのほか、原発30キロ圏外でも放射性物質を大量に含む放射性プルーム(雲)への対策が必要として指針の中で検討課題に掲げられていた「放射性ヨウ素防護地域(PPA)」(目安は50キロ圏)を削除した。
30キロ圏外の避難については、必要性を事故後に規制委が判断することに決定。甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤を事前配備しないことも定めた。