STAP論文:小保方氏不服申し立てせず 理研処分へ

STAP細胞論文問題で、新たに二つの図表の捏造(ねつぞう)を認定された小保方(おぼかた)晴子・元理化学研究所研究員(31)が、理研に対して不服申し立てをしなかったことが6日、理研への取材で分かった。昨年3月に認定された別の2件の捏造・改ざんと合わせて計4件の不正が確定し、一連の不正調査は終結する。理研はSTAP細胞の有無を確かめる検証実験などで中断していた懲戒手続きを、同日中にも再開する。
 理研の規定では、不服申し立ては調査委員会で研究不正を認定された当事者が通知を受けてから10日以内にできるとされ、5日が期限だった。理研は昨年12月26日、調査委員会(委員長、桂勲・国立遺伝学研究所長)の結果を発表する記者会見で、小保方氏と連絡が付かないと説明していたが、その後、発表当日に小保方氏側の受理を確認したという。
 調査委は最終報告書で、研究の中心となった小保方氏が作製した細胞の増殖率を比較するグラフと遺伝子の働き方が変わる現象を示す図が、ともに捏造だったと認定。さらに、論文でSTAP細胞由来とされた細胞や組織は、既存の万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)からできていたとし「STAP論文は、ほぼすべて否定された」と結論付けた。
 小保方氏は昨年3月、理研が設置した最初の調査委で2件の画像の不正を認定され、この時は不服申し立てをして「過失であり、捏造や改ざんには当たらない」と訴えたが、退けられていた。研究不正が認定された職員は懲戒対象になるが、小保方氏は昨年12月21日付で理研を退職したため、実際の処分は受けない。懲戒委員会は職員だった場合に相当と考えられる処分を検討する。【清水健二、大場あい、須田桃子】
 【ことば】STAP細胞論文不正問題
 理化学研究所の研究ユニットリーダーだった小保方晴子氏ら日米のチームが昨年1月、マウスのリンパ球を弱酸性の溶液につけるなどの刺激を与えるだけで、新しい万能細胞「STAP細胞」を作製したと英科学誌ネイチャーに発表した。しかし、直後からインターネットなどで疑義が指摘され、理研の調査委員会が昨年3月、二つの画像について小保方氏の不正を認定。ネイチャーは昨年7月に関連論文2本を撤回し、成果は「白紙」となった。小保方氏も参加して理研が取り組んだ検証実験でSTAP細胞は作製できず、2回目の調査委は、小保方氏による二つの図表の捏造を新たに認定した。
◆STAP細胞論文で理研調査委が認定した不正◆
(カッコ内は認定時期)
小保方晴子氏=2014年4月9日午後1時55分、貝塚太一撮影 コピーライトマーク 毎日新聞 小保方晴子氏=2014年4月9日午後1時55分、貝塚太一撮影
(1)実験データ画像の切り張り(昨年3月)
2枚の写真の合成で、画像の長さやコントラストの調整がされている。誤って解釈される危険を認識した加工で改ざんに当たる
(2)博士論文と酷似した別の画像の流用(同)
博士論文の画像はSTAP細胞論文とは別の実験。取り違えたと主張する画像も元の実験が特定できず、捏造に当たる
(3)細胞の増殖率を比較するグラフ(昨年12月)
実験が行われた記録がなく、勤務記録と照合しても約3日おきに測定していたと認められないため、捏造と判断される
(4)遺伝子の働き方が変わる現象を示す図(同)
データの一部を仮説に沿って意図的に選別したうえ、手作業で作図して存在しないデータを作り上げており、捏造に当る。

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