■最初は好感、次第に不信感
TBSの井上弘社長は25日の記者会見で、楽天の三木谷浩史会長兼社長と3年前に初めて出会ってから次第に不信感を強めていった経緯を詳しく説明した。三木谷会長の強硬姿勢に対し、TBS側が牽制(けんせい)球を投じた格好だ。
井上社長が三木谷会長に初めて会ったのは平成16年の暮れ、楽天の球界参入が決まった直後だ。「私の方からお目にかかりたいと言った。私よりだいぶお若いが、本当にいろんなことをお考えになっている」。両者には友好ムードが漂っていた。
17年3月、ライブドアによるニッポン放送株買い占め騒動の最中に、三木谷会長から事業提携が持ちかけられた。「これはいい話だと思って喜んで六本木へ向かった」。
しかし楽天社内で行われた2度目の会談で、三木谷会長はTBSの株式を保有したいと表明した。井上社長はその場で否定的な考えを伝えた上、砂原幸雄TBS会長には「(ライブドア社長だった)堀江さんと同じように、あの方も仕事よりも株に興味をお持ちのようだ」と報告。両者のすれ違いが始まった。
しかしそのころ、三木谷会長がライブドアに対抗してフジテレビとの経営統合を模索していたことが判明。井上社長は「フジと楽天が組むとTBSは辛いが、(三木谷社長は)株とおっしゃるからうちは無理。縁がなかった」と考えたという。
ところが、フジとライブドアが和解した後の同年7月ごろ、三木谷会長はTBSの社外取締役を介して再び井上社長に面会を求めた。この際も株保有を求めた三木谷会長に対し、井上社長は子会社の共同出資化を提案。銀行なども加わって具体化が検討されたが、「三木谷さんがお断りになってつぶれた」という。
9月、再び三木谷会長の求めで面会した井上社長は、株を保有してほしくないと強く主張。三木谷会長は「ビジネストークの時としては異常なほどご機嫌悪い状態」(井上社長)で席を立った。感情的対立は決定的となり、楽天は10月にTBS株を19%超取得した。
両社長が最後に会ったのは先月12日。三木谷会長はTBS株を取得した理由を「よその会社に取られてはいけないから」という風に語ったうえ、雑談の中でTBSを「連結(決算)に入れたい」などと述べたという。
(全文はhttp://taniguchim.iza.ne.jp/blogに掲載)
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■TBSと楽天の攻防の流れ
【平成16年】
11月 2日 楽天のプロ野球参入承認される
12月 (1)楽天三木谷会長・TBS井上社長会談
【17年】
2月 8日 ライブドアがニッポン放送株35%を取得
3月 (2)三木谷会長・井上社長会談
4月18日 フジテレビとライブドアが和解
7月 (3)三木谷会長・井上社長会談
8月10日 楽天がTBS株の取得を開始
9月 (4)三木谷会長・井上社長会談
10月 (5)三木谷会長・井上社長会談
10月13日 楽天がTBS株15.46%の取得を発表
10月26日 楽天がTBS株買い増し。19.09%に
11月30日 みずほコーポレート銀行の仲介で和解
【18年】
1月20日 業務提携委員会が初会合
3月29日 提携交渉期限を6月末に延長
【19年】
1月10日 靴販売店ABCマートの三木会長のTBS株8.92%保有が明らかに
1月15日 楽天がTBS株の信託終了を宣言
2月28日 楽天がTBS株の信託終了し、議決権凍結を解除。TBSが新たな買収防衛策を導入
3月12日 (6)三木谷会長・井上社長会談
4月19日 楽天がTBS株を19.86%まで買い増し。持分方適用会社化を目指すことを通告
4月20日 楽天取締役会。TBSが役員会
4月23日 TBS役員会
4月27日 TBSの企業価値評価特別委員会開催予定
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