楽天とTBSの攻防戦が、1年半の休戦を破って再燃した。この間、両社は「ネットと放送の融合」を目指して協議を続け、事業計画を作り上げるところまできたものの、楽天が再び株式の買い増しを始めたことで事態は完全に振り出しに戻った。TBS幹部は今回の楽天の行動に対し、「攻めてきているという認識を持っている」と不信感を強めており、両社の提携はこれまで以上に困難となっている。
関係者によれば、楽天の三木谷浩史会長兼社長が19日、TBSの井上弘社長に面会を申し込んだが、スケジュールが合わずにトップ会談は実現しなかった。このため、楽天の國重惇史副社長がTBS株式を0・79%買い増した通告と併せ、20%超の株式買い増しの意向説明書を持参。報告を受けた井上社長は、激怒したという。
TBS側は事業提携の前提条件として、楽天に保有するTBS株の放出を求めていたが、それを完全に無視するやり方に「特別委員会や株主総会に諮らずに、取締役会だけで買収防衛策を導入できるのならばそうしたい」(幹部)と憤りを隠さない。
一方、楽天側からすれば、「最初に引き金を引いたのはTBS」との思いがある。敵対的ではないという意思を示し続けてきたにもかかわらず、株式の信託打ち切りを発表するやいなや、TBSが新たな買収防衛策を導入したためだ。「一定の信頼関係を築けたと感じていたのに」と不満をあらわにした。
楽天は今回、TBSが最も嫌う資本関係強化を前面に出し、持ち分法適用会社化を目的として掲げ、社外取締役の選出も要請。委任状争奪戦まで言及する強硬姿勢で臨んできた。TBSもこれまで以上に態度を硬化させている。
三木谷会長は昨年末、産経新聞のインタビューに応じ、通信と放送の融合について「テレビの業界からみても双方向が当たり前になっている」「テレビの画面はもっと開放しなければならない」などとビジョンを語った(一問一答はhttp://taniguchim.iza.ne.jp/blog/entry/99104/を参照)が、肝心の信頼関係を築けないでいる。
三木谷会長からTBSの社外取締役候補となることを依頼されたカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長は、TBSの株主である一方で、楽天の社外取締役でもある立場から、「私のこれまでの経験が、放送メディアとネットサービスの懸け橋になれば幸いだ」と “接着剤役”を強調する。だが、両社の関係は1年半前と同じかそれ以上に悪化しており、ソフトランディングは考えられない状況だ。
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