動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の運営会社側が長期間、影響力がある複数のツイッター利用者に報酬を支払い、指定した動画を一般の投稿かのように紹介させていたことが、読売新聞の取材でわかった。「協力者」1人当たりの投稿が年間数千本に上り、報酬額が500万円を超えるケースもあったという。アプリ利用者を増やすのが目的で、宣伝であることを隠す「ステルスマーケティング」の可能性がある。
運営する中国のIT企業「バイトダンス」の日本法人は取材に対し「契約の詳細は言えない」とした上で、投稿で金銭の授受や広告であることを明示しなかったことについては「申し訳ない」とコメントした。
ティックトックは短時間の動画を簡単に編集・投稿できる無料のSNSで、若者を中心に世界で人気が高まっている。米調査会社によると、2021年のダウンロード数は7億回を超え、ゲーム以外のアプリでは世界一となった。企業などからの広告料が主な収益源で、利用者の急増が業績拡大につながるとみられる。
関係者によると、協力者になっていたのは匿名でツイッターのアカウントを運営し、フォロワーが10万人を超える人物ら。約2年前からバイトダンス日本法人の担当者が契約を持ち掛け、ティックトックに投稿された動画の中から、拡散させたいものを伝えていた。
国内外で撮影されたハプニングシーンや動物などの動画が多く、協力者が「笑う」「かわいすぎる」などとコメントを付けてツイッターに投稿。ティックトックに興味を持った人がアプリをダウンロードするように誘導していた。
報酬は、動画の再生回数が多いほど金額が上がる歩合制だった。1人で年間2000本以上を投稿し、再生回数の合計が1億回を超えるケースもあった。
報酬は海外から振り込まれていたという。
ステルスマーケティングは、一般の口コミや評判かのように消費者を誤解させる行為で、広告会社などでつくる「WOMマーケティング協議会」が運用指針で禁止。金銭が介在していれば、広告だと分かるように「PR」などと記載する必要があるとしている。
ツイッター社も、一般の投稿を装った広告を利用ルールで禁じており、確認されれば削除や利用停止などの対象になるという。
バイトダンス日本法人は「今回の施策は昨年12月で終了した。投稿に広告表記が必要だという認識がなかったが、利用者を誤認させる可能性があり、再発防止に努める」としている。
◆TikTok(ティックトック)=日本では2017年5月にサービスが始まり、好きな音楽を付けて投稿できることからダンス動画で人気に火がついた。米国が2020年、利用者の個人情報が中国に流出する懸念があると主張し、日本でも自治体が利用を中止する動きが相次いだ。