総務省は年度内にも、テレビ局と携帯大手が同じ周波数帯の電波を、時間帯に応じて使い分ける新制度の運用を始める方針を固めた。高速・大容量通信規格「5G」の普及で、スマートフォンや自動運転などの利用拡大が見込まれる中、限りある周波数帯を有効活用するのが狙いだ。テレビ局と携帯大手が電波を共用するのは初めて。 【図解】1円玉を500枚持ち込んでも預金額は「0円」…手数料の仕組み
全国のテレビ局は、バラエティーやドラマなど一般の番組用と、スポーツや災害など中継用で異なる周波数帯の電波を利用している。今回、共用の対象となるのは中継用の電波で、携帯電話の5G通信にも利用できる周波数帯となっている。現在は中継がない空き時間が多く、2018~19年の利用頻度は、需要が多い日中の東京都でも1週間に1回程度だった。
このため、昨年4月の電波法改正で、テレビ局が使わない夜間や早朝などの時間帯は携帯会社が利用できるようにした。総務省は年内にも割当先を募集する方針で、NTTドコモなど大手4社が応募するとみられる。来春をめどに割当先1、2社を決定する。携帯利用者にとっては、5Gの高速通信がつながりやすくなる利点がある。
電波の共用では新たな技術として、複数の事業者が時間帯ごとに使い分けられる「ダイナミック周波数共用」と呼ばれるシステムを本格導入する。これまでは複数の事業者が同一地域で同じ周波数帯を使うと障害が発生する恐れがあり、相乗りは困難だった。総務省は19年度から新システムの実証実験を始め、三菱総合研究所などが開発にかかわって実用化することになった。
新システムは、総務省が指定した第三者機関が電波の需給を把握し、割当先を変えられるようにする。テレビ局の利用を優先し、中継などがない時は携帯が利用する電波に切り替える。
海外では既に導入事例がある。米国では、海軍の艦船が割り当てられた周波数帯を使っていない時に、携帯会社が利用している。
デジタル社会の進展で通信量は急増し、電波の需要は飛躍的に高まっている。携帯など移動通信の月間データ通信量は、最近10年で60倍以上になった。5Gの普及が進めば、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」も広がるが、利用できる周波数帯がなくなる事態が懸念されている。電波の有効活用策は喫緊の課題となっていた。