【ロンドン=池田慶太、ヨハネスブルク=深沢亮爾】世界保健機関(WHO)は14日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染報告が世界77か国・地域に上ったと発表した。15日には、フィリピンでも感染が初めて確認された。テドロス・アダノム事務局長は14日の記者会見で、オミクロン株の拡大ペースは「これまでにない速さ」と警告し、すでに「ほとんどの国で存在していると思われる」との認識を示した。南アフリカのケープタウンで、新型コロナウイルスのワクチン接種を待つ人々(14日)=AP
11月に世界で初めてオミクロン株が検出された南アフリカでは12日、新型コロナの新規感染者が3万7875人となり、過去最高を記録した。国立伝染病研究所は10日、12月に国内で採取し遺伝情報を解析した新型コロナは、全てオミクロン株だったと発表した。
英国のオミクロン株感染者数は、14日に約5300人に達した。サジド・ジャビド英保健相は13日、感染報告は「氷山の一角」との認識を示し、人口の大半を占めるイングランドでの感染者数は1日あたり推計20万人と指摘。首都ロンドンで感染者全体のオミクロン株の割合は、「48時間以内に50%を超える」との見方を示した。
オミクロン株は、ウイルス表面の突起全体に約30か所、細胞に結合する部位だけで約15か所の変異が見つかっている。突起が変異するとウイルスの性質が変わり、細胞に侵入しやすくなったり、ワクチンで作られる「中和抗体」の効果を弱めたりする恐れがある。
オミクロン株は感染力が強まったとみられる一方、重症者数は「少ない」という観測が広がっている。
南アで、デルタ株が猛威を振るった7月に1日あたり最大600人を超えた死者数は、現在20人前後で推移している。医療の目立った 逼迫 も起きていない。
WHOによると、南アでオミクロン株が急拡大した11月14日~12月4日に集中治療室(ICU)が使用された割合は6・3%で、7月のデルタ株流行時より「かなり低い」との見方を示した。
英国の新型コロナ新規感染者数は今年1月と同水準だが、当時は1日最大1000人超が死亡した。14日の1日に報告された死者数は全体で150人で、オミクロン株による死者は13日に初めて確認された。
ただしWHOは、重症化リスクについて「データが限られ不明」と、慎重な姿勢を崩していない。デルタ株などの自然感染やワクチン接種で、どの国でもある程度の免疫があると考えられ、オミクロン株の性質の評価が難しいためだ。
デンマークの研究では、11月22日~12月12日に判明したオミクロン株感染者の入院率は1・1%で、これまでの株の0・7%よりやや高かった。
ジョンソン英首相は13日、「軽いバージョンという考えは脇に置き、感染の速さを認識しなければならない」と強調した。
大石和徳・富山県衛生研究所長(感染症学)は「重症化については、まだ信頼できる疫学データがない。現状では安心材料になっておらず、最大限の警戒を続ける必要がある」と話す。