WHO権限拡大必要、次のパンデミック予防へ=独立調査委

[ジュネーブ 12日 ロイター] – 世界保健機関(WHO)の独立調査パネル(委員会)は12日、今後いかなるウイルスも新型コロナウイルスほどのパンデミック(世界的大流行)を起こさないために、感染症の拡大に素早く対応する世界的な新たな制度が必要だと述べた。 調査パネルの専門家は2020年初めの世界的な対応に関して、緊急事態宣言が遅れたことや渡航規制を導入しなかったこと、各国が警告に応じずに「失われた1カ月」となった点など、深刻な欠陥があったと指摘。これによりウイルス感染が広まり、壊滅的なパンデミックに至った。 パネルは、こうした問題に取り組むため、WHOは新たな感染症拡大を追跡するために迅速に調査員を送り込み、全ての調査結果をすぐに公表する権限を与えられるべきだとの見解を示した。 調査パネルの共同委員長を務めるニュージーランドのクラーク元首相は「WHOの権限強化が重要だ」と指摘。同じく共同委員長を務めるサーリーフ元リベリア大統領は「新たな監視・警報制度や、WHOが情報を即時に公表できるような仕組みを求める」と話した。 WHOのテドロス事務局長は「独立調査委、および他の委員会の提言を加盟各国と協議し、WHOを強化していきたい」と述べた。 調査パネルはこのほか、WHOと世界貿易機関(WTO)に対し、ワクチン生産の拡大に向け自主的なライセンシングと技術移転について合意するよう各国政府と製薬会社に働き掛けるよう呼び掛け、3カ月以内に合意が得られなければ「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の一時破棄を適用する必要があると提言した。 パネルの調査結果は、5月24日から始まるWHOの年次総会の討議資料となる。外交官は、欧州連合(EU)がWHOの改革を推し進めており、時間がかかると述べる。 パンデミックが始まった当初を振り返り、パネルは中国の医師が2019年12月に妙な肺炎を報告していたことを指摘。WHOは台湾当局などから報告を得ていた。しかしWHOの緊急委員会が20年1月22日に協議を開いた際、国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言するまでに至らなかった。緊急事態は8日後に宣言され、重要な時間を失うこととなった。 また、国際保健規則に従う緊急委員会は、感染拡大を抑制できたかもしれない国際的な渡航の禁止を促すこともしなかった。パネルはこうした指針も変えなければならないと指摘した。「20年2月が失われた1カ月だったことは紛れもなく明らかだ。感染拡大を抑制しパンデミックを未然に防ぐ対策を打てた、打つべきだった」とした。 ジョージタウン大学法律センター・オニール国内・国際保健法研究所のローレンス・ゴスティン氏は、責任の所在を明確にしていないという点が今回の報告書の欠点と指摘。「中国政府による武漢市での新たな疾病発生の報告が大幅に遅れ、WHOによるウイルス起源の調査も阻害したにもかかわらず、独立調査委は(中国)政府の責任を問わなかった」と述べた。

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