さまざまな悩みや不安を抱え、「楽しくないまま、いまを過ごしている」。
そんな人は珍しくありません。
とある調査によると「いま、あなたは幸せですか?」という質問にイエスと答えられる人は2割もいないのです。
現代は生きづらさや不安が増しているのかもしれません。
しかし、幸いなことに、多くの先人たちが幸せに生きるコツを残してくれています。
それらを現代の生活に合わせて整え、「即役立つ」ようにしたのが、新刊『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』です。
以下では、「疲れる人間関係を手放す方法」についてわかりやすく解説します。
「気遣い上手な人」ほど損をしている?
いい人や真面目な人ほど、心の無理・無駄が増えるものです。
「未来について安心したい」と願い、あれこれ手放さないでいることで、無理・無駄が自然に増えるからです。
それは、物質的な「もの」の話に限りません。
たとえば考え方や習慣、そして人間関係。
皮肉な話ではありますが、「自分は普通でいい」と思うほど、気を遣うことになり、自分への無駄な負荷がかさんでいくのです。
このように自分を守ろうとするあまり、未来を先回りして想像し、無意識に「~であるべき」「~でなければならない」という厄介なルールを作ることを「思い込み」と呼びます。
「思い込み」は、やがて「常識」となって私たちを縛ります。
「思い込みに従うなんて、明らかに無理・無駄」とわかっていても、やめられなくなることすらあります。
また「思い込み」に他人が関係していると、ますます手放しづらくなります。
たとえば「もうこれ以上は無理」と思っていても、他人に喜ばれていたり、頼られたりしているせいで、余計にやめにくくなるわけです。
あなたは、そんな「いい人」になってはいませんか。
もし思い当たることが少しでもあるなら、それらの無理・無駄を「どうすれば手放せるか」考えるようお勧めします。
そうでないと、やるべきことや考えるべきことが増えすぎて、気づかないうちにたまったストレスに押しつぶされかねません。
「他人の変化」を記憶し続けることはない
そもそも無理・無駄をなぜ手放せないのでしょうか。
理由を考えてみましょう。
無理だ、無駄だと思っていても断れない、やめられない、放っておけない。
それはいったいなぜなのでしょうか?
いままで続けてきた考え方や習慣や人間関係を、もし手放したとしたら。
「あとで大変なことになるから」「叱られそうだから」という理由が、まずあるかもしれません。
でも、もしかすると大変なことにはならないかもしれません。
叱られずにすむかもしれません。
こういうと、あなたをそそのかしているだけのように聞こえるかもしれませんが、手放すことをお勧めする理由はきちんとあります。
実は、人とは意外なほど物事を忘れる生き物です。
ドイツの心理学者によると、人は苦労して覚えたことも1カ月後には忘れてしまうことがほとんどで、再度覚えるのにやはり以前の8割程度の時間が必要だそうです。
つまり、あなたが気にしている「そのこと」をそっとやめたとしても、ストレスの元凶である「あの人」が、それを覚え続けている可能性は、ほぼゼロに近いのです。
ですからおそれずに、無理・無駄をいったん手放してみてください。
とはいえ実際は「思い込みを捨てて変わるべき」とわかっていても、実行に移しにくいかもしれませんね。
「いますぐ手放すのは難しい、でも何かしら、キリのよいところまで、メドがつくまで……」
そう頑張り続けてしまう人は珍しくありません。
そんな人は、無理・無駄が手放せない自分を変えよう、手放せる自分になろうとしているのだと思います。そんな考えや努力は素晴らしいものですし、心から尊敬します。
しかし、自分を変えようとする際に最もよくない方法は、「自分の気持ちを変えよう」と頑張ることです。
「自分で自分の心を変える」のは、どれほど精神力が強い人にとっても、たやすいことではありません。
自分を変えるために最も効果的なのは「頑張り」という精神論ではなく「技術」(テクニック)をうまく使うことです。
【テクニック➀】役者になって演じきる
人の手を借りずとも、自分以外の力をうまく利用する方法はたくさんあります。
一例として、最も多いお悩みのひとつ、「無理・無駄な人間関係の手放し方」についてお伝えします。
わかりやすい例として、職場の人間関係で悩んでいるケースを取り上げます。
職場でのつきあいは「手放しにくい」点がやっかいです。
仕事を進めるにあたり、お願い事をしたり、されたりすることは避けられません。
だから「気が合わない」「なんとなく苦手」という理由だけでは、距離を置きにくいものです。
職場では全員と友好的な関係を維持する必要があります。
そんな状況下でお勧めしたいのは「役者になって過ごす」という解決策です。具体例をお話ししてみましょう。
私の友人に「社交的だけど、人づきあいは好きではない」という人がいます。
そんな彼女が社交的に振る舞えるのは「その都度、誰かになりきったつもりで、人と接しているから」だそうです。
これは大変うまいやり方です。
単純に思えるかもしれませんが、この効果は絶大です。
彼女の場合、なりきる誰かとはテレビで見かける有名人だそうです。
場を明るく楽しませたいときには、あのお笑い芸人に。
ママ友同士で盛り上がりたいときには、辛口だけど嫌味のない、あの文化人に。
仕事で皆の意見に理解を示しながらリードしたいときは、あの有名司会者に。
結局は自分であることは変わらないのですが、この方法は驚くほど、心の負担を軽減してくれます。
いい人や真面目な人ほど、一言の言葉を発するにも自分の責任を、未来への影響を、未来の結果を気にかけてしまいがちです。
でも「人気者のあの人ならこう言うだろう」と気持ちを切り替えれば、心はラクになるものです。
自分の考えをストレートに伝えたり、本心を明かしたりする必要はありません。
「他の人格を演じる」という処世術を使えば、逃れられない人間関係の中で、できるだけ自分を守りながら、うまくやり過ごせます。
【テクニック➁】習い事をしてみる
2つ目は、利害関係のない場、たとえば趣味の教室など「離脱しやすい場」の人間関係の手放し方についてです。
「この人間関係は失ってもよい」という気持ちがわいてきたら。
無理・無駄を感じたら、そこから卒業してしまいましょう。
「でも、少し寂しくなってしまいそう」と心配なら、自分の成長のためにも、別の仲間を探してみましょう。
まったく別の領域で人間関係を新たに築いてみればいいのです。
新しい環境に飛び込んで、そこで視野を広げてみるのです。
するとそこへの好奇心が大きくなるため、「失ってもよい人間関係」について悩む時間は激減します。
たとえば、新たな趣味や習い事を始めてみるのもいいでしょう。
ヨガ教室に出かけて体を動かすのでも、スポーツジムに通うのでも構いません。
これまでの生活圏とは違った人たちと、新たな関係ができるはずです。
「コミュニケーションをとるのが苦手」という人でも、趣味や習い事に通う人たちとは目的が共通しているので、ラクに程よい距離感でのおつきあいができます。
そちらが充実するにつれ、「失ってもよい人間関係」への未練は、きれいさっぱりなくなるはずです。
この方法の優れた点は、いつでもリセットできる点です。
「この趣味は自分に合わない」「この教室の人間関係もきゅうくつだった」などと感じた場合は手続きを踏んで、いつでも抜け出せばいいのです。
【テクニック➂】潔く引っ越す
過去の人間関係を手放したいときに有効な策もご紹介しておきましょう。
たとえば「元パートナーとの思い出を忘れて、新たな恋を探したい」「前職のネガティブな思い出を忘れて、新たな仕事に没頭したい」などというときです。
ダイナミックな話になりますが、生活環境を変える、つまり引っ越しするという策は非常に効果的です。
ノートルダム大学の研究によると、移動は人に物事を忘れさせてくれる効果があるそうです。
人の心は生活環境の影響を強く受けますから、住む場所が変われば気持ちも変わるのは当然でしょう。
もちろん引っ越しの手間は多少かかりますが、居場所を変えることで自動的に心をリセットできる、確実な方法です。
どの程度現在地から離れるかは、自分で調整できます。
近距離の引っ越しでも有効ですし、まったく知らない土地で新生活を始めるのも素晴らしいことです。
逆に言うと、一カ所に長く暮らす人は、過去のつらい思い出をいつまでも持ち続けるのと同じこと。人生において「住むところを定期的に変えること」は心を健やかに保つコツなのです。
「忘れたい人間関係の思い出」を手放したい人は、試してみてください。
無理や無駄、そしてネガティブなことはうまく捨てて、現在をより充実させていきましょう。