内科、循環器科の専門医として、数多くの患者と日々接している医学博士の池谷敏郎氏。血管、血液、心臓などの循環器系のエキスパートとして「モーニングショー」(テレビ朝日)、「深層NEWS」(BS日テレ)などテレビにも多数出演しているが、過去15キロ以上の減量に成功し、57歳になった現在でも体脂肪率10.6%を誇ることはあまり知られていない。
このたび、その減量メソッドを全公開した新刊『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える内臓脂肪を落とす最強メソッド』が話題になっている池谷氏が「シャワー派にも朗報な『お腹が凹む入浴』3大秘訣」について解説する。
毎日の入浴タイム、そのままではもったいない!
運動をする時間はなかなかつくれなくても、誰でもお風呂には入りますよね。
もしその「入浴タイム」を利用して「内臓脂肪」を減らすことができたらどうでしょうか。ジムに行く手間が省け、時間も節約できて「お腹を凹ませる」ことができたら、こんなにいいことはありません。
「ぽっこりお腹を引っ込めるには運動がいちばん!」と思ってはいるものの、「疲れている」「ジムに行くのは億劫」などの理由から、なかなか一歩踏み出せない人も多いかと思います。
暑さが増していくこの時期はとくに、「汗をかくのは不快」「着替えや準備が面倒」などという理由も重なって、ますます運動とは縁遠くなりがちです。
さらに、朝早くから夜遅くまで仕事をしているビジネスパーソンにとっては、時間の確保も厳しいもの。
そんな人におすすめしたいのが、私も実践している「お腹が凹む入浴法」です。
シャワーも入浴も「上手に入る」ことで、まったく何もしないよりも「お腹を凹ませる効果」が期待できる、そういう入浴法があるのです。
入浴タイムを活用するメリットは、「時間の節約」はもちろん、直前に軽く運動をして汗ばんでも、「直後に入浴できるので、汗も流せてさっぱりし、さわやかな気分へと切り替えることができる」ことも大きいと思います。
では、私がおすすめする3つのお腹が凹む「入浴タイム活用法」を紹介します。
まず1つめ、「ゆっくり湯船につかる派」におすすめしたいのが、「湯船で『自転車こぎ体操』」です。
「深部体温」を上げて「良質な睡眠」をとることが大切
【1】湯船でできる「自転車こぎ体操」
眠りの質を高めるためには、ひとたび「深部体温」を上げてから、入眠後に下がるようにすることが大切です。したがって、就寝前に入浴することは良質な入眠のために役立つのです。ただし、じっと湯船に入っているだけではちょっともったいない。湯船の中で「自転車こぎ体操」を行うと、深部体温を上げることに役立つとともに入浴がちょっとしたトレーニングタイムに変わり、ダイエット効果も期待できます。
お風呂の中では、浮力とともに適度な水圧がかかるので、膝関節に過度の負担をかけずに、エネルギー消費量をアップさせることができます。下半身には全身の6〜7割の筋肉が集中していますから、下肢を動かすことは「効率のいい運動」なのです。
コツは、思い切りよく、バシャバシャやること。ただし、自分のペースにあわせて無理のない範囲で行ってください。のぼせやすい人、高血圧の人は負担が大きいので行わないでください。
【「自転車こぎ体操」のやり方】
①湯船につかったら、両手をお風呂のフチにのせるか、フチをつかんで体を安定させる。
②背筋を伸ばして、自転車をこぐように足を片方ずつ動かす。
③1分間続けたら30秒休む。これを3セット続ける。
湯船に入らずに、シャワーだけですませる人も多いと思います。2つめは、そんな「シャワー派」の人でもできる活用法です。
「シャワーの前の運動」で、「深部体温」を上げる
【2】「ゾンビ体操+シャワー」で深部体温を高める
ダイエットには「良質な睡眠」が重要だということをご存じでしょうか?
不十分な睡眠は、満腹中枢や摂食中枢といった食欲に関わるコントロールを悪くして、過食傾向になりやすいのです。
そのためには、「深部体温」を高くしておくことが必要です。高まった深部体温が、就寝後にゆっくりと低下する過程で、眠りが深まるからです。
入浴時に湯船につかれば、深部体温を上げることができます。しかし、「シャワー派」の人は湯船に入らないので、十分に「深部体温」を高めることができません。
そこで、シャワーの前に「軽く運動する」ことをおすすめします。
運動によって体温が上昇し、血流がよくなります。この状態からシャワーを浴びれば、ゆっくり湯船につかったときと同じように全身が温まり、「深部体温」を高めることができます。
軽い運動でおすすめなのが、私が編み出した「ゾンビ体操」です。シャワー派の人はぜひ、「ゾンビ体操」をしたあとにシャワーを浴びてください。
【池谷式「ゾンビ体操」】(入浴前に1セットが目安)
① その場ジョギング+イヤイヤ運動を1分間
・お腹を凹ませるように力を入れ、背筋を伸ばして胸を張って立つ。肩・腕・手の力を抜く。
・両腕を思い切り上げてから、力を抜いて下ろし、両腕をダランと垂らす。背中を丸めないように注意する。
・姿勢を保ったまま、その場でジョギングする。足の痛みがある人や筋力の低下している人は小刻みに足踏みする程度でもOK。
・下半身の運動に合わせて両肩の動きを大げさにして、子どもがイヤイヤをするように両腕をブラブラとゆれるがままにする。
② その場ウォーキングを30秒間
・①をやめて、両足と両腕を大きく動かしながらその場でゆっくりウォーキングする。
※①(1分間)+②(30秒間)を3回繰り返して1セットとする。
入浴タイム活用法の3つめは、「入浴後に1杯の氷水を飲む」ことです。
【3】入浴後に「1杯の氷水」を飲む
お風呂上がりは汗をかき、水分が失われています。そのため、入浴後の水分補給は大切ですが、できれば「氷水での補給」がおすすめです。
「せっかく体が温まった状態なのに、体を冷やすのでは?」と思われるかもしれませんが、ダイエットのためには「冷たい水」がいいのです。
ご存じのように人間には体温があるため、冷たい水を飲むとその分だけ「体温を上げよう」としてエネルギーを使います。
例えば、冷たい水と、ある程度温かい水とでは、お湯を沸かすときに必要なエネルギー量が違います。それと同じようなことが体内でも起きるのです。
このエネルギーは体内の糖分や脂肪を燃やしてつくるので、それだけ代謝がアップします。ですから入浴後や運動のあとには、「冷たい水」がおすすめなのです。微々たるものですが、「チリも積もれば山」となります!
ただし、冷水を大量に一気飲みすると血圧が上昇したり、胃腸に負担がかかったりすることがありますので、少量ずつゆっくり飲むようにしましょう。
多忙なビジネスパーソンこそ「入浴タイム」でやせる!
入浴タイムは、のんびり湯船につかったり、音楽を聴いたり、読書をしたりなど、さまざまな過ごし方があると思います。あるいは、時間をかけずにシャワーだけで簡単にすませる人もいるでしょう。
時間のかけ方が異なっても、「入浴タイム」を有効に使って「内臓脂肪」を落とすというのは、忙しいビジネスパーソンのみなさんにとっては、とても効率がいい方法ではないでしょうか。
毎日の習慣を有効利用して「内臓脂肪」を落とせば、「見た目」が若返るだけでなく、何より「健康」な体に近づいていけるのです。
無理に激しい運動をしなくても、正しい食生活とともに毎日の生活習慣に「ちょっとした工夫」を取り入れることで、「お腹を凹ませる」ことは十分できる、私は実体験からそう確信しています。
著者:池谷 敏郎