「スマホを見るだけでOK」がんばらなくてもパフォーマンスが上がる3つのメソッド

無理せず、汗をかかず、仕事のパフォーマンスを上げるにはどうすればいいのか。心理学者の内藤誼人さんが3つの心理学的メソッドを紹介する――。

※本稿は、内藤誼人『がんばらない生き方大全』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■がんばらずにパフォーマンスが上がる心理学的手法

あなたの周りには、そんなにあくせくと働いているようには見えないのに、しっかりと仕事で良い成績を残し、たくさんの給料を稼ぎ出し、しかもプライベートの生活も充実している、という人がいませんか?

こんな人達は、「なるべく心理的な負担を減らしつつ、そんなに汗をかかずに、上手に高いパフォーマンスを上げるコツ」を押さえ、実践しているのです。

本稿では、拙稿『がんばらない生き方大全』から、今日から誰でもできる、超簡単で効果絶大な心理テクニックを3つに絞って紹介しましょう。

がんばらずにパフォーマンスが上がるメソッド。一つ目は「自分の映像を見るだけ」です。

自分が仕事をしている場面を、できれば同僚などに頼んで、一度くらいは動画に撮っておくとよいでしょう。

普段、私たちは、自分がどんな風に仕事をしているのか、はっきりわかっているわけではありません。自分のことなのですから、自分自身が一番よく知っているようでいて、実際には、そんなこともないのです。

そのため、自分の姿を、ビデオやスマホで録画しておき、それを眺めてみると、いろいろなことに気づくことができるのです。

「デスクワークしているときの姿勢が、こんなに悪いのか」
「自分はこんなにやる気のなさそうな接客をしているのか」

そういうことは、実際の映像を見てみるまで、なかなか気づけません。

■スポーツ選手が活用する「セルフ・モデリング法」

このように、自分自身の姿を映像で確認してみることを、「セルフ・モデリング法」といいます。スポーツ選手などは、この方法をよくやっています。自分の練習風景や、試合中の自分の姿を録画しておき、それを何度も確認するのです。

自分のことを観察していれば、どこをどんな風に改善すればいいのかがわかってくるのですね。

カナダにあるオタワ大学のアマンダ・ライマルは、高飛び込みの水泳選手の男女10名に、大会前に、自分の飛び込みの映像を見てもらいました。

大会が終わった後、1時間以内にインタビューしてみたのですが、「映像で自分の姿を見ていたら、自分について考えさせられることが多く、モチベーションが上がったり、自信がついたりした」というポジティブな回答がたくさん寄せられることがわかったのです。高飛び込み 写真=iStock.com/vm ※写真はイメージです – 写真=iStock.com/vm

このテクニックは、スポーツ選手でなく、ビジネスマンが使ってもいいでしょう。

普段の自分の姿を録画しておき、「なんだか、今日はやる気が出ないなあ」というときには、自分の映像を眺めてみるのです。

すると、「なるほど、ここをこんな風に改善してみようかな」とか、「こうすると、もっとラクに作業ができるのではないか」といったアイデアがポンポンと浮かんできて、それがモチベーションを高めてくれるでしょう。

やる気が出ないとき、「やる気を出さなきゃ!」といくら念じても、やる気なんて出てくるわけがありません。

こんなときには、自分の映像でもぼんやり眺めていればいいのです。すると、いろいろと自己改善について考えさせられることが頭に浮かんできて、それが引き金となって、やる気のほうも引っ張り出してくれるのです。

■「うまい人のやっていることを、見るだけ」のスゴイ効果

がんばらずにパフォーマンスが上がるメソッド。二つ目は「うまい人のやっていることを、見るだけ」です。

やる気が出ないときには、他の人の仕事ぶりを眺めてみるのもいいでしょう。

職場には、自分よりも成績のいい先輩ですとか、仕事のダンドリの上手な上司などがいるでしょうから、そういう人の仕事ぶりをこっそり盗ませてもらうのです。

この方法は、「モデル」(お手本)のやり方を真似するやり方なので、「モデリング法」と呼ばれています。

「ああ、なるほど、○○先輩はこんなやり方をしているのか」
「ふぅん、○△さんの手の動きは自分と違うなあ」

やる気が出ないときには、そういう観察の時間にあててください。仕事に疲れて、ちょっと休憩しているときでもいいかもしれません。

カリフォルニア州立大学サクラメント校のスティーブン・グレイは、24名の男子大学生のバドミントン初心者に、スイングの練習をさせてみたことがあります。

グリップの握り方や、足の運び方などの基礎的な訓練をさせたあとで、グレイは、モデリング法を試しました。20分間、プロ選手のビデオを視聴させてみたのです。

すると、どうでしょう、ただビデオを見ていただけなのに、フォアハンドの打ち方も、バックハンドの打ち方も、基礎訓練のときに比べて段違いに向上することが明らかにされたのです。

「ただうまい人のやっていることを眺めるだけ」というテクニックは、なかなか効果的な方法だといえます。

■科学的にも「うまい人から盗む」がいい

自分で、しっかり汗をかきながら練習するのもいいでしょう。そういう練習が不要だとはいいません。しかし、「うまい人から盗む」というやり方も、実は、大変に効果的なやり方なのだということは覚えておくといいでしょう。

仕事でもそうで、自分なりにがんばりながら、試行錯誤をして自分の技術なり、実力なりを磨いていくという姿勢は立派なものですが、別にそういうことをしなくとも、うまい人のやり方をしばらく眺めていれば、それなりに力はついてくるはずですよ。

料理人にしろ、大工さんにしろ、職人と呼ばれる人たちは、みな「モデリング法」を使って腕前を上げていきます。

もともと職人さんたちは、そんなに丁寧に指導もしてくれませんから(笑)、下の人間はどうしてもモデリングに頼らざるを得ないわけですが、実のところ、それは少しも悪い指導法ではないのかもしれません。

ちなみに、デスクワークでいうと、ただ机に座って作業をするだけなのに、何か技術のようなものがあるのだろうか、と思われる人がいるかもしれませんが、仕事ができる人をよくよく観察してみると、書類の置き方ですとか、メモの取り方ですとか、細かいところで普通の人とは違うことをやっているものです。

そういうものをバンバン盗ませてもらうといいでしょう。できる人の真似をしていれば、みなさん自身もそのうちできる人になることができますから。オフィスの窓の向こうでスーツの男性と女性の会話 写真=iStock.com/davidf ※写真はイメージです – 写真=iStock.com/davidf

■「やる気」が出ないときはエネルギッシュな人を眺める

がんばらずにパフォーマンスが上がるメソッド。三つ目は「エネルギッシュな人を眺めてみるだけ」です。

私たちは、自分が目にする人の影響を受けます

もともと性格的にのんびり屋さんでも、同じ職場で働いている人たちが、みなエネルギッシュに動き回っているのを見ていれば、そのうち自分も感化されて、エネルギッシュな人間になっていくものです。

どうにもモチベーションが上がらないときには、ホイホイと仕事を片づけていくような人を眺めてみましょう。エネルギッシュな人のそばで仕事をするのもいいですね。そのうち、何となく「自分もやってみるか」という気持ちになっていきますから。

米国ヴァージニア大学のモーリーン・ワイスは、水泳の経験がほとんどなく、水を怖がっていることが親にも確認されている子どもばかりを集めました。

その子どもたちを2つのグループにわけて、片方のグループには、同年齢の男の子と女の子が、「こんなの簡単」「泳ぐのって面白い」「僕はこんなことまでできるよ」などと楽しくおしゃべりしながら水泳している場面のビデオを7分間見せてみたのです。

比較のためのコントロール・グループには、水泳にまったく関係のないセサミストリートのビデオを7分間見せました。

それから、20分間の水泳の訓練を3日間やってみました。習うことは、6つ。顔を水につけること、ブクブクと息を吐くこと、水に頭まで潜ること、うつ伏せで水に浮く、といったことです。

練習前に、他の同年齢の子どもが楽しんでいるビデオを見せられたグループでは、3日間で習った6つの課題とも、ほとんどすべてクリアしました。

他の子どもが「簡単、簡単」といってやっているのを見ると、「自分もできそう」と思うようになったのですね。ちなみに、コントロール・グループの子どもたちも健闘したのですが、平均4.5の課題しかできませんでした。

■街やテレビで「エネルギッシュな人」を探してみよう

仕事のやる気が出ないときには、ガンガン仕事をしている人をしばらく眺めてみるといいですね。すると、「自分もやるぞ!」という気持ちになっていきますから。内藤誼人『がんばらない生き方大全』(SBクリエイティブ) 内藤誼人『がんばらない生き方大全』(SBクリエイティブ)

サッカー元日本代表のキャプテンとして活躍した長谷部誠さんは、やはりモデリングをやっていたそうです。ただし、他のサッカー選手をモデルにしたわけではありません。

長谷部さんによると、やる気が出ないとか、心が迷ったときには、真夏の炎天下の中、汗水を垂らしてがんばっている工事現場のおじさんを眺めるようにしていたそうです(長谷部誠著、『心を整える。』幻冬舎)。工事現場で働く建設作業員を見ると、自分もがんばらないと、という気持ちになったのでしょう。

「どうにも力が出ない」というときには、がんばっている人の姿を見ると、「自分も、もうひとふんばりしてみるか」という気持ちになります。アスリートが走っている姿などを動画で探して、そういうものを見てみるのもいいかもしれません。

———-内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。『すごい! モテ方』『すごい! ホメ方』『もっとすごい! ホメ方』(以上、廣済堂出版)、『ビビらない技法』『「人たらし」のブラック心理術』(以上、大和書房)、『裏社会の危険な心理交渉術』『世界最先端の研究が教える すごい心理学』(以上、総合法令出版)など著書は200冊を超え、、近著に『めんどくさい人の取扱説明書』(きずな出版)がある。

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(心理学者 内藤 誼人)

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