「ハンバーガー」が夏バテの原因となる医学的根拠 活力ある腎臓を保つには「スクワット」も有効

暑さが9月まで長引くと言われている今年の夏。夏バテ対策で見落とされがちなのが腎臓へのケアです。腎臓専門医の髙取優二氏によると「ファストフードは腎臓への負担が大きく、夏場に食べすぎないほうがよい」とのこと。ほか、腎臓ケアの観点から食だけでなく、運動や呼吸法なども含めた具体的な夏バテ対策について、髙取氏の著書『人は腎臓から老いていく』より、一部抜粋、再構成してお届けします。

腎臓が弱ると全身がだるくなる

7月が観測史上最高の暑さになるなど、猛暑に見舞われている今年の夏。

【画像】寝る前の腹式呼吸がオススメ! 布団に入って、腹式呼吸を繰り返していると、寝つきがよくなるだけでなく眠りも深くなる

気象庁の発表によると、9月以降も西日本では平年を上回る暑さ、東日本でも平年並みか平年より高くなるという予報で、お盆を過ぎてもまだまだ暑さは続きそうです。

怖いのは、疲労が蓄積していわゆる「夏バテ」を起こすこと。

夏バテといえば「うなぎや豚肉などビタミンB1が豊富な食材を食べる」「エアコンの温度に気を配る」など様々な対策が推奨されていますが、意外に見落とされがちなのが「腎臓」へのケアです。

実は、夏バテと腎臓は深い関わりがあります。

酷暑で汗を大量にかくと、体内の水分量が減少し腎臓に流れる血液の量が減ります。

腎臓は血液中の老廃物を除去する「人体のフィルター」ともいわれる重要な臓器。

腎臓への血液量が減り、老廃物をうまく排出できなくなるとほかの臓器へ「汚れた血液」が送られてしまうため、胃腸の調子が悪くなり、食欲不振や疲労、だるさといった症状が出やすくなるのです。

ファストフードが腎臓にダメージを与える

では、元気な腎臓を保つにはどうしたらいいのでしょうか。

腎臓に負担をかけるワースト3が、塩分・内臓脂肪型肥満・喫煙です。

腎臓は体内の余分な塩分を排泄する働きをしています。食事で塩分を取りすぎると、排泄しなければならない量が増えるので腎臓に過度の負担がかかります。この状態が続いたら、腎臓が疲れ切って、慢性的に機能が低下します。

厚生労働省が実施している「国民健康・栄養調査」(令和1年度)によると、日本人の1日当たりの食塩摂取量は平均10.1gとなっています。日本高血圧学会が推奨する1日分の塩分の目安は6gですが、私たちの体は2gの塩分でも健康的に生活できます。

ちなみにハンバーガー類は、一般的に1個で2g以上の塩分が含まれているので、それだけで1日に必要な塩分を超えてしまいます。

ファストフードをはじめ、加工食品やインスタント食品を避けるだけでも、塩分摂取量は大きく減らせます。腎臓を弱らせないためには、こうしたことを心がけるといいでしょう。

また、ご自宅で塩を使う場合は、食卓塩よりミネラルを多く含んだ天然塩をおすすめすます。食卓塩は塩化ナトリウム99%なのに対し、天然塩は同じ量でも塩化ナトリウムの割合が低く、腎臓へのダメージを減らせます。

過食と運動不足によって内臓脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、「リンゴ型肥満」とも呼ばれています。これに、糖尿病・高血圧・脂質異常症の中で2つ以上を合併した状態が、「メタボリックシンドローム(メタボ)」です。

アメリカ腎臓学会の学会誌に発表された研究によると、内臓脂肪型肥満の人はそうでない人に比べ、腎臓の機能が低下して血圧が高めであり、年齢が進むと慢性腎臓病を発症するリスクが高い傾向があるとのことです。

理由としては、メタボによる高血糖が考えられます。

血糖値が高いと血管の炎症の原因となり、進行すれば血管の詰まりを誘発します。当然、「毛細血管のカタマリ」といっても過言ではない腎臓にも悪い影響しか与えません。

健康診断でメタボと診断されたり、おなか回りが気になったりする人は、食べすぎ・飲みすぎはないか、普段の生活を見直してみましょう。「そんなにたくさん食べていない」のにメタボ気味の人は、炭水化物を過剰に摂取していないか、注意してチェックしてみてください。

喫煙は血管を収縮させて、腎臓の血流量を減らします。さらに、活性酸素を発生させるため、酸化が進み、腎臓の毛細血管にダメージを与えます。

タバコの本数が増えるほど、腎機能障害は進みます。1日に20本以上吸っている人は、吸わない人に比べて末期腎不全に至る率が2.3倍というデータがあります。

また、禁煙で慢性腎臓病の進行を抑えることができるという報告もあります。

筋力アップは夏バテ対策としても効果的

意外な話ですが、活力ある腎臓を保つには「筋肉」も重要です。

筋肉の増加が腎臓を保護することは「筋腎連関」と呼ばれており、有酸素運動や適度な筋力トレーニングが、患者さんに推奨されています。

運動によって全身の血流が促進されると、内臓脂肪の減少や、血圧・血糖値の調整にもつながります。

筋力トレーニングについては、無理なく下半身の筋肉を鍛えられる方法がお勧めです。

体の中でも、お尻や太ももなどには大きな筋肉があります。そのため、下半身を鍛えると、効率よく筋肉量が増やせるのです。

また、ふくらはぎの筋肉は、血液を心臓に押し戻すポンプの働きをしています。ふくらはぎの筋肉が収縮することで、中を通っている静脈がギューッと圧迫され、重力に逆らう形で血液が上がっていきます。

「足は第二の心臓」といわれていますが、この「足」が指しているのが、ふくらはぎなのです。

お尻や太ももを鍛えるにはスクワット、ふくらはぎを鍛えるにはかかとの上げ下げが効果的です。1日4~5回を1セット以上、余裕のある時間に行うことをお勧めします。

ただ、筋力が衰えている人はフラつくと危ないので、最初はイスの背などにつかまって行ったほうがいいでしょう。

それから、筋力トレーニング全般にいえるのですが、不調を感じているときには無理をしないでください。

痛みが出るのを防ぐには、一度に何回も行うのではなく、時間があるときに数回、こまめに行うことがポイントです。

なお、腎臓病が進行している患者さんについては、運動が制限される場合もあります。ですから、実行する前に必ず主治医と相談してください。

自律神経が整えば腎臓もよくなる

ストレスは、腎臓への血流を低下させます。ですから、過労や睡眠不足を避けて、規則正しい生活を送ることがとても大切です。

イライラしたり、緊張したりしやすい人は、腹式呼吸を取り入れるといいでしょう。腎臓への血流をコントロールする自律神経のバランスを整えて、精神状態を安定させるためには、ゆっくりと深い呼吸が効果的だからです。

腹式呼吸は、1日に1回以上、できる人は何回でも行ってかまいません。お勧めのタイミングは、寝る前です。布団に入って、腹式呼吸を繰り返していると、寝つきがよくなるだけでなく眠りも深くなるでしょう。

有酸素運動でお勧めしたいのは、「ゆっくりジョギング」とウォーキングです。1日20〜60分を週に3〜5回行うといいでしょう。筋力が落ちて長く運動できない人は、無理をせず、散歩を少し楽しむ程度でもかまいません

運動をする習慣がない人にお勧めの有酸素運動が、「ゆっくりジョギング」です。

ウォーキングとジョギングの運動効果は2倍も違う

「運動習慣がないのに、いきなりジョギング?」と疑問に思われるかもしれませんが、歩幅を狭くしてゆっくりと走るので、誰でも簡単に始められます。

ポイントは、スピードです。7分かけて1㎞を進む程度の速さで進むので、早歩きと変わりません。

私の場合は、1回2㎞ぐらいのゆっくりジョギングを、週3回行っています。

ゆっくり走るぐらいならば、早歩きでいいのではないかと思われるかもしれません。しかし、同じ速さでウォーキングとジョギングをした場合、運動効果はジョギングのほうが2倍も高いことがわかっているのです。

また、大またで早く歩くよりも、小またでゆっくり走るほうが、着地するときに地面から受ける衝撃が小さくなることも報告されています。

ただ、すでに股関節やひざ、足首に痛みがある場合は、専門医と相談してから行ってください。

ゆっくりジョギングならば、スポーツウェアやシューズを着用する必要はありません。普段、出かけるときの服装と履き慣れた靴で始められます。

買い物に行く途中や、散歩の合間に、数分でかまわないのでゆっくりジョギングを取り入れて、有酸素運動を行う習慣をつけるといいでしょう。

こうした運動は、暑さが厳しい日中ではなく、午前中か夕方以降の実施をおすすめします。

髙取 優二:医学博士、腎臓専門医

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