1993年から毎年公表している『住みよさランキング』は、住みよさを表す各指標について偏差値を算出して、その平均値を総合評価として順位付けしている。
算出指標は、カテゴリー別(安心度・利便度・快適度・富裕度)の4つからなる20項目を選択。なお、ランキング対象は前回と同じく全国の792市と東京特別区20区(千代田区・中央区・港区を除く)の合計812市区となっている。
武蔵野市は『富裕度』の各指標で1位を独占
住みよさランキング2022の総合1位は、東京都武蔵野市となった。個別指標を大きく改定した2019年は25位だった順位は、2020年に3位、前回2021年は2位と着実に順位を上げて、今回初の総合1位に上り詰めた。
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市の人口は14.7万人で、都のほぼ中央に位置しており、市内を東西に走るJR中央線に沿って主に三駅圏で構成されたエリアのうち吉祥寺圏には、デパートや専門店などの商業施設が多く集まる。カテゴリー別順位では、『利便度』だけが前回と同じ4位であるのを除き、全て前回順位を上回っていた。前回5位だった『富裕度』は1位。指標のうち『⑲1住宅当たり延べ床面積』を除き『富裕度』全ての指標で1位となった。
総合2位は福井県福井市で、前回7位から順位を上げた。市の人口は26.1万人で、明治以後は県の政治・経済の中心として発展を遂げ、現在は繊維産業や化学産業を中心に北陸圏の主要な工業地帯の一端を担っている。カテゴリー別順位では、『快適度』を除き全てで前回順位を上回った。前回まで外来・入院ともに『15歳年度末まで』としていた『④子ども医療費助成』を『18歳年度末まで』拡充したことが順位上昇に繋がった。『⑱納税義務者1人当たり所得』についても前回215位から75位と順位を上げている。
総合3位は前回1位の石川県野々市市。2020年から総合1位継続中だったが、3年連続とはならなかった。市の人口は5.3万人で、県のほぼ中央に位置し、金沢市と白山市に隣接している為、両市とは公共交通機関で手軽に行ける距離にあり、経済的にも結びつきが強い。前回同様に『⑧人口当たり大規模小売店店舗面積』は1位で、カテゴリー別の『利便度』は9位と評価が高い。街の若さは全国トップクラスで、国勢調査2020年公表の同市の平均年齢は、41.7歳で全国15位の若さ。『③20~39歳女性人口当たり0~4歳児数』でも56位と子育て世帯が多いことがうかがえる。
今回新たに総合トップ50位にランクインを果たした都道府県は、山梨県(北杜市:25位)、広島県(大竹市:45位)、新潟県(上越市:50位)。前回ランクインの宮城県、静岡県、大分県勢は姿を消した。
東京特別区が低調な結果に
トップ50位の都道府県別市区数の上位は、東京都の7市区、石川県の6市、福井県の5市、愛知県の5市とつづく。石川県、福井県、愛知県は市の顔ぶれに一部変化はあったが、前回とランクイン数に変わりはない。一方で、東京都だけが前回10市区から数を減らしていた。特に、江東区を除く全ての東京特別区は、総合偏差値ともに前回順位を下回った。
コロナ禍の影響により、2020年の特別区の転入者数は前年比で平均9%以上の減少に転じており、本来は特別区のストロングポイントであった『⑪転出入人口比率』が低調だったことが、総合評価を押し下げたようだ。
同じ都市部でも大阪府は、前回の大阪市に加えて箕面市の40位と吹田市の48位がランクインを果たしている。
「住みよさランキング2022」算出指標
■ランキングの対象
2022年6月時点で、全国にある市と特別区(東京23区)が対象。特別区のうち、千代田区、中央区、港区の3区は対象から除外しており、812市区を対象としている。
■算出指標
「安心度」、「利便度」、「快適度」、「富裕度」の4つの視点から、20のデータを用いて算出。
■算出方法
各指標について、平均値を50 とする偏差値を算出。すべての指標の偏差値を平均したものを「総合評価」としている。偏差値は、特異数値による過度の影響を避けるため、各指標の最高を70、最低を30に調整しており、末尾に※を付した指標は、小→大の順に算出。また、財政力指数、人口当たり法人市民税は特別区を除外して算出している。
A.安心度
①人口当たり病院・一般診療所病床数(2020年10月):厚生労働省「医療施設調査」
②老年人口当たり介護老人福祉・保健施設定員数(2020年10月):厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」
③20~39歳女性人口当たり0~4歳児数(2021年1月):総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
④子ども医療費助成(対象年齢・所得制限の有無)(2022年4月):東洋経済調べ
⑤人口当たり刑法犯認知件数(※)(2020年):各都道府県警察調べ
⑥人口当たり交通事故件数(※)(2020年):交通事故総合分析センター調べ
B.利便度
⑦人口当たり小売販売額(2015年):総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
⑧人口当たり大規模小売店店舗面積(2021年):東洋経済「全国大型小売店総覧」
⑨可住地面積当たり飲食料品小売事業所数(2016年6月):総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
⑩人口当たり飲食店数(2016年6月)総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
C.快適度
⑪転出入人口比率(2020年):総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
⑫水道料金(※)(2022年4月):東洋経済調べ
⑬汚水処理人口普及率(2021年3月):国土交通省、農林水産省、環境省調べ
⑭気候(月平均最高・最低気温、日照時間、最深積雪)(1991~2020年):気象庁「メッシュ平年値データ」
⑮都市計画区域人口当たり都市公園面積(2020年3月):国土交通省「都市公園整備水準調書」
D.富裕度
⑯財政力指数(2020年度):総務省「市町村別決算状況調」
⑰人口当たり法人市民税(2020年度):総務省「市町村別決算状況調」
⑱納税義務者1人当たり所得(2020年):総務省「市町村税課税状況等の調」
⑲1住宅当たり延べ床面積(2018年10月):総務省「住宅・土地統計調査」
⑳住宅地平均地価(2021年7月):国土交通省「都道府県地価調査」
(注記)
・①の病床数は、各市区で算出した値と「二次医療圏」で算出した値を比較し、高い値で偏差値を算出。
・④の子ども医療費は、対象年齢と所得制限の有無を東洋経済が指数化して偏差値を算出。
・⑦の小売販売額、⑧の大型店面積は、各市区で算出した値と「東洋経済生活圏」で算出した値を比較し、高い値で偏差値を算出。
・⑭の気候は、月平均最高気温、月平均最低気温、日照時間、最深積雪のそれぞれの偏差値の平均値を採用。
(東洋経済『都市データパック』編集部)