「残業おじさん」と「帰りたい若手」溝を埋める方法 そもそも残業は必要?何を評価軸にするか

現在40代以上の社員は、残業することに対してあまり抵抗がない人もいるでしょう。残業は当たり前であり、休日出勤も厭わない世代と、無駄な残業はしたくないと考えているZ世代では価値観が違い、社内の人間関係に問題が生じる可能性は十分にあります。

いま多くの職場で求められているのは、無駄な残業ではなく、「生産性」です。実際、多くの企業では「1時間当たりの労働生産性」を、社員の成果の1つとしています。

企業の状況によっては、残業は必要です。しかしその残業が成果を生まないのであれば、やめたほうがよいでしょう。仮に残業せずとも生産性が高いのであれば、それは組織として大いに評価する必要があります。

この問題解決には、人事制度の存在が重要になりました。ネベル仙台一番町 récent

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人事制度が機能していない企業では、社員は賃金額で自分の評価を推測しています。

社員は何が評価されているか不明

私は2023年6月までに1369社の人事制度の構築コンサルティングをしました。そのうち約半分は、人事制度の運用に失敗した会社でした。

多くの場合、人事制度は賃金を決めるための制度として構築・運用されますが、賃金を決めた根拠となる、具体的な評価を社員にフィードバックしていません。

そのため、社員は自分はどのように評価されているのかわからないまま仕事をしています。つまり、自分は仕事ができているのか、できていないのか、わからずに仕事をしているのです。この状態で意欲的に仕事をすることは、ほとんど不可能です。

もちろん、社員に評価は伝えなくても、社員の昇給・賞与は決められています。しかし、これでは社員は昇給・賞与の金額が自分の評価だと考えざるをえません。昇給・賞与の金額が昨年より少なくなると、評価が下がったと思い込み、社員はやる気をなくしてしまいます。

働かないオジサン・オバサンが発生した本当の理由も確認しましょう。自分の昇給・賞与が昨年より増えていた場合、社員は自分の評価は昨年よりも高くなったと誤解することになります。

これが「働かないオジサン・オバサン」を生み出した本当の理由です。特に、年齢給・勤続給は評価に関係なく増えるため、問題は発生し続けます。

今でも「働かないオジサン・オバサン」が社内に生まれ続けているのは、このように会社の人事制度がまったく機能していないことが原因なのです。

そのうえ昇給・賞与を決める調整会議では、上司による評価は参考程度にすぎなくなっています。

昇給や賞与を決める際に、直属の上司による評価は参考程度にしかなっていません。なぜなら、昇給・賞与を決めるために調整会議を行っているからです。

一方で社員はそのことを知っている可能性があります。この会議で昇給・賞与が決まるのであれば、上司から高い評価を得る必要はないと考えてしまう若手社員も出てくるでしょう。

このままではZ世代と先輩世代の価値観の違いから、問題が発生するでしょう。

成果が上げられなくても、残業していれば会社は評価してくれるだろうと思っている世代の社員がいます。特に昭和のオジサン社員です。確かに残業して仕事をしている様子を上司が見て「頑張っている」と評価していた時代があったのも事実です。

世代間による価値観の違い

この世代のオジサン社員とZ世代の若い社員では、仕事に対する価値観が異なります。成果があまり上がっていないのに残業せず定時に帰るZ世代の社員の行動は、オジサン社員から見ればとても理解できません。「今の若い社員はやる気がない」と考えてしまう可能性もあるでしょう。

でも、Z世代の社員は決してやる気がないのではなく、仕事に対する価値観が違うだけなのです。この世代間による価値観の違いを理解しないままでは、組織内がギクシャクしてしまいます。

この問題を解決するためには、評価制度を機能させることです。社員の何を評価しているか、その要素を明らかにし、そしてその評価の結果を上司から部下にフィードバックします。

そのためには、上司の評価と調整会議の評価を一致させる必要があります。上司へ正しい評価の指導をすることで、調整会議を不要にするのです。これにより、上司の評価=昇給・賞与になります。

残業することを評価するのか、しないのかをきちんと社員に明らかにするときが来たといえるでしょう。評価する要素を明らかにし、社内で統一することで世代間の考え方のギャップもなくすことができます。

働き方改革により、残業して成果を上げることよりも生産性の高さが評価される時代への対応が必要です。

今の時代は優秀な社員像が大きく変わりました。2019年に施行された日本の働き方改革により、戦後初めて残業時間の上限が規制されました。多くの会社は、今まで「1人あたりの労働生産性」で社員の成果を評価してきましたが、「1時間あたりの労働生産性」で評価するように変わりました。

優秀な社員は「1カ月間に稼ぐ粗利益が高い社員」ではなく、「1時間あたりに稼ぐ粗利益が高い社員」にパラダイムシフトしたことに、早く気がつかなければなりません。

残業のあり・なしはまったく関係ない

1時間あたりに稼ぐ粗利益で評価することは、残業のあり・なしとはまったく関係なく、残業時間の長さは評価の対象にはなりません。

例えば、月80万円の粗利益を稼ぐ社員が所定労働時間160時間働いたとすると、この社員の生産性は1時間あたり5000円になります。月90万円の粗利益を稼ぐ社員が所定労働時間160時間に加えて40時間残業していたとします。合計200時間のため、この社員の生産性は1時間あたり4500円になります。

月間の粗利益で評価するのか、1時間あたりの粗利益で評価するのか、企業は決断しなければならないときが来ました。もちろん、これからは1時間あたりの粗利益が高い社員を評価したほうがよいでしょう。

今までであれば、 粗利益を80万円稼いだ前者の社員よりも90万円稼いだ後者の社員が優秀だと評価されてきましたが、これからは生産性の高い前者の社員を高く評価することをおすすめします。

その理由は、残業して粗利益を稼ぐ社員は、最後にまったく同じことを言って、例外なく成果がストップすることになるからです。

「もうこれ以上は成果を上げられない」

これは、もうこれ以上残業できないと言っているのです。

生産性の高い社員とは、残業する社員ではなく、仕事の仕方を改善し、残業せずに成果を上げ続けている社員です。

生産性を上げることは、労働人口が減っている日本にとってはとても大切なことです。

仮に、1時間あたりに稼ぐ粗利益が5000円から2倍の1万円になれば、1人で2人分の成果を上げていることになります。これからの日本の大いなる人手不足を補うことができるでしょう。

そのために生産性の高い社員のやっている仕事を明らかにすることです。

今取り組む必要があることは、生産性の高い社員がやっている仕事の仕方を全社員に明らかにすることです。これが評価制度の本来の役割なのです。

生産性の高い社員は意欲的に仕事していることは間違いないでしょう。しかし、それ以上に生産性の高い社員が何をしているか、その仕事の内容が重要です。

これを評価シートとして社員に可視化することです。可視化することで、社員は生産性の高い社員が実際にやっていることを知ることができます。

世代を超えた協力体制ができる

生産性の高い社員が優秀である、高く評価されると全社員が知ることで、残業をしないZ世代の社員を問題視するオジサン社員はいなくなります。オジサン社員とZ世代の社員の協力体制をつくり上げることが可能になるのです。

社員は世代関係なく優秀な社員になりたいと考えています。

価値観や考え方が世代によって違うのは当然のことであり、このことを組織内で問題提起しても意味がありません。どの世代の社員であっても褒めてもらいたいと考えることはまったく同じです。

「今、我が社で優秀な社員は生産性の高い社員です。全員優秀な社員になりたいですか?」と尋ねれば、世代を超えて全員同じように「優秀な社員になりたい」と答えるでしょう。

だからこそ、全世代、全社員を褒めるための評価シートを生産性の高い社員をモデルにつくる必要があるのです。

世代を超えて全社員の知恵を結集し、活用することで生産性を飛躍的に上げることが可能になります。あらゆる世代の社員が協力しあって取り組むことが求められるようになりました。

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