「高齢でもヨボヨボにならない人」はよく食べている…医師が勧める「若返りホルモン」を増やす炭水化物の名前

健康で長生きするにはどんな食生活を送ればいいのか。医師の満尾正さんは「『若返りホルモン』として知られるDHEAを増やす食材は積極的に食べたほうがいい。DHEAには免疫力を高める、発がんを抑制するなどの働きがあり、健康長寿の人はこの値が高いことがわかっている」という――。

※本稿は、満尾正『名医の食卓』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

「週のうち3~4日は魚料理」を勧めるワケ

◎魚介類

たんぱく質摂取が大事だと考えるご家庭では肉食になりがちです。わたしは「週のうち3~4日は魚料理を食べる」ことをおすすめしています。魚介類は良質なたんぱく源になるとともに、オメガ3脂肪酸のEPA・DHAが豊富だからです。

EPA・DHAは体内の炎症を抑える働きのほか、血液をサラサラにして血栓予防効果もあることが知られています。うつ病予防や認知症予防の可能性を示唆する報告があり、脳の健康を守るためにも欠かせません。

EPA・DHAはとくに青背の魚に多く含まれていますが、エビ、イカ、タコ、カニ、ホタテなどの魚介類からも摂取できます。エビやホタテにはアミノ酸の一種であるグリシンも多く含まれます。グリシンはコラーゲンの構成成分となるほか、深部体温を低下させて入眠へ導きやすくする作用があることが報告されています。(*1)

「一物全体食」を心がけ、魚のなかでも丸ごと食べられる小アジ、イワシ、シシャモのような小型の魚を優先的に選びましょう。

また、鮭は免疫維持に欠かせないスーパービタミンであるビタミンDをもっとも多く含む食材です。抗酸化成分であるアスタキサンチンも多く含まれます。牡蠣には亜鉛が豊富で、大ぶりの牡蠣4~5個で成人男性の1日の推奨量11mgがカバーできます。一方、食物連鎖の頂点にいるマグロやカツオのような大型の魚には水銀のリスクがあります。(*2)

野菜は「1日4色以上」を組み合わせて食べる

◎1日4色以上の野菜

野菜はビタミン・ミネラル・食物繊維の宝庫ですので、野菜不足はそのまま栄養不足に直結します。また、野菜にはファイトケミカルと総称される植物特有の色、香り、苦味などをもたらす成分が含まれています。

これは、自分では動くことができない植物が、天敵や紫外線などから身を守るためにつくり出した成分だと言われています。ポリフェノール(複数のフェノール性ヒドロキシ基を持つ植物成分の総称。強い抗酸化作用をもつ)もファイトケミカルの一種です。

出所=『名医の食卓』(アチーブメント出版)

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ファイトケミカルは、ビタミン・ミネラルとは違い、その機能や摂取目安量が明らかになっていない部分も多く、人間の体にとって不可欠とまでは言えません。しかし、体内の炎症を防ぐ抗酸化作用や脂肪燃焼、免疫力強化など、さまざまな恩恵が期待されます。

ファイトケミカルは色素成分に出ることが多いため、さまざまな色の野菜を食べることで効率的に摂取できます。推奨されている1日の野菜の摂取量(350g以上)はなかなかイメージしづらいものですが、1日4色以上の野菜を組み合わせて食べるという方法であれば実践しやすいですし、いくつものファイトケミカルが体内に取り込まれて相乗効果を発揮してくれます。

参考文献
*1:J Pharmacol Sci. 2012;118(2):145-8.
*2:https://www.fda.gov/food/environmental-contaminants-food/mercury-levels-commercial-fish-and-shellfish-1990-2012

日本人に「不足しがちな栄養素」を補うには…

◎緑の濃い野菜

ほうれん草、小松菜、春菊、ケールなどの青菜や、ブロッコリー、ゴーヤなど緑の濃い野菜は、日本人に不足しがちなマグネシウムを多く含んでいます。マグネシウムは、骨や筋肉などの細胞内に多く存在しており、エネルギーをつくり出すためになくてはならない栄養素です。血管や筋肉をやわらかく保つのにもマグネシウムが関わっています。不足すればマグネシウムと拮抗するカルシウムの濃度が上昇し、代謝がうまくいかなくなります。

その結果、体のあちこちで筋肉が収縮して痙攣が起こりやすくなります。足の筋肉で起これば「足がつる」ことが多くなりますし、血管が収縮すれば血圧が影響を受け、やがては糖尿病、心臓病などの病気につながります。腸の動きも腸管壁の筋肉によっておこなわれているため、収縮状態が続けば消化管の動きが低下し、便秘の原因になります。

このようにマグネシウムは全身に関わる重要な栄養素でありながら、ストレスがかかると尿からどんどん排出されてしまいます。加齢や薬の影響などによって体内のマグネシウム量が減ってしまうこともあります。そもそも供給源となる野菜に含まれるマグネシウム量は減っているのに、ストレスの多い現代社会では、多くの人がマグネシウム不足を招きやすいという構図になっているのです。さらに、骨を強くしようとカルシウムばかりを補充すれば、よりアンバランスを招く結果になります。意識して緑の濃い野菜を積極的に食べることをおすすめします。

「自然薯を食べると元気になる」の科学的根拠

◎粘り気のある芋類

自然薯、長芋、里芋、大和芋、菊芋など粘り気のある芋類には、男性ホルモン・女性ホルモンの原料となるディオスゲニンが多く含まれています。

1930年代に自然薯の研究をしていた米国人研究者が、自然薯に体内のDHEAを増やすディオスゲニンという成分があることを発見し、以来、「自然薯を食べると元気になる」と言われるようになりました。自然薯は「山薬」という名称で滋養強壮作用のある漢方薬(八味地黄丸や六味丸など)にも含まれています。その後、自然薯と同じ系統の植物にも似た作用をもつ物質が多く含まれることがわかりました。

自然薯。「若返りホルモン」として知られるDHEAを増やす成分が豊富に含まれる(写真=7’o’7/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

DHEAはコレステロールを原料に副腎でつくられ、免疫力を高める、発がんを抑制するなどの働きがあります。このDHEAをもとに、男性の場合は精巣で、女性は副腎、脂肪組織、卵巣で男性ホルモン(テストステロン)がつくられています。テストステロンは女性にとっても重要で、性機能だけでなく、筋肉をつくる、決断力や意欲を増強させる、記憶力を維持するなど、「活動する力」を生み出す源となります。女性ホルモンもテストステロンを変換させてつくられます。

多くのホルモンは、加齢とともに減少する傾向にありますが、DHEAも男女ともに20代が分泌のピークで、加齢に伴って減っていきます。逆に、健康長寿の人はDHEAの値が高いこともわかっています。DHEAが「若返りホルモン」と言われる所以です。

ヤムイモ、京芋、タロ芋なども見つけたら入手して料理に使ってみましょう。良質なたんぱく質、亜鉛もDHEAの生成を助けます。

海藻は健康に良いが、「食べすぎ」は厳禁

◎海藻類

海水のミネラルをたっぷりと取り込んだ海藻類は、人間にとっても貴重な栄養源です。海藻にもっとも特徴的なのはヨウ素(ヨード)が多く含まれることでしょう。ヨウ素は甲状腺ホルモンの主原料となるほか、免疫機能をサポートする重要なミネラルです。海産物に恵まれ、海藻を食べる習慣が根付いている日本人はよほど特殊な食生活をしていないかぎりヨウ素不足になることはありません。しかし、海産物を食べる機会の少ない海外の内陸国家では、ヨウ素の摂取不足による健康被害が深刻な問題となっている国もあります。

満尾正『名医の食卓』(アチーブメント出版)

海藻にはヨウ素のほかにも、カルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム、亜鉛などのミネラルが豊富に含まれています。オメガ3脂肪酸、ビタミンD、ビタミンBも含まれます。また、フコイダン、ポルフィランなどと呼ばれるネバネバした成分は水溶性食物繊維で、腸内環境を整えるのに貢献します。水溶性食物繊維は水に溶けるとゲル状になって膨らみ、食べ物を包み込むため、消化吸収がゆっくりになるのです。

さらに、海藻にはフロロタンニンと呼ばれる特有のポリフェノールも含まれていて、抗炎症作用や抗酸化作用についての研究が進められています。

栄養豊富な海藻ですが、いくら健康によくても食べすぎは禁物です。ヨウ素の含有量が多い昆布を毎日大量に食べ続けると、過剰摂取となり甲状腺機能が低下してしまうリスクがあります。過不足なく、上手に海の恵みを取り入れましょう。

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