「10時間睡眠」の大谷翔平が証明している…仕事の効率アップには「ショートスリーパー」を今すぐやめるべき理由

睡眠時間が短い生活を続けると、人はどうなるのか。コンサルタントの三浦将さんの書籍『改訂新版 自分を変える習慣力 コーチングのプロが教える、潜在意識を味方につける方法』(クロスメディア・パブリッシング)より、「睡眠と仕事の効率の関係」についてお届けする――。

早朝の1時間は日中の2時間分の価値がある(※写真はイメージです) – 写真=iStock.com/Wand_Prapan

■スーパー経営者が実行する「早起きの習慣」

よい睡眠を取っている人は、情緒が安定していて、病気も少なく、体調や肌の調子なども良好であると言われています。睡眠の習慣をよりよい方向にしていくことによって、人生のさまざまな面における改善効果を生みます。

早起きの習慣は、数ある習慣の中でもやはり王様クラス。早起きを習慣化することによって、毎日を快適にスタートすることができ、日々その全体が充実することにつながります。

Appleのティム・クックやスターバックスのハワード・シュルツ、そしてディズニーのロバート・アイガーら、世界に影響を与えるようなスーパー経営者たちは午前4時台に起床します。

■早朝の1時間は日中の2時間分の価値がある

早朝の1時間は日中の2時間分の価値があると言われています。仮に5時から7時の2時間を仕事や創作活動に使ったとしたら、1年で、2時間×365=730時間の時間を有効に使っていることになります。

これを日中のクオリティに置き換えたとすると、実に1460時間という膨大な時間を得ることになります。

CEOたちのように、日中において分刻みの仕事をしている人たちにとって、この朝の時間は、運動をしたり、ゆっくりと自分と向き合ったり、考えを整理したり、アイデアを生みだしたりするのに、なくてはならない時間なのでしょう。

■「朝2時間の英会話」1年続ければビジネスでも通用する

ちなみに、スキルをある程度使いこなせるレベルまでに必要な時間は、パソコンで60時間、英会話で1000時間と言われています。英語があまり話せない人も、仮に、この朝の時間を1年間英会話に費やせば、それは1000時間近い価値になり、1年後にはビジネスでも十分に通じるレベルになるということです。

私は、30歳まで英語が全く話せませんでした。TOEICは恥ずかしながら、400点台でした。しかし、留学に際し、早朝の時間を中心に使って、3カ月集中的に英語に取り組んだところ、900点台までジャンプアップできた経験があります。

英語を使ってぜひとも達成したい目的のある人は、早朝の時間を使って、毎日粛々と英語に取り組めば、数カ月後には相当なレベルまで到達する可能性があります。

最近は、スマホでできるオンライン英会話もあるので、毎日取り組むという意味でもおすすめです。

■メラトニンは約15時間後に分泌される

また、早起きをして太陽を浴びると、早く寝るというパターンを作りやすくなります。

早起きして、太陽を浴びると、メラトニンというホルモンが脳内に分泌されます。メラトニンは眠くなるホルモンです。不思議なことに、メラトニンは、日光を浴びてから約15時間後に分泌されるという性質があります。仮に朝5時に起きて、日光を浴びたとしたら、15時間後の20時に眠気を感じるようにできています。

この時間に眠気のシグナルを身体が送ってくれば、自然と床に就く時間も早くなり、より早起きの習慣化に向かいやすくなるというわけです(メラトニンが分泌されるのが15時間後ということは、やはり8時間から9時間が、人間にとって1つの自然な睡眠時間ということなのかもしれません)。

メラトニンは約15時間後に分泌される(※写真はイメージです) – 写真=iStock.com/recep-bg

■「20時以降の仕事」は酔っぱらって仕事をしているのと同じ

20時以降の仕事は、酔っぱらって仕事をしているのと同じぐらいのクオリティしか発揮できないという話があります。その効率は、午前中の数分の一。認知機能、作業能力が下がっているため、パフォーマンスは著しく低下しています。

よほど必要に迫られない限り、こんな効率のよくない時間に仕事をするのは避けたいものです。

また、あなたがもし人を雇っている経営者だったら、20時以降にたくさんの社員が働いている状態は考えものです(飲食店など、この時間帯が最も稼ぎ時の業種は別です)。

まして、至極効率の悪いこの時間帯の労働に対して、残業手当を払うのは、企業の原理である投資vs.リターンの観点でも、秀逸な経営状態とは言えないのではないでしょうか。

■「夜の22時から2時は熟睡」で肌の再生が促される

また、美容意識の高い方はよくご存じのように、肌の再生を促す成長ホルモンが分泌されるのは、夜の22時から2時くらいと言われています。

この時間帯に熟睡することは、肌の再生がしっかりと促進されて、生き生きとしたお肌を保つのには最適です。

いかがでしょう。早く寝るため、早く起きるための動機になるのではないでしょうか。

■大谷翔平選手は10時間睡眠

続いては、二度寝を防ぐ習慣です。

二度寝は、時間的にとても非効率です。それに、二度寝で1日が始まると、この締まらないノリが1日中続いてしまいます。せっかくの休日がダラダラと進み、ちゃんと楽しんだのかどうかもわからない1日になりがちです。おそらく、成功者に二度寝をしている人は、あまりいないでしょう。

最適の睡眠時間については諸説ありますが、その人に合った睡眠時間を見つけることが大切。

ナポレオンや元英国首相のマーガレット・サッチャーが3時間しか寝なかったという逸話がありますが、アインシュタインは10時間以上寝ていたそうです。

また、大谷翔平選手が10時間睡眠を基本としているのも有名な話です。

「10時間睡眠」の大谷翔平が証明している(米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手、2024年9月25日) – 写真提供=共同通信社

短い睡眠時間=仕事ができる人、といった根拠のない話に振り回されないことが肝心ですね。

■睡眠時間は「約90分を1セット」として設定する

睡眠は、大脳の機能が活発化しているレム睡眠と、休止しているノンレム睡眠によって構成されており、睡眠中はこの2つが周期的に繰り返されています。その1セットが約90分。眠りが浅いレム睡眠の時に起きると目覚めがいいので、そこに合わせて睡眠時間を設定するといいでしょう。

逆に、眠りの深いノンレム睡眠の時に目覚ましが鳴ると、起きるのがつらい状況になり、二度寝の原因ともなります。

基準としては、この1セットである90分の倍数。6時間、7時間30分、9時間。これらの睡眠時間を試して、自分にとって最も目覚めのよい時間を日々の睡眠時間として設定するのがよいとされています。

ノンレム睡眠の時に目覚ましが鳴ると起きるのがつらい(※写真はイメージです) – 写真=iStock.com/PeopleImages

■できるだけ同じ時間に寝る

スッキリとした目覚めのよい朝を迎えれば、二度寝などしていられなくなります。

ただ、一定の睡眠時間も大切ですが、起きる時間が一定であることのほうが、生活のリズムをつくる上において、さらに大事です。

そのためにも、できるだけ寝る時間を同じ時間に保つようにしましょう。

たまたまパターンが狂う日があっても、誤差は1時間以内に抑えることが大切です。いつも12時に寝て、6時に起きる6時間睡眠を取っている人が、たまたま深夜2時に寝ることになってしまった日があれば、目覚ましは、90分の倍数の4時間30分の睡眠が取れる6時30分にセットするのがよいと思います。

習慣が付いてきたら、寝際にスマホに時間を取られることなく、この90分の倍数のセットを守りながら、生活のリズムを作っていくことができるようになります。

休日の日は、ついつい普段より遅くまで寝ていたい気持ちになります。しかし、つい二度寝をしてしまえば、よい睡眠の習慣にはなりません。いつもと同じ時間に起きるようにすれば、人生全体が引き締まる、というくらいの気持ちでもって習慣付けしていくと、その後のポジティブな連鎖や波及効果も起こりやすくなります。

さらには、目が覚めたら、すぐにカーテンを開けて、太陽の光をしっかり浴びることもぜひ習慣にしてください。太陽の光を浴びながら散歩などをすれば最高です。

■歴史上有名なショートスリーパーも実は寝ていた

南ヨーロッパでは昔から、シエスタという仮眠の習慣があります。これはなにもラテン系の人たちが、自由気ままな気質だからやっている習慣ではなく、ちゃんとした理に適ったものです。

3時間しか寝ていなかったと言われているナポレオンやサッチャーも、移動の時間などを利用して、15分ほどの仮眠を繰り返していたそうです。

シエスタとは、日本人のイメージする昼寝とは違い、極めて本格的なものです。カーテンを閉めて、部屋を暗くし、ベッドの上で寝ます。私たちはそこまでやらなくてもいいと思いますが、気軽に仮眠を取る習慣を身に付けていくことはできるでしょう。

ショートスリーパーも実は寝ていた(※写真はイメージです) – 写真=iStock.com/takasuu

■15分~20分ほどの仮眠で午後の仕事の効率が60%以上上がる

お昼ご飯を食べた後、眠気を感じる人はたくさんいると思います。これは、食事後、血糖値が上昇したり、血液が胃袋に総動員されるという理由もありますが、サーカセミディアンリズムという、半日の周期でやってくる人間にとってごく自然な眠気のリズムが要因です。

それにより、午後からの仕事の効率がグッと落ちる実感を持っている方は多いと思います。

そんな中、15分~20分ほどの仮眠を取ることで、午後の仕事の効率が60%以上も上がることがわかっています。

午後の仕事の効率が上がることによって、仕事のクオリティも上がり、残業時間も減り、退社後のプライベートの充実も図ることができます。

また、経理など、デスクワークの多い人にとっては、眠気によるケアレスミスを防ぐ効果も見逃せません。

■多くの会社が仮眠室を設けている

私が昔働いていたリーバイスという会社のサンフランシスコ本社には、広い仮眠室がありました。今では、アメリカ西海岸を中心に、多くの会社が仮眠室を設けたり、仮眠を奨励したりしています。

仮眠を取ることの価値は、最近では日本のビジネス界にも認知が広まりつつありますが、実際に仮眠をしている人はまだまだ少数派なのではないでしょうか。

一方、仮眠は30分以内に留めましょう。それ以上取ると、夜に寝られない状態になってしまう可能性があるからです。横になってしまうより、ソファーや車のシートをリクライニングさせて眠るほうが、目覚めやすくなります。

■「目を閉じて数分間リラックス」だけでも脳は休まる

脳が処理する情報の8割が視覚情報と言われています。あまり眠れないという方は、目を閉じて視覚情報をシャットアウトし、数分間リラックスしているだけでも、脳を休ませる効果が上がります。

三浦将『改訂新版 自分を変える習慣力 コーチングのプロが教える、潜在意識を味方につける方法』(クロスメディア・パブリッシング)

会社に勤められている方にとって、仕事中にオフィスなどで仮眠を取るということには、まだまだ抵抗を感じられるかもしれません。

一方、仮眠の習慣には、あなたの仕事の効率の格段のアップなど、多くのメリットがあります。「効果が高いのだから、みんながやらないのなら、かえってチャンスだ」くらいに考えて、堂々と自分から始めて、まわりにも勧めたりするのがいいでしょう。

仮眠のしやすい椅子や仮眠グッズなども、世の中に多く出回るようになってきたので、これらをチェックしてみるのもよいと思います。

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三浦 将(みうら・しょうま)
チームダイナミクス代表取締役、人材育成・組織開発コンサルタント
大阪府立大学工学部卒業。英国立シェフィールド大学大学院修了(MSc:Master of Science理学修士)。早稲田大学オープンカレッジ講師。大手広告会社、リーバイス、ギャップなどの外資系企業を経て、「休み明けの朝、元気に仕事に向かう人をこの社会に増やす」を目的とし、人材育成・組織開発コンサルティングや企業研修プログラムを提供する株式会社チームダイナミクスを設立。アドラー心理学やコーチングの技術を駆使した手法で、リーダーシップと主体性のある人材の育成をサポートしている。「知識を能力に変える」研修プログラムの実績により、リピート率は、実に95%を超える。『相手を変える習慣力』『チームを変える習慣力』(クロスメディア・パブリッシング)、『リーダーのコミュニケーション習慣力』(三笠書房)他、著書は累計30万部を超える。
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(チームダイナミクス代表取締役、人材育成・組織開発コンサルタント 三浦 将)

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