銀行界の2014年度決算がおおむね出そろい、好業績に沸いている。
最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が国内金融機関で初めて純利益1兆円を突破。また、三井住友FGが7500億円超、みずほFGが6100億円超をたたき出し、上場企業の純利益で3メガバンクグループがそろってトップ5入りを果たした。
さらに、地方銀行協会によれば、地銀64行で決算開示済みの63行中50行が増益、そのうち26行が過去最高益だったという。
実はこの光景は1年前の13年度決算の状況とうり二つだ。融資業務は超低金利のあおりを受けて利ざやが縮小。しかし、株・債券高による有価証券の売買益や評価益がそれを補った。
与信費用の低さも業績を下支えした。銀行は融資の貸し倒れに備えて事前に引当金を積む必要があり、与信費用が発生する。ところが、融資先企業の業績回復で過去の引当金積み立て分が戻ってきて、利益になる現象まで起きたのだ。
しかし、これらの業績カサ上げ要因による好決算は仮初めにすぎない。そして、ついに15年度にこの二つの“バブル”が終焉するのではと銀行界は身構えている。
逃げ道のない地銀には悪夢
まず、有価証券については「アベノミクス相場による株価上昇が、15年度も同じペースで進むか不透明」(地銀幹部)だとみている。
日経平均株価の上昇が13~14年度と同じ水準で続くと仮定すると、15年度末の日経平均株価は2万5000円ほどとなる。この水準を見込んで経営計画を立てるのはリスクが高いという見立てだ。すると、この2年間のように株の売買益や評価益を当て込むのは難しい。
現に三井住友FGは15年度の業績予想で、有価証券の売買を担う市場営業部門で800億円ほどの減益を織り込んでいる。「過度な予算は与えない」(宮田孝一・三井住友FG社長)方針だ。
もう一つの与信費用についてだが、三菱UFJFGとみずほFGは大口融資先であるシャープの業績悪化で、与信費用が前年度と比べて1000億円規模で大きく膨らむ事態が起きてしまった。
一方、その余波を免れた三井住友FGも、傘下に置く三井住友銀行の与信費用の戻り益は先細りだ。また、連結ベースでの与信費用の適正水準は1000億円程度という認識を示しており、14年度決算での80億円弱という水準がいつまでも続くとは考えていない。
3メガは二つの“バブル”の穴を埋めるために、海外事業の拡大や投資銀行・信託機能など総合的な金融サービスの提供による手数料ビジネスに注力する。
ただ、中にはそのような埋め合わせの手段を持たない地銀もある。となれば、“バブル”の終わりはそうした地銀の業績悪化に直結し、さらなる業界再編の号砲になりかねない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)