憂鬱な時期を、体質別養生で快適に。中医学や養生法に詳しい櫻井大典さんによる「Daily(デイリー)養生」。今回のテーマは「トイレが近い」です。
腎(じん)を弱らせる、ちょこちょこ飲みに注意!
体が冷えて、トイレに行きたくなる。とくに冬場は経験上誰でもあることだと思いますが、あまり頻繁に行きたくなるようなら、中医学では「未病」、病気とまではいかないけれど不調であるという状態を疑います。朝起きてから寝るまで、4~7回なら健康の範囲内ですが、8回、10回となると黄色信号。要注意です。
頻尿の原因で一番多いのは、水分と熱のバランスを司る「腎」が弱っていること。「腎陽虚(じんようきょ)」といって、腎が本来持っているはずの、体を温める作用が低下していると考えます。本来、熱が足りていれば水分は気化され、必要とされる場所へと分散していきます。ところが熱が不足して気化が進まないと、余った水分が漏れ出てしまう。これが、トイレにしょっちゅう行きたくなってしまう理由。薄い尿がたくさん出るほか、顔が青白い、お腹を壊しやすいなども腎陽虚の特徴です。
多くの人が、必要以上に水分を摂っている。
腎のテリトリーは腰まわりなので、ここを冷やさないこと、しっかり歩いて振動を与え、腎に適度な刺激を入れることなどが養生になります。
こうしたケアも大切なのですが、一方で、トイレの回数が多い方にまずチェックしてほしいのが、水分を摂りすぎていないか、ということです。僕もよくカウンセリング中にお伺いするのですが、たいていみなさん、「そんなに飲んでいません」とおっしゃいます。でも、1日に何Lも水を飲んではなくても、実はちょこちょこ口にしているんです。朝起きてコーヒーを飲み、食事中にお水、出勤途中に飲み物を買い、お昼ごはん中はお茶、午後の仕事のお供にカフェラテ…。どうでしょう、心当たりはありませんか?
水分を適度に摂ることは必要ですが、実は飲みすぎてトラブルを招いていることも少なくありません。腎を弱らせるだけでなく、食べながら飲むと咀嚼が十分にできなかったり、胃酸が薄まって殺菌力や消化力が低下したりする原因にもなります。
頻尿気味の方は、一度一日に飲んだものを書き出してみることをおすすめします。その上で、何となく飲んでいる甘いものをやめる、食中のお茶は一杯のお味噌汁に代える。そんなことから始めましょう。水分の調整は、腎だけでなく胃腸を休める助けにもなります。ぜひ見直してみてください。
さくらい・だいすけ 漢方専門家、国際中医専門員。完全予約制の漢方相談処「成城漢方たまり」で相談を行う。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書、著書多数。
※『anan』2020年12月9日号より。イラスト・momokoharada 文・新田草子
(by anan編集部)