1月実質賃金“8年8カ月ぶり”下落率 前年同月比4.1%減 賃上げ「大企業“攻めの経営”と中小企業“守りの経営“で」実現へ

物価上昇を加味した2023年1月の実質賃金が、2022年の1月に比べて4.1%減少した。

物価高騰に追い付かない賃金伸び率

この実質賃金の下落率は、8年8カ月ぶりの下げ幅となった。

厚生労働省が発表した2023年1月の毎月勤労統計調査によると、物価上昇を加味した実質賃金は、2022年の1月と比べて4.1%減少。

実質賃金のマイナスは10カ月連続となった。

消費税率8%への引き上げの影響で物価が上昇した2014年5月以来、8年8カ月ぶりの下落率となった。

厚生労働省は「給与は増加傾向にあるものの、物価が高騰し、賃金の伸びが追い付いていない現状が続いている」としている。

「Live News α」では、経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

業界トップの“攻めの経営”が賃上げを波及

内田嶺衣奈 キャスター:
実質賃金のマイナス、どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
コロナのダメージから回復しているため、「名目賃金」いわゆる「振り込まれる金額」自体は少し増加しています。

ただ、実際にモノを購入する時に物価が上がっているため、実質的な賃金はむしろ下がっているわけです。

そこで、物価高に負けないように、“川上の大企業”から“川下の中小企業”に向かう形で、戦略的に賃上げを波及させていく必要があります。

内田嶺衣奈 キャスター:
賃上げを波及させていく際に、大企業と中小企業では、それぞれ役割が違うように思いますが、いかがですか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
賃金上昇を波及させていくためには大企業、とりわけ業界のトップ企業が果たす役割は大きいです。これには総務省が発表している「生産誘発係数」が参考になります。

例えば、乗用車に対する需要額が「1単位」増加すると、関連産業も含めた生産額が「2.73単位」増えます。つまり車が売れると、関連企業に広く波及効果があります。

経営資源が豊富な大企業には、画期的な製品やサービスの開発など“攻めの経営”によって、賃上げの原動力となる“利益の積み増し”が求められます。

中小企業の賃上げは“守りの経営”で実現

内田嶺衣奈 キャスター:
一方の中小企業の場合、賃上げにつながる「攻めの経営」というのも難しいように思いますが、どうすればいいのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
私は年間、150社以上の企業取材をしていますが、中小企業の場合、「コストマネジメント」や「リスク管理」といった“守りの経営の強化”で、賃上げを可能にしているケースが多いんです。

例えば、自社商品を定期的に販売する企業の場合、商品をお届けする物流コストが問題です。

そこで、自社製品を作る工場を戦略的に国内の各地に立てることで、工場の近くから商品を届けるようにしました。

さらに、手を組む運送会社も、物流業界で2次下請けに位置する企業に直接お願いすることで、物流コストを維持しています。

いま、日本に求められていることは“失われた30年”を嘆くことではなく、得意な分野を磨き、リスクやコストをうまく強みに転じてどう成長していくのかを描くことです。

内田嶺衣奈 キャスター:
「いまあるもの」を見直すことで、それぞれの企業にとって成長への道筋が見えてくるのかもしれません。

(「Live News α」3月7日放送分)

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