1~7月の「調剤薬局」倒産が過去最多 大手再編と新規参入で中小が苦境に

東京商工リサーチ(東京都千代田区)の調査で、1~7月の「調剤薬局」倒産は累計22件となり、前年同期と比べ3.6倍に急増したことが分かった。これは最多だった2021年同期の20件を上回っており、現状のペースだと過去最多を更新する見込みだ。

 上半期(1~6月)の倒産件数は12件(前年同期比140.0%増)で、2021年の18件に次ぐ2番目の水準だった。しかし、7月に京都の調剤薬局グループである寛一商店と関連8社が倒産し、件数を大きく押し上げた。負債総額は135億6500万円(前年同期比422.1%増)と中堅規模の倒産が増え、前年同期の5倍超に膨らみ、初めて100億円を上回った。

 形態別では「破産」が11件(前年同期6件)、「民事再生法」が2件(同0件)のほか、初めて「会社更生法」が9件も発生した。原因別では、最多が「販売不振」(同4件)と「他社倒産の余波」(同0件)の各9件だった。

 従業員数別では、10人未満が13件(同4件)と6割を占めたが、「50人以上300人未満」「300人以上」も各1件で初めて発生した。地区別では、最多が関東11件(同2件)で半数を占めた。次いで、近畿4件(同0件)、北海道3件(同0件)、東北(同3件)と九州(同2件)が各2件だった。

●コロナ禍を経て市場競争の激しさが要因に

 調剤薬局ではコロナ禍の受診控えが響き、業績が悪化した薬局が増えた。コロナ禍が落ち着くと受診控えは収まったが、大手薬局・ドラッグストアの出店攻勢などで2022年度の薬局数は6万2375施設(2021年度6万1791施設)と苦境の中でも増加し、市場競争が激しさを増している。

 中小の調剤薬局は、地域に根ざし顔の見える顧客に合わせた服薬指導などが強みだ。一方で、大手は店舗展開と同時に、コロナ禍を境に広がったオンラインでの服薬指導、処方薬のネット注文など顧客ニーズの変化を取り込んでいる。さらに今年は、セブン-イレブン・ジャパンが首都圏1000店舗で処方箋医薬品を受け取れるサービス、アマゾンジャパンが処方箋医薬品のオンライン販売に乗り出すことを相次いで発表した。

 東京商工リサーチは「異業種からの大手参入で、さらにシビアな環境となることが予想される。デジタルシフトなど、ビジネスモデルの変革の波に乗れない『調剤薬局』は、さらなる淘汰にさらされる可能性が高まる」と推測している。 

 本調査は、日本産業分類の「調剤薬局」の倒産(負債1000万円以上)を集計、分析した。

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