10軒に1軒以上が「空き家」──空き家率の上昇は、いいこと? 悪いこと?

 日本の空き家率は「13.5%」(総務省 平成25年住宅・土地統計調査より)です。1998年に10%を初めて超えてから年々増えており、過去最高を記録しました。空き家数は820万戸(総住宅数は6063万戸)に上ります。世帯数に対し、総居住(住宅)数が上回っていることを示しています。
photo 「空き家率と新しい住まい方」の変わり目
 本格的な人口減少が始まった2014年現在、標準世帯から単独世帯(ひとり暮らし)に世帯タイプの主流が移っています。つまり世帯数は増加しているのに、住宅数の増加はそれ以上の勢いということになります。
 空き家は、高度経済成長期以来の急激な都市への人口移動と人口集中の傾向の中で「都市部の新規住宅が堅調に伸びていること」と、「都市へ人口が移動した後に放置される地方の住宅が空き家として残ること」から生まれます。
 特に山梨県、長野県の空き家率は20%近くと高い数値です。都市部へ人が移動して空き家が増えたことに加えて、経済成長期に別荘として建てられた家屋(二次的住宅:別荘など、普段は人が住んでいない住宅)が、経済の停滞でそのまま取り壊されずに空き家化したためです。
 人口が集中する都市部も安泰ではありません。高齢化が本格化すると、標準世帯から単独世帯へ移っていきます。今ある住宅と、今後求められる住宅のタイプは一致しなくなることが予想されます。郊外の一戸建て、郊外ベッドタウンの大型マンションなど、標準世帯を想定して建てられた住宅とそこに住んでいた家族が、子ども世代の独立や、親の高齢化で単独化し、生活と住居タイプが一致しなくなります。さらに空き家化は進むでしょう。
 こうした空き家率の増加は、日本人の生活スタイルの変化に住宅のタイプが追いつけないことが大きな原因のようです。ただその一方で、こうした空き家を再利用して新たな住スタイルを模索する動きも高まっています。
新しい住まい方の模索が本格化 「マイホーム」の固定概念が変わる?
 空き家率が二ケタになってから、特にこの10年、新しい住まいの方法、あるいは住居利用の自由度の高まりを象徴する動きがさまざまに見られます。
 例えば「シェアハウス」。標準世帯、あるいはそれ以上の大家族が住んでいた住居を、単独世帯がシェアするというスタイルです。テレビ番組『テラスハウス』もそんな住まい方を紹介していますね。住宅以外にも、カフェや雑貨店、レストランなどとして、かつて住居だった古民家を再利用する動きもその一環としてとらえられます。さらに、そうした物件のみを扱う不動産業の業態も徐々に増えています。
 1990年代には「コーポラティブハウス」あるいは「コーポラティブマンション」という、土地をシェアして、それぞれが自分の望む家を建てる、あるいは部屋を設計するという方法が一部で流行しました。こうしたゼロから新しいものを作る動きと違うのは、今あるものを複数人で共有したり、リフォームすることで、元来持っていた価値とは「別の価値を創造」する点です。そんなリノベーションの動きが進む背景として、空き家の数が増えた(≒リノベーションしうる待機資産が豊かになってきた)ことがあるのかもしれません。
 国土交通省が進めている「二地域居住」(都会に住む人が、週末など一定期間を農山漁村で暮らす生活スタイル)も、当初は大量にリタイア層が発生する団塊世代の今後を考えた計画でした。実際、田舎への移住希望者も当初は60代、50代が中心でした。
 それが最近の調査結果によると、想定に反して20代、30代の割合が増え、結果として全世帯に広がっています(関連リンク:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター「ふるさと暮らし希望地ランキング」)。
 団塊の世代から全世代へ、「今、余っている家(空き家)」を、「今、使える家」にすることが広がりつつあります。空き家を「リノベーションしうる物件」ととらえ直すことで、そのイメージは大きく変わることを示しています。
 21世紀は、空き家という価値の再創造をしうる物件がある=「待機資産が豊富にある」時代とも言えるのです。

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