若い世代に、老眼と同じような症状を訴える人が増えている。理由は長時間のスマホ。スマホ画面ばかり見ていると、目に大きな負担がかかり、老化速度も速まる。目をいたわるためにも、スマホライフを一度、見直してみよう。
■朝から晩までのスマホ生活に警鐘
本来、40歳前後から始まる「老眼」。下のチェック表のような症状が代表的だが、30代以下でこのような症状を自覚している人は、「スマホ老眼」を疑ってみるとよい。
「老眼は目の老化現象。年を取れば誰にでも起こるもので、病気ではありません。しかし、若くても老眼と似た症状があるのは問題です。一日中モニター画面を見ている生活が要因でしょう。最近『スマホ老眼』とも呼ばれていますが、眼科では『調節緊張』と診断します」
そう語るのは、眼科専門の石岡みさき医師。石岡医師によると、一定距離をじっと見続けることでピント調節機能が衰え、同時にドライアイになるケースが多いという。これらは加齢による老眼と同じ症状。詳しい原因と対策を次ページで解説する。
医学博士 眼科専門医
石岡みさきさん
横浜市立大学医学部卒、1993年よりアメリカ・ハーバード大学に留学、目の免疫の研究に従事。帰国後、東京歯科大学市川総合病院にて角膜・前眼部疾患について学ぶ。両国眼科クリニック院長を経て、現・みさき眼科クリニック院長として各メディアでも活躍中。
【症状Check!】こんな症状は目の老化サイン!
※ひとつでも当てはまる人は「スマホ老眼」の危険性あり
〈原因と対策〉「ピント調節機能」が著しく衰退。メガネを作り直しても解決せず
●老眼のメカニズム
人 が近くを見る時、毛様体筋が緊張するため水晶体が膨らむ。逆に、遠くを見る時は毛様体筋が弛緩し、水晶体は薄くなる。老眼によって近くが見えにくくなるの は、加齢に伴い水晶体の柔軟性がなくなり、硬くなってしまうから。また、水晶体の厚みを調節する毛様体筋も衰えてしまうので、ますますピントが合いづらく なる。
■ピント調節機能が衰え、水晶体が凝り固まる
老眼になると近くが見えにくくなる理由は2つある。水晶体の厚みを調整する筋肉・毛様体筋が弱くなるためと、水晶体自体が柔軟性を失って膨らみにくくなるため。ともに加齢によるピント調節機能の衰えだ。
「人間の目は、本来遠くが見やすく、近くを見ると疲れやすい構造。スマホはPCよりさらに至近距離でつい長時間凝視してしまうため、眼精疲労を起こしやすい。老眼のようにピント調節機能が働かなくなってしまうのです」(前出・石岡医師)
疲れ度合いによって、視力が安定しないのもスマホ老眼の特徴だ。PC作業の多い人を対象に行なった調査(下グラフ参照)では、たった1日でも夕方にはピン ト調節機能が衰え、週末の金曜日にはかなり低下していることがわかる。こうなると、何回メガネを作り直してもしっくりこない。また、石岡医師はまばたきの 重要性も指摘する。
「人は無意識に1分間で約20回まばたきをしていますが、画面に見入っている人は5回ほど、と極端に少ない。ドライアイも目の老化を促進させますから、まばたきで目に潤いを運ぶのは有効な予防になります」
スマホ老眼はちょっとした日常の習慣で予防できる。長時間のスマホ利用が避けられない人も、左ページを参考にして、上手に目を休めてほしい。
●ピント調節力の変化
長時間のPC作業者16名によるピント調節機能を調査。月曜日の夕方にはピント調節力が下がり、週末にかけてさらに低下している(月曜日作業前の値を100として)。出典:花王と鶴見大学歯学部眼科学講座(後藤英樹先生)
〈これならできる!〉スマホ老眼にならないための日常生活 7つの習慣
スマホをやめる、PC作業を短縮する……なんて現実的に無理!そこで、スマホヘビーユーザーに取り入れてほしい〝目を守る習慣〟を伝授する。
1.時々画面から目を離して遠くを見る
近くの1点を見て収縮していた毛様体筋を弛緩させるのが目的。窓の外の景色をぼんやり眺めると、目のリフレッシュになる。見る先は遠いほどよい。
2.PCモニターは軽く見下ろす高さで
PCモニターの位置が高いと、目を見開いて画面を見ることになり、ドライアイを招くことに。目の乾燥を防ぐためにも、目線はやや下がベター。
3.疲れたら目を温める
毛様体筋も筋肉。疲れた目は周りの血流が悪い。温めることで血行がよくなり、疲労回復が早まる。リラックス効果も見込める。
4.意識的にまばたきをする
まばたきの回数が少ないとドライアイに。涙不足を解消するため、上下のまぶたをしっかり閉じ、パッと目を見開く運動を1日数回行なう。
5.ブルーライト、紫外線は専用グラスでカット
PCメガネを使用してブルーライトから目を保護。また、日頃からUVカット加工されたサングラスやメガネで目の老化を防ぐのも有効。
6.老眼を認めて積極的に補正する
見えづらいなら視力を正しく矯正するのが近道。手元が見えることが大事なのか、遠くを見ることを優先するのかで度数や形態が変わってくる。職種や目的に合わせ、専門店で自分に合ったメガネを選ぼう。
7.「スマホじゃなきゃダメ?」と考えてみる
目の健康のためには「この作業はスマホでしなければダメなのか」と冷静に考えてみよう。少なくともPCのほうが負担は少ない。