地価の上昇が続いている。国交省が19日に発表した三大都市圏の基準地価(7月1日時点)は、商業地が5年連続、住宅地は4年連続で値上がりした。中でも全国で最も地価が高かった銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」は前年より17.9%も上昇し、1平方メートル当たり3890万円と、バブルピークの1991年を超えた。
「GINZA SIX開業など銀座周辺はオフィス需要が旺盛です。東京と地方の地価格差はますます広がっています」(大手信託銀行幹部)
また、住宅地では荒川区の地価上昇が目立ち、南千住8丁目は6.3%も上昇した。都心3区と呼ばれる千代田区、港区、中央区が高止まりする中、都心に近い住宅地に実需が移ってきている。
「都心のマンションは、サラリーマンが買える価格を超え、買えるのは資産運用目的の投資家たちだけ。そこで、実需は利便性の劣る狭い土地に格安一戸建てを建設する『パワービルダー』が活況を呈しています」(不動産関係者)
これまで、不動産業界では、「東京の地価は2020年の東京五輪までは下がらない」との見方が支配的だった。
しかし、ここにきて、「地価はもう天井に近い」との懸念が広がり始めている。
予兆は、都心商業地の地価上昇を支えてきたREIT(不動産投資信託)の変調だ。
「物件価格の高騰でREITに組み入れる物件が見つからなくなっている。既に5カ月連続でREITから資金流出が続いています。期待利回りの基準である3%に、コスト増から達しない。物件価格の上昇ほど、賃料は上げられないためです」(運用会社幹部)
実は、金融庁も地価の下落を危惧している。
「金融庁が今月中に発表する金融レポートでもアパート・マンション向けや不動産業向け融資について警鐘を鳴らす方針です」(金融庁関係者)
不動産は、マイナス金利の中、数少ない利回りがとれる融資先とされ、地方銀行などが東京に進出してまで、融資を進めてきた。
前出の運用会社幹部が語る。
「金融庁の方針を受けて、一部地銀は既に不動産融資の審査厳格化を進めている。不動産のバブル崩壊が東京五輪後より前倒しされ、2018年にも始まるとの危惧が業界に広がっています」
(森岡 英樹)