2018年海外の10大ニュース

【1位】タイの洞窟で少年ら13人全員救出

  • タイ北部チェンライで、記者会見にのぞむ少年ら(7月18日)

 タイ北部チェンライのタムルアン洞窟に閉じ込められていた地元サッカークラブの少年12人と男性コーチの計13人の救出が7月10日、完了した。遭難から18日目で全員が生還を果たした。

 少年らは6月23日に洞窟に入ったが、大雨による増水で出られなくなった。タイ当局に米軍や英国の洞窟救助専門チームなどが加わり、捜索活動が行われた。7月2日、英国人ダイバーが入り口から約5キロの地点で発見し、全員の生存が確認された。

 しかし、洞窟内は複雑な地形に加え、増水しており、救出作業は難航した。洞窟内の酸素濃度が低下し、タイ人のダイバーが亡くなる事故も起きた。一刻を争う中、少年らに顔全体を覆う潜水マスクを着用させ、熟練のダイバーが水中を運び出す救助方法を選択。7月8日に救出が初めて成功した。生還した少年らは後日の記者会見で世界中に感謝の気持ちを伝えた。10月には英国の名門サッカーチーム、マンチェスター・ユナイテッドの招待を受け、イングランド・プレミアリーグの試合を観戦したことでも話題を呼んだ。

 この事故をきっかけに、少年ら4人が無国籍状態だったことが明らかになり、タイ政府は4人に国籍を付与した。(バンコク 大重真弓)

【2位】史上初の米朝首脳会談、緊張緩和進む

  • 米朝首脳会談を終え、記者会見するトランプ米大統領(6月12日)

 米国のトランプ大統領と北朝鮮金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が6月12日、シンガポールで史上初となる米朝首脳会談を行った。両首脳は会談後、正恩氏が「完全な非核化」に取り組み、トランプ氏が体制の「安全の保証」を約束するとした共同声明に署名した。トランプ氏は会談で日本人拉致問題も提起した。朝鮮戦争(1950~53年)以来、敵対関係にあった米朝両国の首脳が直接会談し、「非核化」を明記した文書をまとめた意義は大きい。

 ただ、非核化の進め方や検証方法、期限などで合意することはできず、具体性に欠く内容ともなった。ポンペオ米国務長官は会談後の7、10月に訪朝し、非核化の工程表や検証方法について交渉したが、11月には、北朝鮮高官の訪米が急きょ延期になるなど、交渉は一進一退の状態が続いている。

 トランプ氏は来年1~2月に2回目の会談を開きたい考えだが、実現するかどうかは不透明だ。2回目の会談では非核化の具体的な成果が初回会談以上に求められる。非核化プロセスの先行実施を求める米国と、制裁解除などの見返りを求める北朝鮮との駆け引きは、さらに激しくなりそうだ。 (ワシントン 大木聖馬)

【3位】インドネシア地震・津波、死者2000人以上

  • インドネシア中部スラウェシ島の倒壊したホテルで、捜索活動を行う救助隊員ら(10月2日)

 インドネシア中部のスラウェシ島で9月28日、マグニチュード(M)7・5の地震が起きた。死者は2000人以上、行方不明者は1300人以上に上った。

 沿岸部には津波が押し寄せ、大きな被害が生じた。地震によって引き起こされた地滑りで、沿岸の陸地が海底に崩落し、局所的に複数の津波を発生させた可能性が高いとみられている。

 一方、内陸部では、地盤の液状化により大規模な地滑りが生じ、家屋が350メートル以上押し流された事例が確認された。地震後の大雨で土砂崩れが起き、道路が寸断されて孤立する集落もあった。

 地滑りで生き埋めとなる住民が多く、救助活動は難航した。地震発生から半月後、生存者の発見が絶望的だとして、多くの行方不明者を残したまま捜索活動は打ち切られた。

 被害が大きかった島中部パルでは、津波警報システムが正常に作動せず、防災上の課題も浮き彫りとなった。インドネシア政府の要請を受け、日本の国際協力機構(JICA)は現地に調査団を派遣した。調査を踏まえ、津波や液状化対策などを盛り込んだ復興計画の策定に協力している。(ジャカルタ 一言剛之)

【4位】南北首脳会談、朝鮮半島非核化で合意

  • 歓迎する市民に手を振る文在寅大統領(左)と金正恩朝鮮労働党委員長(右)(9月18日、平壌写真共同取材団撮影)

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が4月27日、軍事境界線上の板門店(パンムンジョム)にある韓国側施設「平和の家」で初めて会談した。両氏は、「朝鮮半島の非核化」を目指すとした板門店宣言に署名し、6月に控えていた史上初の米朝首脳会談を前に南北の結束をアピールした。

 正恩氏は会談にあたり、北朝鮮の最高指導者として初めて軍事境界線を越えて南側に入り、出迎えた文氏と握手を交わした。南北首脳による会談は2000年、07年に続いて3度目だった。

 両氏は5月26日にも板門店で会談した。だが、米朝の非核化協議が停滞する中、本格的な南北経済協力や休戦状態の朝鮮戦争の終戦宣言は、実現のメドが立っていない。文氏は米朝の歩み寄りを促すため、9月18~20日に北朝鮮を訪れて再び正恩氏と会談したが、非核化の具体策や経済制裁の解除を巡る米朝の溝は今も埋まっていない。

【5位】トルコのサウジ総領事館で記者殺害

 トルコのサウジアラビア総領事館で10月2日、サウジ政府に批判的な論調で知られた記者ジャマル・カショギ氏が殺害された。当初、サウジ政府は事件への関与を否定していたが、トルコ当局が入手したとされる音声データの内容などがメディアで次々と明るみに出ると、一転して館内での記者殺害の事実を認めた。

 サウジ司法当局は11月、薬物を使って記者を殺害し、遺体を切断したとして実行犯ら11人を殺人罪などで起訴したと発表し、そのうち指示役ら5人に死刑を求刑する方針を明らかにした。

 だが、事件はサウジの実力者ムハンマド皇太子の指示によるものだとの疑惑は根強く残っており、トルコは、実行犯らの身柄引き渡しをサウジに求めた上で、皇太子側近らの逮捕状をとった。これに対し、サウジは、皇太子の関与を否定し、他国の批判を「内政干渉」としてはねつけている。

【6位】英ヘンリー王子、米女優と挙式

 英国のチャールズ皇太子の次男、ヘンリー王子と米国出身の女優メーガン・マークルさんの結婚式が5月19日、ロンドン西郊のウィンザー城で行われた。新郎新婦が馬車でパレードした沿道などには10万人以上(警察推計)が詰めかけた。英王室は10月15日には、メーガン妃が第1子を妊娠したと発表した。来春に出産予定で、生まれてくる子どもの王位継承順位はヘンリー王子に次ぐ7位となる。

【7位】平昌五輪開幕、韓国と北朝鮮が史上初の合同チーム結成

  • 開会式で、朝鮮半島旗を手に入場する韓国と北朝鮮の選手(2月9日、韓国・平昌五輪スタジアムで)

 平昌(ピョンチャン)冬季五輪が2月9日、開幕した。冬季五輪史上最多の92か国・地域から選手約2900人が参加した。北朝鮮の参加が急きょ決まり、アイスホッケー女子で五輪史上初の韓国・北朝鮮合同チームが結成された。開会式では、両国の選手が南北統一を象徴する水色の朝鮮半島が描かれた「朝鮮半島旗」を掲げて合同行進を行うなど、南北の融和ムード醸成につながった。

【8位】米が輸入制限発動、米中摩擦が激化

 トランプ米政権は3月23日、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動した。これに対し、中国は4月2日、豚肉やワインなどの米国製品への関税上乗せを実施した。7~9月には、米国が計2500億ドル相当の中国製品を対象に関税を引き上げ、中国も計1100億ドル相当の米国製品への報復関税で対抗した。12月の米中首脳会談では、米国が日用品などの中国製品に対する関税引き上げを一時凍結することで一致した。

【9位】米中間選挙。上院共和、下院民主勝利

  • メディア席に向かって「くたばれ、CNN」の声がこだまする共和党の集会。トランプコールとUSAコールが響きわたり、異様な盛り上がりを見せた(10月22日、テキサス州ヒューストンで)

 トランプ政権に対する初の審判となった米中間選挙が11月6日、投開票された。上院は与党・共和党、下院は野党・民主党が過半数を占め、来年から両院で多数派が異なる「ねじれ」が生じることになった。

 民主党が下院の過半数を獲得したことで、新議員の任期が始まる来年1月以降、予算案や法案の通過が難しくなり、トランプ大統領は厳しい政権運営を強いられる。

【10位】EU、英離脱協定を正式決定

 欧州連合(EU)は11月25日、2019年3月の英国の離脱条件などを定めた「離脱協定案」などを正式決定した。協定案には20年末まで今の貿易関係などを維持する

「移行期間」が盛り込まれたが、発効に必要となる英議会の承認を得る見通しは立っておらず、メイ首相は今月予定していた下院採決を来月に延期した。何の取り決めもない「合意なき離脱」への懸念が強まっている。

1~30位ニュース一覧


《1》タイの洞窟で少年ら13人全員救出
9,953(82.0%)
《2》史上初の米朝首脳会談、緊張緩和進む
9,093(74.9%)
《3》インドネシア地震・津波、死者2000人以上
7,696(63.4%)
《4》南北首脳会談、朝鮮半島非核化で合意
7,481(61.6%)
《5》トルコのサウジ総領事館で記者殺害
7,452(61.4%)
《6》英ヘンリー王子、米女優と挙式
6,861(56.5%)
《7》平昌五輪開幕、韓国と北朝鮮が史上初の合同チーム結成
6,644(54.7%)
《8》米が輸入制限発動、米中摩擦が激化
5,632(46.4%)
《9》米中間選挙。上院共和、下院民主勝利
5,323(43.8%)
《10》EU、英離脱協定を正式決定
4,398(36.2%)
《11》元徴用工訴訟、韓国最高裁が賠償命令
4,043(33.3%)
《12》米フロリダの高校で銃乱射、17人死亡
3,393(27.9%)
《13》金正恩氏が訪中、習氏と会談
3,232(26.6%)
《14》中国主席の任期撤廃、長期政権可能に
2,868(23.6%)
《15》トランプ氏、イラン核合意離脱表明
2,756(22.7%)
《16》ノーベル平和賞、コンゴの医師とイラクの活動家に
2,553(21.0%)
《17》韓国の朴槿恵・前大統領に実刑判決
2,511(20.7%)
《18》露大統領選でプーチン氏が通算4選
2,325(19.1%)
《19》米ハワイ島でキラウエア火山が噴火
2,171(17.9%)
《20》トランプ氏、INF全廃条約破棄表明
2,116(17.4%)
《21》米英仏がシリア攻撃。化学兵器使用で
1,883(15.5%)
《21》慰安婦財団解散。日本、韓国へ抗議
1,883(15.5%)
《23》イタリアで高速道路の高架橋崩落、43人死亡
1,849(15.2%)
《24》在イスラエル米国大使館がエルサレムに移転
1,764(14.5%)
《25》英国の宇宙物理学者ホーキング博士が死去
1,747(14.4%)
《26》米国で大型ハリケーンが猛威
1,635(13.5%)
《27》台湾で列車脱線、18人死亡
1,580(13.0%)
《28》メルケル独首相が党首退任へ
1,557(12.8%)
《29》英国で元スパイへの神経剤襲撃事件。欧米各国が対露制裁
1,412(11.6%)
《30》EUが米グーグルに制裁金。巨大IT企業の規制強化
1,045(8.6%)
(数字は得票数。カッコ内は有効投票に占める割合。肩書は当時)

過去5年トップ3


■2017年
《1》トランプ米大統領が就任
《2》北朝鮮が6回目の核実験。弾道ミサイル発射も相次ぎ強行
《3》金正男氏、マレーシアの空港で殺害

■2016年
《1》米大統領選でトランプ氏勝利
《2》英国民投票で「EU離脱」過半数
《3》韓国・朴大統領、友人女性の国政介入疑惑で窮地に

■2015年
《1》パリで同時テロ。「イスラム国」の犯行
《2》ネパール大地震、約9000人死亡
《3》米国とキューバが54年ぶり国交回復

■2014年
《1》エボラ出血熱でWHOが緊急事態宣言
《2》韓国で旅客船「セウォル号」が沈没
《3》ノーベル平和賞にパキスタンのマララさんら

■2013年
《1》台風がフィリピン直撃、死者・行方不明者約8000人
《2》英王子の妻キャサリン妃が男児出産
《3》露に隕石(いんせき)落下、1200人以上負傷

全項目的中は7人

 2018年の「海外10大ニュース」には11月30日~12月18日の募集期間に1万2492通の応募があり、うち有効は1万2143通でした。全項目的中は7通で、7人に賞金を贈ります。9項目的中者から抽選した計100人に記念品を贈ります。

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