海外メディアのすべてが、日本経済の縮小を言い出しました。少子高齢化の影響が2019年から本格化し、どうあがいてもGDPが下がっていく警告しています。(『カレイドスコープのメルマガ』)
※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2018年6月29日第259号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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- 異例のスピードで高齢化が進む日本。経済縮小はもう始まっている
- 海外メディアが「日本停滞」を言い出した
- IMFが日本に「消費税引き上げ」を迫る
- 消費税は何度も日本経済を冷やしてきた
- ヘリマネによるハイパーインフレは近い?
- 日本経済の縮小はすでに始まっている
- 加速度的に進む高齢化が、日本のGDPを継続的に押し下げていく
- イタリアに次いで、日本は「経済が弱い」
- 経済低迷に元凶は、高齢者の爆発的な増加
- 老人はハイテク化についていけない
- G7の中でも異常な日本の少子高齢化
- やがて「3人に1人」が高齢者に
- 日本の経済停滞は避けられない
- 教育水準が高い日本の今後に、世界が注目している
- 今まさに少子高齢化の悪影響が出始めた
- 社会保障費を軽減するしかない
異例のスピードで高齢化が進む日本。経済縮小はもう始まっている
海外メディアが「日本停滞」を言い出した
海外メディアのすべてが、日本経済のシュリンク(縮小)を言い出し始めています。
ブルームバーグ(4月17日付)は、「2019年は日本経済は粉砕される年になる」と報じ、CNN(5月15日付)は、「何十年も続いた日本の成長軌道が終点を迎えた」と報じています。
他の海外メディアも、海外のシンクタンクも同様です。
今、世界の目は日本に注がれています。それは、世界に先駆けて日本の少子高齢化の時限爆弾が炸裂したとき、日本が、どのように対処するか興味津々なのです。
IMFが日本に「消費税引き上げ」を迫る
国際通貨基金(IMF)は、安倍政権が2019年10月に消費税を引き上げたとき、日本の経済成長は一気に鈍化するだろうと見ています。
IMFは、民主党の菅直人政権のときにも、消費税を引き上げるべきだ、と迫っていました。この時点で、IMFは「最低でも15%に消費税を引き上げないと日本は財政破綻する」と外圧をかけてきました。
今度は、いったい何10%にしろと言ってくるのか見ものです。
消費税は何度も日本経済を冷やしてきた
消費税3%が初めて導入されたとき、それに伴う国民の税負担増は約3.3兆円でした。
消費税が5%から8%に引き上げられたとき、国民の肩には、新たに9兆円(860億ドル)の税負担がのしかかり、一気に景気後退を引き起こしました。
消費税が3%増加したことによる国民負担の内訳は、消費増税3%分とそれに伴う特別減税の打ち切りによる負担増が7兆円。医療費の本人負担増が2兆円でした。
安倍首相は、過去二度にわたって10%の消費増税の実施を延期してきました。
2019年10月に本当に増税を実施するというのであれば、その前に、日銀は「インフレ目標達成間近か」という誤報を国民に投げかけて、私たちを腕づくで納得させようとするでしょう。
「2%のインフレ目標を達成した」と日銀が宣言すると同時に、それは、景気刺激策を段階的に縮小し始めるかもしれないということを日銀が示唆したことになるのです。
ヘリマネによるハイパーインフレは近い?
すでに政府の新規国債の引き受け手は不在です。日銀は、財政ファインナンスに踏み切る以外にないのです。
いよいよ現実味を帯びてきているのは、いわゆるヘリマネ(財政ファイナンス)によって不可避となるハイパーインプレです。
2019年は、日本に災厄が訪れる年になりそうです。
日本経済の縮小はすでに始まっている
日本経済の縮小は、すでに始まっています。
内閣府が5月16日に発表した2018年1ー3月期の実質国内総生産(GDP)の速報値では、第4四半期(1月ー3月)のGDPは、前期比0.2%減と、前期の0.1%増から反転してマイナスになったことが明らかとなりました。
これは、前期比年率で見ると0.6%の減少となり、日本経済が縮小していることが鮮明となったと言えます。国内外の市場予想では、前期比年率で0.2%減でしたから、予想を悪い方に大きく上回る結果となったわけです。
QUICKは、内閣府の速報値が発表された翌日の5月7日時点では、前期比0.1%減、年率0.4%減と民間予測の中央値を出しており、改定値では改善されると見込んでいました。
しかし、6月8日に内閣府が発表した改定値でも、この数字は変わらず、個人消費の下落傾向が鮮明になったかたち。とはいえ、マイナスに転じたのは9四半期ぶりで、1980年代に記録した12四半期連続成長には及びませんでした。
加速度的に進む高齢化が、日本のGDPを継続的に押し下げていく
フィナンシャル・タイムズ(5月16日付)は、この現象を、「高齢化がGDP縮小の主な原因(How Japan’s ageing population is shrinking GDP)」と「日本経済の凋落の始まり」と捉えています。
東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、フィナンシャル・タイムズの電話インタビューに応えて、「1-3月期の日本の景気が弱かったのは、好調な外需に内需が追いついておらず、可処分所得が増えていないことが問題」だと述べています。
武藤氏は、「設備投資は、若干上方修正されたものの全体としては依然として弱いままだ」と付け加えました。
イタリアに次いで、日本は「経済が弱い」
去年、G7先進国中で、もっとも経済が弱かったのはイタリアで、2番目に弱いのが日本経済でした。また、過去20年で見ても、経済の弱さではG7先進国中、イタリアに次ぐ弱さです。
さらに悪いことには、2018年から2019年にかけての日本経済は、G7諸国の中でもっとも経済が低迷する要因を複数抱えていると言えます。
フィナンシャル・タイムズは、「今のところ予想に過ぎないが、おそらくそうなるだろう」と控え目ながらも日本経済に赤信号を灯ったことを警告しています。
つまり、イタリアは、大手金融機関が実質的に破綻状態に置かれたままで、一向に改善の兆しが見えていませんが、日本は、それより悪くなると言っているのです。
その根拠は次の通り。イタリアの長期景気低迷は、記録的な高い失業率と全体的に弱い雇用情勢に関連しています。対して日本の場合は、G7諸国の中で失業率がもっとも低いにも関わらず経済が良くならないのは、高齢者が加速度的に増加していることが原因であると結論付けているのです。
経済低迷に元凶は、高齢者の爆発的な増加
日本の「就業可能な年齢に達した人口」が総人口に占める割合は、1960年代以来最高となっています。ちなみに、1963年の1人当たりの求人倍率は1.6倍でした。
しかし、なんらかの職業に就いている人口が多くても、高齢者の比率が働き盛りの若い労働人口に比べて加速度的に高くなっていくと、全体としては、労働生産性(1人当りGDP)が落ちていくので、結果として、GDPが縮小していくことになります。
「日本の人口統計を見る限り、今後、ますます若い労働力の比率が下がっていくので、必然的にGDP成長率を低下させることになる。他の先進国では日本など急激に高齢者が増えないので、日本は他国の成長率に追いつかない」と述べているのは、INGのアジア太平洋研究開発本部長であるロブ・カーネル(Rob Carnell)です。
いっぽう、国際通貨基金(IMF)もまた、「人口の急速な高齢化と労働力の縮小が経済成長を阻害している」と、最新の報告書で警告しました。(日本語訳)
また、別の文書では、「高齢化の影響が、日本の年間GDP成長率を今後30年間で1%ポイント引き下げる可能性がある」とIMFが試算していることを明らかにしました(日本語訳)。
つまり、特に高齢化が速く進む今後30年間は、高齢者が就労している・いないに関わらず、高齢者の生産性低下がGDP全体の足を引っ張る主な要因になると言っているのです。
老人はハイテク化についていけない
より具体的に言うと、定年退職の年齢に達した労働者が再雇用を求める場合、それまで企業で培ってきたスキルが、第四次産業革命の大波の前では歯が立たなくなるかもしれない、ということなのです。
AIやロボットなどのITによってドラスティックに変貌する産業と市場において、過去のスキルでは労働生産性が著しく劣るため、結果として、若い労働生産性を食いつぶすことになると言うのです。
むしろ、究極的なことを言うなら、年齢が問題なのではなく、急激に高齢化することによって新しいスキルを身に着けるだけの時間が与えられないということです。
フィナンシャル・タイムズは、このことを「労働力の縮小」と言っており、これがなければ、日本の経済成長はより強くなると見ています。
G7の中でも異常な日本の少子高齢化
2000年を起点にした場合、米国の人口は16%増加し、英国では13%の増加、カナダでは21%の増加を見ています。
総務省の「日本の総人口の長期的推移」によれば、日本の人口は2006年の1億2774万人をピークとして減り続けています。
日本の人口減少の下降トレンドが確定したのは2010年ですが、やはり2000年を起点として見た場合、約130万人も減少したことになります。これは、尋常ではない速さです。
特に過疎化が進むとされているのは北海道で、今後30年以内に道内の人口の25%が失われると推計されています。
国連は、日本の人口は2065年までにさらに2,800万人減少すると予想しており、これは現時点の総人口と比較して、22%の減少に相当します。
同じ期間に、他の先進国でも高齢化が進むものの、人口は平均で3%増加すると見込まれています。
日本の人口減少破壊がいかに凄まじいものになるのか、誰も想像がつきません。
やがて「3人に1人」が高齢者に
そのうえ、前述したように、日本の人口は減少するだけでなく急速に高齢化していきます。
2000年以降、就業年齢に達した日本の労働者の数は13%減少しましたが、米国では逆に13%程度増加しているのです。
恐ろしいことに、2040年までに日本人の3人に1人以上が65歳以上になります。これは世界レベルで見ても、ダントツに高い比率です。
もっとも、この試算は、フィナンシャル・タイムズの研究によって導き出されたもので、日本の厚生労働省の公式発表では、「2030年の高齢化率は30.8%と、2030年には国民の3人に1人が65歳以上になる」とされています。
今、2025年問題が囁かれていますが、これは、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者になる年で、要介護認定を受ける高齢者が急増すると予想されている年でもあります。
介護に携わる労働者の待遇改善の遅れが、構造的な人手不足を生み出し、また火葬場などの施設も圧倒的に不足することが分かっています。
さらに、2025年には、1,200万人以上の高齢者が認知症になっていると推計されており、国の医療介護福祉改革が焦眉の急(非常に差し迫った危険、問題を抱えていることのたとえ)となっています。
日本の経済停滞は避けられない
しかし、国は抜本的な改革をそっちのけにして、ひたすら憲法改正に突っ走っています。
仮に、労働意欲の旺盛な高齢者が再雇用されたとしても、高齢者の労働生産性の低下がGDPの足を引っ張るだけでなく、年金の崩壊や国民皆保険制度の崩壊など、さまざまな将来不安に備えて消費を控えます。つまり就労している高齢者の人口が多いからといって、消費の後押しとなることは期待薄です。
若い労働力が、ますます不足していく中で、百歩譲って「仮に、今後、労働生産性が横ばいであっても、日本の人口減少が年々、GDPを押し下げていくことは打ち消しようがない」と前出のロブ・カーネルは言います。
結論は容易に導き出すことができます。それは「拡大する人口を持つ国のGDPはプラス成長を続け、反対に人口が減少していく国のGDPは、今後、マイナス成長が続く」ということです。
教育水準が高い日本の今後に、世界が注目している
ただし、日本人のように全体的に教育水準が高く、高いスキルを持っている国民を見る場合に重要なことは、「1人当たりのGDPがどう推移していくかである」とカーネルは言います。
過去20年を労働生産性で比較した場合、“失われた30年”と言われながらも、日本人1人当たりのGDPは、フランスやカナダとほぼ同じです。
また、高齢化の傾向と人口減少を考慮しても、労働者1人当たりGDP成長率をみると、日本は、“失われた30年”の間でさえも、G7の中ではドイツに次ぐ第2位の躍進です。
この尺度を用いれば、日本の優秀な労働力は、今後も人口1人当たりGDPは、年平均で2%以上の成長率を維持することが見込まれます。
しかし、そのいっぽうで、若い労働力が減り続け、反対に、高齢化が加速度的に進むので、総体的には、年間1%ずつGDPが押し下げられていくということになるのです。
今まさに少子高齢化の悪影響が出始めた
海外のアナリストによれば、日本がGDPのマイナス成長率を見せたのは初めてとのことで、結論を言えば、少子高齢化による日本経済への締め付けが本格的に始まったと見るべきなのです。
このまま政府が手をこまねいていれば、先進国の中で、日本がもっとも悲惨な結末を迎える国になるでしょう。
もちろん、これは日本だけの問題ではなく、米国疾病対策予防センター(CDC)と高齢化管理局(AOA)が発表した統計によると、 2040年までに、米国の65歳以上の人口は2015年時点と比較して約14.9%増加し、全国民の4人に1人になると予想されています。
2050年までに、世界の累積する年金の赤字総額は400兆ドルに達し、世界経済の3倍以上の規模になると世界経済フォーラムの専門家は指摘しています。
社会保障費を軽減するしかない
壊滅的な危機を回避する手段は、高齢者に対する国家の義務を軽減するしかないのです。
つまり、仮に年金制度が存続したとしても、もっとも安い食料品が買える程度か、あるいは、米国のフードスタンプのように政府が支給する制度に代わっているでしょう。
ユニバーサル・ベーシックインカムに期待する声が高まっていますが、万が一実現したとしても、後期高齢者に支給される額は微々たるものに違いありません。
幻想を抱いて、自らの命を縮めることこそ愚の骨頂です――