コンビニは商品やサービスを拡大しながら成長を続けてきた。酒屋から転換した業態なので、最初のころは弁当を売っていなかった。おにぎりやいなり寿司を置くようになり、それが今の弁当に発展したとも言われている。
お菓子、パン、ビールといった食料品のほかに、石けん、洗剤、シャンプーといった日用品まで並ぶように。このほかにも、コピー機やお歳暮の受付などさまざまなサービスを追加してきた。そんなこなんなで、いまとなっては1店舗で約3000アイテムを扱っている。
このように書くと「多いなあ」と感じてしまうが、その一方で消えていったモノやサービスもあるのだ。例えばDPE(Development Printing Enlargementの頭文字)。店頭で受け付けていた写真サービスは、コピー機の付属サービスへ変わっていった。
「写ルンです」で一斉を風靡(ふうび)したレンズ付きフィルムも全盛期は10〜20種類置いていたが、今はあっても1〜2種類だろう。店によっては品ぞろえを止めているところもある。ファックスもコピー機の付属サービスとして残ってはいるが、風前の灯火だ。
DPEやファックスなどは、テクノロジーの進化によって消えていった。人々の生活が大きく変化したことで、消えていったモノがある一方で、「売っていては ダメだ」という世論が消したモノもある。代表的なのは、プリペイド式携帯電話。販売期間も短かったので、知らない人も多いかもしれないが、一時期コンビニ でプリペイド式携帯電話を売っていたのだ。
発売当初は「本当に売れるの?」と半信半疑のまま導入したが、すぐに売り上げは伸びた。しか し、このプリペイド式携帯電話、犯罪に使用されることなり、それを売ることは犯罪の片棒を担ぐのではという論調が強まった。そして、プリペイド式携帯電話 は需要があったのにもかかわらず、コンビニから消えていったのだ。
●コンビニで販売できなくなりそうな商品
プリペイド式携帯電話が消えていったように、今後もコンビニの店頭で扱うことができなくなるかも……と思う商品がいくつかある。その筆頭が、エロ本だ。
エロ本に否定的な人は多い。一番の理由は「子どもの目に触れるから」だろう。個人的には、子どもから性的なモノを遠ざけることが、教育としてベストだとは思っていないが、子どもを持つ身としては否定する人たちの気持ちも分かる。
ただ、イヤらしい写真を表紙に掲載しているような雑誌を店に並べるのは「ケシカラン」という人たちの声に押し切られれば、販売中止に追い込まれる可能性が あるのだ。「いやいや、いまの時代、インターネットがあるので、エロ本なんて買う人なんているの?」と思われたかもしれないが、紙でじっくり見たいという 層もまだまだいる。
もう1つ、世論に押し切られそうな商品がある。タバコだ。喫煙者に対する風当たりの強さは、10年前とは比較にならない。コンビニの店頭から灰皿が撤去され、街中の喫煙エリアもかなり減った。当然、環境に合わせるかのように喫煙率は減少している。
「健康・体力づくり事業財団」が出しているデータ(平成26年)によると、男性の喫煙率は30.3%、女性は9.8%となっている。10年前(平成17 年:男45.8%、女13.8%)と比較すると、喫煙率は大きく減少しているのが分かる。また4月からは、JTの主力ブランド「メビウス」などが値上げす るので、喫煙率の低下がさらに加速するかもしれない。
●エロ本とタバコの“ターニングポイント”
近い将来、エロ本とタバコ にとっての“ターニングポイント”が来るのではないか、と筆者はみている。そのターニングポイントとは「2020年の東京オリッピック開催」である。とあ る国では「屋根のある場所での喫煙は禁止」だったり、「認められたところ以外で吸ってしまうと罰金」を課せられたり。あれをやっちゃダメ、これをやっちゃ ダメといろいろ厳しい。
日本でも条例などの影響で“歩きタバコ”をしている人が随分減ったが、それでも目にすることがある。「マナーが悪い人は欧州にいませんよ(実際にはいるが)。日本人も見習いなさい」といった勢力が強くなってくると、店頭で販売することが難しくなってくるかもしれない。
「そんな風紀委員のような人が出てきて、ちょっと『ワーワー』と言ったからって、コンビニの棚からエロ本とタバコがなくなるなんて信じられない。川乃め、 またテキトーなことをいいやがって」と思った人も多いかもしれない。少し落ち着いていただきたい。例えば、1964年に開催された東京オリンピックのとき はどうだったのか。当時の日本は、今と違ってマナーの悪い人が多く、道路にゴミが溢れていたという。そこで、日本政府はオリンピックを機にマナー向上を目 指したのだ。
具体的にどういったことをやったかというと、ポイ捨てが多かったので、道路にゴミ箱を置いたり、立ち小便を厳しく取り締まっ たり、列にきちんと並ぶように指導したり。このほかにもさまざまな取り組みが行われ、その結果、いまの日本はどうなったか。ポイ捨ては減り、立ち小便をす る人も減り、列にきちんと並ぶようになった。
●エロ本が消える日
では、エロ本やタバコは、どのようにしてコンビニから消えていくのだろうか。筆者は以下のようなシナリオを予想している。
2018年、東京オリンピックまであと2年。PTAを中心にした団体「コンビニからエロ本をなくす会」が、各省庁に「エロ本から子どもたちを守れ!」と要求。これを受けとある省庁は、販売者であるコンビニ本社に「なんとかしろ」と圧力をかけるのだ。
ここで2つの流れが考えられる。1つは、素直に販売を中止する方向へ向かう。雑誌の中の構成比を見ると、エロ本は他の雑誌に比べて高いが、売上全体からすればわずか。お客でもあるPTAに反旗を翻してまで、販売するメリットはあるのだろうかと検討した結果、販売中止に。
もう1つは、わずかであれ売り上げは売り上げ。その売り上げを確保するために販売を継続するための手段を講じる。例えば「ビニ本」の復活だ。ビニ本とは、 昭和に見かけた販売手法。エロ本に文字通りビニールがかぶせてあって、外からは確認できないようになっている。現在のコミックのようなものだ。
中には黒いビニールで梱包されているモノがあって、それは表紙すら見れなかった。当時は、エロ本を隠すためというより、くじ引きのような感覚で売っていて、中身のアタリ・ハズレを楽しむ人もいたようだ(注:筆者は違う)。
●タバコが消える日
現在、コンビニで販売しているタバコの種類は200ほど。タバコ会社は新商品を“武器”に販売攻勢をかけてくるが、苦戦するブランドは棚から消えていく。また先ほどのデータが示すように喫煙率は減少、おまけにタバコの宣伝は大きく規制されている。
WHO(世界保健機構)は、映画やテレビ番組で喫煙シーンを規制するように各国へ通達を出したという報道もあった。こんな環境下で、いつまでも新商品頼みの販売促進は難しいし、これまでのように多くのブランドを製造することも難しくなるだろう。
ブランド数が削減されることによって、経営効率を上げていくことが予測される。売上減少とブランド減少によって、カテゴリーの重要性を失う。コンビニとしては、タバコは利益率の低い商品だ。ある一定のラインを切ると、撤退する可能性が高くなるのだ。
5年後、10年後、エロ本やタバコが、コンビニの棚から消えているかもしれない。しかし、消える商品があれば、現われる商品もある。勘の良い読者は既にお気付きだろう。時代環境に合わせながらどんどん変化していくのが、コンビニの本来の姿なのだ。
2030年、コンビニでクルマを買うことができるかもしれない――。