一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)は、2020年1~12月における車名別新車販売台数(軽自動車を除く)を発表した。新型コロナウイルスの影響により、乗用車・小型車の総販売台数は前年比87.8%と減少。車種別にみると、1位が「トヨタ・ヤリス」で、昨年トップだった「トヨタ・プリウス」は12位となるなど、順位も大きく変動した。 【写真で解説】2020年メーカー別新車販売台数ランキングを発表!
2020年の新車販売台数は前年比87.8%の減
2020年1~12月における新車売台数(軽自動車を除く)は、普通乗用車と小型乗用車の合計が247万8832台(前年比87.8%)と減少した。 これは新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きいと考えられる。2019年の新車販売台数は、普通乗用車(一昨年比100.2%)はほぼ横ばい。小型乗用車(一昨年比94.1%)では僅かに減少したことにより全体で微減となっていた。しかし、2020年は様相が一変し、普通乗用車(前年比85.5%)、小型乗用車(前年比90.9%)ともに減少したのだ。 2020年の新車販売台数を月別にみると、1~3月までは前年比約90%で推移。しかし、緊急事態宣言の発出された4月になると一気に前年比72.5%へと減少。さらに、飲食店などへの休業要請や県をまたぐ移動の自粛期間中であった5月の販売台数は、前年比58.2%とさらに大きく減少した。 その後、7~9月は前年比約80%程度に推移。GoToキャンペーンなどもあり、人の移動が活性化した10月には一気に134.5%へと増加。年末まで前年比100%を超える展開となった。しかしながら、その他の月が全てマイナスだったため全体としては減少となった。 新型コロナによって世界規模で経済活動が停止したことの影響は、一般的に2008年のリーマン・ショックをも上回るといわれている。個人の消費行動にも大きな影響を与えており、一時は各自動車メーカーの製造ラインもストップした。自動車産業は関連産業も含めて就業人口が550万人といわれており、日本経済全体への影響も大きいため、2021年での巻き返しが望まれる。
2020年メーカー別新車販売台数ランキング
次にメーカー別の新車販売台数を見てみよう。1位はトヨタで126万46064台(前年比95.1%)。2位はホンダで29万3800台(前年比82.2%)。3位は日産で21万959台(前年比69.2%)と、それぞれ販売台数を落した。 唯一販売台数を伸ばしたのはダイハツで5万5984(前年比128.4%)。昨年9位から一気に2ランクアップした。これは昨年11月に発売された新型SUVダイハツ・ロッキーの販売好調によるものだ。
車名別新車販売台数ランキング
次に2020年における車名別の新車販売台数(乗用車・小型車)をランキング形式で見てみよう。 ■1位:トヨタ・ヤリス 15万1766台(2020年2月発売) 1位に登場したのはトヨタ・ヤリスで販売台数は15万1766台だった。国内では発売から20年間、トヨタ・ヴィッツの名称で親しまれてきたが、フルモデルチェンジを機に海外モデルと同様にヤリスへと名称が統一された。 ヤリスは、トヨタのクルマづくりの構造改革「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」に基づく新プラットフォーム「GA-Bプラットフォーム」を初採用。WRC世界ラリー選手権に参戦するなど、ヴィッツの持っていたファミリーカーというイメージを一新し、スポーティーなイメージを定着させたことが販売台数増の後押しとなったのだろう。 ■2位:トヨタ・ライズ 12万6038台(2019年11月発売) 2位は、トヨタ・ライズで販売台数は12万6038台だった。 ライズは、昨年11月に発売された新型SUVでダイハツが開発・生産を行うOEM製品。ダイハツではロッキーとして販売されている。一昨年復活を果たして売れ行き好調だったトヨタ・RAV4に似たワイルドなデザインを持つことや、価格・サイズともにRAV4よりも手頃であることが勝因の1つだと思われる。 ■3位:トヨタ・カローラ 11万8276台(前年比113.3%) 昨年4位のトヨタ・カローラが3位にランクアップ。販売台数も11万8276台(前年比113.3%)と大きく伸ばした。 カローラは2019年9月にセダン・ワゴンともにフルモデルチェンジ。セダンでは国内13年ぶりとなる無印の「カローラ」というネーミングが復活した。また、ハイブリッド車のカローラアクシオ(2代目)に設定されなかった4WD車が新たに加わるなど、多様なニーズに応えられるラインナップとなり、結果につながった。 ■4位:ホンダ・フィット 9万8210台(前年比132.0%) 4位のホンダ・フィットは昨年の12位から急上昇。販売台数を9万8210台(前年比132.0%)と大きく伸ばしてトップ5にランクインした。 フィットは、2020年2月にフルモデルチェンジして発売開始。幅広いユーザーのニーズに応えるため、それぞれ特徴を持った5種類のモデルをラインナップしたことが功を奏したようだ。 ■5位:トヨタ・アルファード 9万748台(前年比132.1%) 5位のトヨタ・アルファードも昨年の13位から急上昇。販売台数を9万748台(前年比132.1%)と大きく伸ばした。アルファードは2015年1月のフルモデルチェンジ以降、大きな改良やモデルチェンジは行われていない。 にもかかわらず、アルファードが販売台数を伸ばした背景には2020年5月から、トヨタの全販売店において全車種併売がスタートしたことが一因だと考えられる。これまでは、トヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツトヨタ店の4系統それぞれで販売される車種が違っていた。そのため近所の販売店では取り扱いがなく、遠方まで足を運ばないといけない場合もあった。その販売障壁が取り除かれたことがコロナ禍にあっても好調であった一因なのだろう。
昨年までは、順位に変動こそあるものの、プリウス、ノート、アクア、シエンタなど、お馴染みのクルマが上位を守り続けてきた。しかし今年は、新型車やフルモデルチェンジしたクルマがトップに食い込み、車名別ランキングが大きく変動した。 新型コロナウイルスの影響により移動のニーズが変化しており、感染症対策のためにマイカー購入を視野に入れるユーザーが増加したといわれている。そういったコロナ禍の変化さえも追い風にするような2021年を期待したいところだ。 【お詫びと訂正】公開時、一部表記に誤りがありましたので、正しい表記に修正いたしました。お詫びして訂正させていただきます。