仙台市青葉区一番町の複合ビル「電力ビル」の解体と周辺エリアの再開発を巡り、地権者でつくる「一番町三丁目七番地区市街地再開発準備組合」は3日、東二番丁通と広瀬通の交差点から南西側を再開発し、地上24階程度と地上35階程度の高層ビル2棟を建設すると正式に発表した。全体の完成は2035年度ごろ。老朽ビルの建て替えを市が支援する「せんだい都心再構築プロジェクト」の認定を目指す。
準備組合のメンバーが市役所で記者会見し、組合を3月31日に設立したと報告した。組合に参加したのは、東北電力グループで電力ビルを所有する東日本興業(仙台市)、明治安田生命保険、戸田建設、大一殖産(いずれも東京)などの法人と個人の計9者。全員が再開発を計画する区画の地権者で、準備組合設立に同意した。
開発区域は約1万8000平方メートル。広瀬通側の北棟は24階程度、南棟は35階程度の「ツインタワー」を目指す。2棟を低層部でつなぎ、中心には緑化を施したイベント広場を設ける。オフィスや小売店、多目的ホールが入る。ホテルなど多様な入居者を誘致していくという。
1フロア660平方メートル以上の高機能オフィス整備といった「都心再構築プロジェクト」の要件を満たし、容積率の緩和や固定資産税負担への助成などの優遇措置を受けたい考えだ。
本年度中の都市計画決定を経て、24年度に市街地再開発組合を設立し、事業計画の認可を目指す。着工は25年度を予定し、10年程度で全体を完成させる。
東日本興業の宮岡隆常務は「電力ビルは築60年を超え、数年前から再開発を検討してきたが、市の『プロジェクト』ができて後押しされた。東北の中枢にふさわしいにぎわいや交流、持続的な経済活力を生む都心地区を目指す」と話した。。
仙台市長、都心再構築の効果期待「市民が目を見張るものになる」
仙台市中心部の複合ビル「電力ビル」を含む大規模な再開発計画が明らかになった3日、市は老朽化した建物の建て替えを促す「せんだい都心再構築プロジェクト」の重要案件として期待を寄せた。水面下にある複数のビル更新計画が動き出す「呼び水」になるとみて、2024年3月末までのプロジェクトの期間延長も視野に入れる。
「都心部の再開発がいよいよ本格化する。大変うれしく感じる。市民が目を見張るものになるだろう」
郡和子市長は同日の記者会見で、敷地面積が1万平方メートルを超す区画の再整備に強い期待感を示した。
市は19年7月に発表した都心再構築プロジェクトの対象に、これまで計4棟のオフィスビルを認定した。いずれも大手企業の自社ビル建て替えが中心。今回は電力ビルを管理する東日本興業(仙台市)が主導する初の「地元再開発案件」となる可能性が高い。市幹部は「老朽建築物の建て替えを促すには、地元の動きが必要だった」と明かす。
プロジェクト認定は、再開発を進める側のメリットも大きい。市は要件を満たした場合、容積率の緩和や固定資産税負担への助成など支援策を用意する。再開発準備組合に参加する東日本興業は「市の支援策が渡りに船となった」と説明。再開発組合(本組合)の設立を目指す一方、プロジェクトの対象になるよう市と具体的な協議を進める方針だ。
市によると、都心部で築40年を超える建物は4割に達し、1981年の建築基準法改正前に建ったビルなどの更新が課題。都市整備局の担当者は「中小規模のビルを含め、事業者から相談を受けている。しっかり支援したい」と強調した。