3月末に襲いくるコロナ発「雇用危機」に備えよ

 8日朝、「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ)に出演した加藤勝信厚労相は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、3月15日以降も引き続き大規模イベント等の自粛を要請していく可能性について示しました。

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懸念される期末前の大リストラ

 筆者はこの番組を見ていて、がっかりしました。ぜっかく加藤厚労相自らがテレビ出演して取材に応じたにもかかわらず、何を示したいのかよく理解できなかったからです。大規模イベントの自粛継続を要請していくことだけは分かりましたが、どのように事態を収束させるのか具体的なプランは明示されませんでした。

 これまでのイベント自粛要請や学校の一斉休校要請などで、国民生活に深刻な影響を与えると同時に、経済的なマイナス面も徐々に露わになってきています。

 すでに、誰も2週間で収まるなど思っていないでしょう。予定通りにオリンピックが開催できるなど思っている人も少数派になってきているのではないでしょうか。

 であるならば、国民生活を守るための対応も考えていかなければなりません。まずはウイルス感染をいかに防ぎ、どのように収束させるのかマイルストーンの公開を急がなくてはいけません。そうでもしてもらわないと、急速な景気失速と企業経営悪化の回復の展望が見えません。ひいては、私たち国民の雇用状況にも深刻な影響が及びかねません。

 政治家や公務員は休職になっても報酬は補償されます。しかし、会社員はそうはいきません。とくに危険なのは非正規社員です。期末を前にリストラの嵐が吹き荒れることを心配しています。

会社員はどうすべきなのか

 産経新聞(2020.3.20)によれば、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、政府が全国の小中高校などに臨時休校を要請したことで、パートやアルバイトとして働く非正規労働者らに深刻な影響が出始めていることが紹介されています。

「収入ゼロ」「勤務終了を通告」 一斉休校、非正規労働者ら直撃
肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、政府が全国の小中高校などに臨時休校を要請したことで、パートやアルバイトとして働く非正規労働者らに深刻…

 このような問題は、非正規社員など基盤が弱い人ほど顕著になります。正社員は、期限の定めが無い雇用契約なので、よほどのことが無ければ解雇はできません。会社は次の解雇の4要件を満たさない限り裁判で負ける可能性が高いからです。

1.人員整理の必要性
2.解雇回避努力義務の履行
3.被解雇者選定の合理性
4.手続の妥当性

 整理解雇であっても、手続の妥当性が問われます。説明、協議、納得させるための手続きを踏まない限り無効とされるからです。そのため、人員整理の対象はまずは非正規社員に向かいます。非正規社員は、契約期間が過ぎてしまえば労働者でなくなるからです。パートも同じで、短期契約期間が満了すれば更新される保証はまったくありません。

 過去の判例では「非正規社員は正規社員より先行して解雇される」ことが明示されています。正社員を整理解雇するためには、非正規従業員の解雇を先行させなければ解雇権の濫用にあたるとする判断が示されているのです。

 日立メディコ事件(最高裁,昭和61.12.4)によれば、解雇対象者の順位は、「純粋なパートタイマー」 → 「定年後再雇用者」 → 「常用的パートタイマー」 → 「常用的臨時工」 → 「正社員」の順位とされています。

 春風堂事件(東京地裁,昭和42.12.19)では、フルタイムの労働者の地位とパートタイムの労働者の地位とは、そこに自らの差違があることを認めています。使用者が企業経営の必要から労働者の整理と行おうとする場合には、先ずパートタイムの労働者を先にして、その後フルタイムの労働者に及ぼすべきものであり、それを逆にすることは原則として許されないとされています。

 不測の事態に陥らないためにも、労働者は業務の内容、採用時のやりとり、契約更新の回数、更新手続きが形骸化していないかなど確認する必要があるでしょう。

 政府は助成金を創設して手厚く保護をするとしていますが、業績が悪化した会社では、在籍していることにして助成金を詐取する企業が出てくるかもしれません。契約更新は会社の裁量ですから、そこには政治の支援は及びません。

 期末を前に、企業は人員整理のアリバイづくりに腐心することになります。現状は、正社員と非正規社員が同じ仕事をしていても、正社員は給料が高く解雇もされません。非正規社員は給料が低く解雇のリスクもあります。病気や障害などでハンディを背負った人は、セーフティーネットで救済する必要がありますが、コロナ問題はじわじわと企業を蝕んでいきます。

非正規はどのように身を守るべきか

 2020年4月以降、中小企業が対象になる「時間外労働の上限規制」が適用されます。上限を守らないと労働基準法36条6項(働き方改革関連法・労働基準法36条改正労働時間)の違反となり、6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金が科されます。

 非正規社員はしっかりと団結して組織的に動く必要があると思います。連合が非正規社員のために動き出せば状況は変わりますが静観をするように思います。動き出すならとっくに動いていても不思議ではないからです。

 非正規社員の次は正社員に移行します。影響度が大きければ、正社員も身分を失うことになります。高みの見物をしていられるのは政治家と公務員くらいのものでしょうか。自粛期間中に予防策を考えておくことが必要です。

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