30~40代の[孤立死]が続発!

年始早々、大阪市で女性2人が餓死するなど、今や大問題である孤立死。それは高齢者だけでなく若年層にまで広がりつつある。その現状に迫った
◆明日、家で死んでも、誰も見つけてくれない
「死後、数日間放置されただけで人間の身体は腐敗が始まります。荒れ果てた部屋には強烈な死体の腐臭が立ちこめ、ウジやハエが大量に湧き、畳や床には死体から出た脂が人型のどす黒い染みを作る。孤立死の現場は、まさに『凄惨』の一言に尽きます」
 そう語るのは、遺品整理専門会社「キーパーズ」代表取締役の吉田太一氏だ。近年、団地や賃貸住宅などの一室で、一人暮らしの高齢者が誰にも看取られず死後に発見されるという「孤立死」が社会問題化している。東京都監察医務院の調査によると、’87年では男性788人・女性335人だった東京23区内における孤立死が、06年では男性2362人・女性1033人と激増。しかも、それは高齢者のみにとどまらず、05年には全体の1割強に当たる、約200人が 40代以下と、今では若年層にも及び始めている。
◆一人暮らし20~40代も「孤立死予備軍」になる
キーパーズでは遺族になりかわり、こうした孤立死などによる死者の遺品を整理・回収しているが、吉田氏も孤立死の急増を実感しているという。
「団地では自治会などのネットワークがあるので、孤立死を防いだり、死体を早期発見することも可能です。しかし、一般住宅に住む人たちにはそういったものがなく、死亡し、発見されるまでは消息がわからないので、実態も掴めない。家族と離れて一人暮らしをする20~40代も、今や『孤立死予備軍』と認識するべきでしょう」
 実際、孤立死の死体はむごたらしい。死後10日ほどを過ぎると体の表面にたかったハエが大量に卵を産みつけ、ガスも発生し死体がパンパンに青黒く膨れ上がる。さらに日数がたつと、卵から孵化したウジが腐敗した死肉を食い尽くし、死体はもはや原形をとどめない。死後10日も過ぎると大量のハエが発生し、第一発見者が故人の部屋のドアを開けた途端、ハエの大群が迫ってくるのだという。
「我々の仕事は部屋から死体が運び出されてからなのですが、それでも強烈な死臭が部屋に残っている。孤立死発見のキッカケは異臭によることがほとんどなのですが、『早く自分を見つけてくれ』と、まるで匂いが発見者を呼んでいるかのようです」(吉田氏)
 もちろん、悲惨なのは亡くなった当人だけではなく、残された周囲の人たちにも及ぶ。賃貸住宅の大家にしてみれば、孤立死に遭った部屋は清掃費やリフォーム費用がかさむうえ、事故物件となり賃料を大幅に下げざるを得ないなど金銭的なダメージも大きい。遺族にしても、人間の原形をとどめていない腐敗の進んだ遺体を見せられれば、悲しみよりも戸惑いのほうが大きいだろう。
「これは60代男性のケースですが、生前から折り合いの悪かった遺族が遺体や遺品の引き取りなどを拒否したケースがありました。その死体も腐敗が進んでいて、大家さんも途方に暮れていたのですが、最終的には遺族が部屋の状態を回復する費用を一部負担することで何とか話がつきました。こんな悲惨な死にざまはなくさないといけません」(同)

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