36世帯のうち1世帯が「富裕層」…共通する「価値あるお金の使い方」とは

そもそも「富裕層」の定義って?

富裕層に共通するお金の使い方や考え方を探っていく前に、そもそも「富裕層」とはどのような人たちのことを指すのでしょうか。

実は、「富裕層」という言葉に対して、共通して使われている明確な定義は存在しません。参考までに紹介しておくと、野村総合研究所では、「純金融資産保有額1億円以上5億円未満」の世帯を「富裕層」と定義しています。

「純金融資産保有額」とは、預貯金や株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯で保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借り入れなどの負債を差し引いたもの。言い換えると、不動産や高級車、絵画などは資産としてカウントされていないということになります。

この野村総合研究所が2021年に行った調査によると、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせた世帯数は148.5万世帯。その内訳は、富裕層が139.5万世帯、超富裕層が9.0万世帯となっています。全世帯の合計が5413.4世帯なので、その割合は約2.7%。つまり36世帯に1世帯が1億円以上の純金融資産を保有している「富裕層」ということになります。イメージに置き換えると、学校で1クラスに1人ぐらいは「富裕層の家の子」がいる、というような感じでしょうか。

純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数

(出典)野村総合研究所

(参考)
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2023/cc/0301_1

日本と世界の「富裕層」を見てみると……

では、実際の富裕層の顔ぶれにはどのような人たちが並んでいるのでしょうか。

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Forbes Japanの日本長者番付2023によれば、資産額1位はユニクロでおなじみ、ファーストリテイリングの代表取締役会長兼社長の柳井正さん。推測の資産額は4兆9,700億円となっています。2位はキーエンスの名誉会長である滝崎武光さんで3兆1,700円。3位はソフトバンクグループを率いる孫 正義さんで2兆9,400億円となっています。

(参考)

せっかくなので世界の長者番付にも目を向けてみましょう。同じForbesの世界長者番付2023によれば、1位はルイ・ヴィトンをはじめとするフランスの高級ブランドグループ、LVMHの会長兼最高経営責任者(CEO)であるベルナール・アルノーさん。その資産額は2110億ドルで、1ドル=145円として計算すると、資産額は約30兆5,950円ということに。

続く2位は、ご存じイーロン・マスクさん。テスラ、X(旧Twitter)、スペースXなど超有名企業を数多く率いている起業家で、資産額は1,800億ドル、日本円で26兆1,000円に及びます。そして3位はアマゾン・ドット・コムの共同創設者であるジェフ・ベゾスさん。資産額は1,140億ドル、日本円で1,653億円となっています。

(参考)
https://forbesjapan.com/articles/detail/62183

こうした人々は「超富裕層」の中でもさらに超が3つも4つもつくぐらいの資産家になるわけですが、その多くが生まれ持っての資産家ではなく、自ら起業し、苦労を重ねながら、結果として資産を築いています。そして、そのサービスは私たちの生活にとっても馴染みのあるもの、欠かせないものとして浸透していますよね。社会に新しい価値を生み出し、その対価としてお金を得た結果、日本や世界で名だたる「富裕層」になった、とも言えます。

富裕層に共通するお金の使い方

さて、「富裕層のお金の使い方」というと皆さんはどのような使い方を想像するでしょうか。広くて眺めのよいタワマンに住み、豪華なクルーザーを購入し、飛行機に乗るときは当然、ファーストクラスやビジネスクラス――そんなイメージを持っている人は少なくないかもしれません。

もちろん、ある程度の資産を保有している人の中には、そういったお金の使い方をする人もいないわけではありません。でも、私が知っている富裕層の人たちの中には、私たちと変わりないくらい、むしろそれ以上に堅実とも言えるお金の使い方をする人もたくさんいるのが事実です。

ポイントは、ここでいう「堅実」とは、「ケチ」とは根本的に違うということ。すべからく出費を惜しむのではなく、自分にとって価値があると思うものには惜しみなく使い、価値を感じなければ、たとえ金額が小さくても財布の紐を締める。これが、私が見ていて感じる「富裕層に共通するお金の使い方」です。美味しい食事とお酒を楽しむことにはお金を惜しまない人でも、楽な洋服が一番、と思えば機能性重視でユニクロを着ます。

クレジットカードについても、富裕層というとアメックスのプラチナ・カードやブラック・カードを持っているイメージが強いかもしれませんが、あえてもっともシンプルなグリーン・カードを持っている人も多くいます。「使えさえすればいい」というのがその理由。要するに、金額の大きい、小さいとは関係なく、自分にとって「価値>価格」となっていれば「投資」としてお金を使うし、「価値<価格」となっていれば「浪費」であるためお金を使わない、ということを徹底しているのです。

「投資の神様」バフェットさんのお金の使い方

そうしたお金の使い方の典型例とも言えるのが、「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェットさんです。

バフェットさんは先ほどの世界長者番付2023で5位、資産額は1060億ドル、日本円で15兆3,700円に及びますが、現在でも1958年に3万1,500ドルで購入した、生まれ故郷であるネブラスカ州オマハの郊外にある小さな一軒家に住み続けています。そしてオレオとマクドナルドのチキンナゲットとコーラをこよなく愛し、御年93歳ながら毎日、マクドナルドのモーニングセットを食べに通っているそう。

しかし、これは決してバフェットさんがケチだからではありません。これまでに難民や災害、教育、環境問題などに取り組む慈善団体に累計515億ドルを寄付し、最終的には「保有資産のほぼすべてを寄付する」と宣言しています。ちなみに、年に1回、「バフェットさんと一緒にニューヨークの老舗ステーキハウスで昼食を食べる」権利がオークションにかけられており、2022年には過去最高の1,900万ドル(約27億円)で落札されましたが、この落札金も全額が寄付されています。

世間の常識や見栄に囚われず、自分が好きなもの、価格以上の価値を感じるものにはお金を使い、そうではないものには使わない――これは簡単なようでなかなかできないこと。でも、これを意識できれば、収入は変わらなくても、そのお金を使って得られる幸福度を最大化することができます。そして、価値あるものにお金を使っていくことの繰り返しの中で、資産を増やしていくことができるのです。

※記事中に誤字がございましたので修正いたしました。お詫び申し上げます。

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