4カ月前、異例の決着 延期開催、背負った重荷―東京五輪

年明け以降、瞬く間に感染者を広げた新型コロナウイルス。特効薬が開発される当てのないまま、人口1400万人近い東京を主会場に、世界最大のスポーツの祭典を今夏開催できるのか。その答えが「延期」だった。

 日増しに疑問の声は強まり、IOC内部から「開催可否の判断は5月下旬が期限」との発言も出る中、バッハIOC会長は「7月24日開幕を目指して全力を尽くす」と言い続けた。だが感染者が欧米に広がり、巨額の放映権料をIOCに支払うテレビ局がある米国のトランプ大統領が「1年延期論」に言及。風向きは一変し、開幕4カ月前の段階で決断に至った。

 多くの競技で大会が中止や延期となり、五輪予選や代表選考は混乱。バッハ会長は「公平な代表選考ができるよう全力を尽くす」と強調したが、事態が収束して再開できる見通しは立たない。万人が納得する基準を定めるのは不可能で、IOCの後手の対応は選手の反感も招いた。

 IOCが東京都と結んだ開催都市契約には、延期を想定した明確な規定がない。ただし「契約の締結日には予見できなかった不当な困難が生じた場合」は、組織委がIOCに対して合理的な変更を要求できる。2021年7~8月は既に水泳や陸上の世界選手権開催が決まっており、2年延期は冬季五輪やサッカー・ワールドカップと同一年の点から日程面の調整は難しい。それでも各国際競技団体が協力姿勢を示し、開催国が甚大な損害を被る中止は回避された。

 五輪は200以上の国・地域から選手と関係者だけで2万人近くが集まる。誰も予想しなかったウイルスという見えない敵により、五輪史上かつてない措置が決まった。日本側の意向が反映される決着にはなったが、延期開催で重い負担を強いられる。選手にも運営側にも新たな闘いが始まる。 

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