ジャニーズ事務所とメディア側に必要な緊張感
ジャニーズ事務所は7日、都内ホテルで記者会見を開き、故ジャニー喜多川前社長による性加害の事実を正式に認めて謝罪した。問題を放置してきた責任を取り、今月5日に藤島ジュリー景子代表取締役社長(57)が辞任したこと、所属俳優・東山紀之(56)の新社長就任を発表。会見にはジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦(47)を含めた3人と顧問の木目田裕弁護士が登壇した。
東山は年内をもってタレント引退、事務所の株式100%を所有する藤島氏は当面代表取締役を継続し、被害者救済の責任を担う。全ては「外部専門家による再発防止特別チーム」による調査結果を受けての対応で、1962年6月の事務所設立以降、事務所幹部が出席する記者会見は初めてとなった。会場には300人の報道陣が集結。ムービーカメラは30台以上で、会見は4時間12分に及んだ。東山らは1つ1つの質問に対応。真摯(しんし)な姿勢を見せたが、課題となるメディアとの新たな関係性については認識不足の面もうかがわせた。(取材・文=ENCOUNT編集長 柳田通斉)
4時間12分。30年以上の記者生活で最長の会見だった。覚悟を決めて新社長に就任した東山は、必ず質問者に体と顔を向け、真剣なまなざしで対応し続けた。相次ぐ質問内容の要点をとらえ、端的に回答。新社長としての初めての仕事をやりきり、事務所再生の第1歩は踏み出せたようには感じた。だが、性加害問題がクローズアップされる前までは、ジャニー氏への恩、感謝を公言していたのを一転し、「うわさを信じていなかった」「やってきたことは鬼畜の所業」と言い切ったことには、違和感を覚えた。
冒頭の報道陣に向けてのあいさつも気になった。「失われた信頼を再び取り戻すべく全力で取り組んでまいります。命を懸けて、この問題に取り組んでまいります。できましたら、これまで以上に応援していただきたいと思います」。メディア側から「応援されてきた」「応援されたい」と認識している点だ。
ジャニーズ事務所は長く、テレビ、スポーツ紙、アイドル誌、テレビ誌と友好関係で、媒体側には「ジャニ担」がいる。担当をつける理由は、ジャニーズの人気タレントを出演、登場させて売り上げにつなげるためだ。
ただ、両者の関係は近すぎた。私自身もスポーツ紙に29年、ローカルテレビ局に2年勤務して、それを感じてきた。タレントへのインタビュー、ライブ取材も優先的にでき、広報担当の白波瀬傑副社長(5日で辞任)は性加害問題を「そんなことはありません」と否定。そして、近いメディア側はそれ以上の取材をしてこなかった。同問題を調査した「外部専門家による再発防止特別チーム」は「マスメディアの沈黙が被害を拡大させた」と指摘したが、私自身もそれに該当しており、被害者の方々に心から申し訳なく思っている。
テレビ局を2021年8月で退社し、ENCOUNTの一員になってからはジャニーズ事務所と距離ができた。それは白波瀬氏が「ウェブ媒体」と壁をつくっていたからだ。インタビューもライブ取材もできなくなった。その状況で再燃した性加害問題。被害者側も取材して報じるようになり、メディアはどんなことがあっても、「是々非々」で対応すべきだと再認識した。
東山も外国メディア、一般紙、週刊誌も多く参加したこの会見を終えて、「メディア=応援してくれる」という認識を変えることだろう。また、これまでジャニーズ事務所と近すぎた媒体側も変化を求められる。特別チームの調査報告書にも「相互監視する関係に再構築するため速やかにメディアと対話を開始すべき」と記してある。緊張感を持ち、是々非々で判断していく。ENCOUNTもジャニーズ事務所とそんな関係でいきたい。柳田通斉