4病院再編 宮城県議会自民会派「丁寧に議論を」 出身の知事に異例の申し入れ、県議選へ危機感か

宮城県が主導する仙台医療圏の4病院再編で、県議会最大会派「自民党・県民会議」は26日、村井嘉浩知事に対して、患者や家族への情報提供など、より丁寧に議論を進めることを求める申し入れを行った。

 (1)県民への十分な情報提供、患者らからの意見聴取(2)県精神保健福祉審議会への丁寧な説明(3)仙台市との緊密な意見交換(4)県議会への十分な説明-の4項目を求めた。

 県庁で会派役員8人が村井知事に面会。申し入れ書を手渡した外崎浩子会長は「われわれも知事与党としての重みを感じている。丁寧な対応をお願いしたい」と要請した。

 村井知事は「県民に真意が伝わっていないのであれば私の不徳の致すところだ。しっかりと受け止めたい」と述べた。

支持者の反発、予想以上 「選挙区を回れば回るほど厳しい」

 自民会派の申し入れの背景には、県議選(10月13日告示、22日投開票)を間近に控えた所属議員たちの危機感があった。再編構想に対する支持者の反発は予想以上に強く、知事の出身母体の最大与党が異例の対応に踏み切った。

 「選挙区を回れば回るほど、(支持者の)態度は厳しくなっている」

 ある会派幹部は、再編構想の報道が取り上げられるたび、支持者から厳しい突き上げを食う同僚議員の嘆きを何度も聞いた。

 宮城県の富谷市、名取市にそれぞれ移転が計画される東北労災病院(仙台市青葉区)と仙台赤十字病院(太白区)がある仙台市内は「とりわけ顕著だ」と明かす。

 「あの知事では駄目だ」。支持者から直接、告げられた幹部もいるという。

 県が名取市に民間の精神科病院を誘致する方針を示した8月の県精神保健福祉審議会に出席した知事の「私を止めることができるのは県議会だけだ」という強気の発言が、会派内にくすぶった不満を一気に噴出させた。

 「みんな『われわれの選挙の前に何を言ってくれているんだ』と、知事への不信感を強くした」(ベテラン議員)

 5日に開会した県議会9月定例会では、会派所属で代表質問と一般質問に登壇した計10人中5人が再編問題を取り上げ、いずれも知事を追及。県政報告会で、再編構想の見直しを堂々と訴える議員まで現れた。

 「このままでは県政与党がもたない」。会派三役の地元は、いずれも仙台市内と富谷市内。当事者としての意見も一致し、急きょ、知事申し入れが決まった。21日の会派総会で表明すると、異論は出なかった。

 自民会派はここ数年、県が導入を目指した宿泊税制度と知事が消極姿勢だった県立高のエアコン設置を巡り、異例の申し入れをしてきた。見直しや再検討を求められた知事は、いずれも方針転換を迫られた。

 ある幹部は「一度立ち止まってほしいのが本音だ。県民を甘く見てはいけない」と語気を強めた。

知事「お叱りの気持ちと受け止めた」「県民に話す場を設ける」

 村井嘉浩知事は26日、自民会派からの申し入れを受けた後、報道各社の取材に応じた。主なやりとりは以下の通り。

 -受け止めは。

 「一言で言うと『もう少し丁寧に説明しなさい』ということに尽きる。仙台市立病院は精神科の治療に熱心に取り組んでおり、連携は時宜を得た指摘だ。市と胸襟を開いて、しっかり話し合うことも重要だ」

 -県民への説明は。

 「(民間病院と)調整している内容は話せないが、なぜ4病院の再編になり、(名取市に誘致する民間の精神科病院を加えた)5病院の構想になったかの経緯は、県民に話す場を設けるべきだと考えている」

 -知事を支える与党会派からの申し入れだった。

 「過去に何度もあるので特別ではない。それだけ私の施策に思いを寄せ、心配し、お叱りの気持ちを持っていると受け止めた」

 -構想撤回の考えは。

 「それはすべきでないと思っている。最終的には県民から選ばれた県議会議員が判断することで、(将来提出する)条例議案や予算議案に対し、議会の厳しいチェックが入ることは覚悟しなければならない」

県が精神医療センター移転でアンケート 外来患者、デイケア利用者対象

 県が主導する県立精神医療センター(名取市)の富谷市移転構想を巡り、県は26日、センターの外来患者やデイケア利用者を対象としたアンケートを始めた。移転構想と、センターの代わりに民間の精神科病院を誘致する計画に関し、当事者の思いを聞き取る。

 センターに県職員を配置し、協力の承諾を得られた当事者から、センターの移転構想に対して感じる不安や疑問、民間病院の誘致計画についての意見などを聞く。実施期間や対象人数は、初日の現場の反応などを参考に今後調整する。

 2021年9月のセンター移転構想の公表以来、当事者アンケートは初めて。県はこれまでもさまざまな場面で当事者の意見を聞いてきたとするが、政策決定過程への当事者参画を掲げる障害者権利条約に則していないといった指摘が県議会などから出ていた。

 県医療政策課の担当者は「患者の負担に十分配慮し、一人一人の気持ちを直接聞いていく」と述べた。入院患者への聞き取りは本人の負担が大きいことが見込まれ、今回は見送った。

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