47都道府県「幸福度」ランキング

『全47都道府県幸福度ランキング2016年版』(寺島実郎:監修、日本総合研究所:編)が東洋経済新報社より刊行された(7月29日発売)。各県知事・メディアが注目する「総合ランキング」についての解説を転載し、紹介する。なおランキングの詳細については書籍をご一読願いたい。

「幸福」という概念は、一般的には主観的で相対的なものである。そのことを念頭に置きつつも、我々は地域に生きる人々の幸福を実現するための基本要素を踏み固めることで、自らの置かれている現状を客観的に捉え、地域づくりにつなげていくことが必要不可欠だと考えている。

このため、持続的・継続的に分析可能な枠組みとして、『日本でいちばんいい県都道府県別幸福度ランキング(以下、「2013年版」)』および『全47都道府県幸福度ランキング2014年版(以下、「2014年版」)』(いずれも東洋経済新報社)を出版した。

■65指標によるランキングを実施

2013年版では、基本指標5指標と分野別指標50指標の計55指標でランキングを試みた。2014年版では、5つの追加指標を加えて60指標でのランキング化を図っており、今回の2016年版では、さらに5つの追加指標を加えた65指標によるランキングを打ち出している。

基本指標は、各地域における経済活動や社会活動の基礎的状況を示す指標である。分野別指標は、人々の幸福に一定の影響を与え得る具体的要素の状況を示す指標であり、「健康」「文化」「仕事」「生活」「教育」の5分野で構成されている。さらに、各分野はそれぞれ2領域に分かれ、各領域に5指標ずつ設定されている。5指標のうち2つが現行指標、3つが先行指標である。現行指標は、現状における経済や社会の安定度を示している。先行指標は、個人の将来ありたい姿や社会の将来あるべき姿の実現という、未来の幸福に向けた地域の潜在能力を示している。

2016年版では、地域力とは何かを熟慮したうえで、2014年版の60指標に、新たな追加指標として、「合計特殊出生率」「自主防災組織活動カバー率」「刑法犯認知件数」「農業の付加価値創出額」「勤労者世帯可処
分所得」の5指標を加え、より多面的に地域の幸福を考察する枠組みを構築した。

ランキングは、65指標それぞれの値を比較可能な数値(標準変化量)に置き換え、均等加重により合計した値で算出している。なお、2016年版のランキングは、2014年版からデータ更新可能な45指標を更新している。

次にランキングの結果について解説しよう。まず福井県が、2014年版から引き続き1位となった。東京都も前回に引き続き2位となり、富山県が3位となった。

■なぜ福井県民がもっとも幸福なのか?

福井県は、仕事分野と教育分野が1位であり、生活分野の個人(家族)領域で2位であったことが、総合順位1位に大きく貢献している。特に、教育(入口)と雇用(出口)が両輪で安定していることが、県としての総合力の高さにつながっているものと考えられる。

東京都は、基本指標と文化分野で1位であることが強みである。文化分野は、余暇・娯楽領域、国際領域でともに1位であり、他を寄せ付けない水準を有している。富山県は、生活分野が1位で、教育分野が3位である。前回8位であった仕事分野が今回5位に上昇し、総合順位を前回の5位から上昇させた要因と考えられる。

全体的に、仕事分野で上位に位置する都道府県が、総合ランキングでも上位となる傾向を見てとることができる。

高知県、沖縄県、青森県がそれぞれ47位、46位、45位となっているが、いずれの県でも仕事分野と生活分野で苦戦している様子が分かる。しかしながら、個別指標を見れば強みがあり、例えば、沖縄県であれば「人口増加率」や「外国人宿泊者数」が1位と、他県がうらやむような結果も出ている。このことから、それぞれの地域の強みを地域の総合戦略とリンクさせていく視点が重要と考えられる。

現行指標ランキングは、2014年版に引き続き北陸3県の福井県、富山県、石川県がそれぞれ1位、2位、3位と上位を独占し、北陸3県は安定した日常を維持できる環境が整っていると言える。先行指標ランキングは、2014年版に引き続き東京都が1位となった。2位が島根県、3位には長野県が入った。

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