6秒で世界を笑顔に Vineで話題の「おもしろすぎるJK」の日常

「このJK、おもしろすぎる」――ループ動画サービス「Vine」で大げさな表情とコミカルな動きで数秒の「あるある」ネタを披露する女子高生が話題を呼んだのは昨年12月半ばのことだった。日本だけでなく世界中に一気に拡散し、反響の大きいものは4万回以上もツイートされることも。一躍人気者になった彼女のTwitterのフォロワーは16万人を超えた。
【動画:思わずくすっとしてしまう「あるある」ネタで人気に】
 「見てるだけで楽しい、元気が出る」「何を言ってるかわからないけど面白い」など多数のコメントは国内の有名人や海外からも寄せられている。たった6秒の動画で独自の世界観を作り上げている日本人の17歳が、大関澪花さんだ。
●きっかけは「暇だったから」
 「Vine」は米Twitterが運営する最大6秒のループ動画を作成・共有するアプリ。昨年1月にサービスを開始し、約半年後の8月時点で4000万ユーザー突破を発表するなど急成長中。日本でも特に若年層を中心に人気が広がっており、10代の認知度(22.5%)は30代(4.2%)の5倍以上という調査結果もある。
 高校2年生の大関さんがVineに投稿を始めたのは昨年12月の初めのこと。きっかけは「テスト期間中、あまりに暇だったから」。Twitterのタイムラインに流れてきた同世代のユーザーの動画を見て興味を持ったという。これまで特に他の動画サービスに投稿していたわけでもなく「部屋で1人でiPhoneで、ノリと勢いだけ」でスタートした。
 当初は学校の友人からの反響程度だったが、徐々に拡散されるように。彼氏、友達とそれぞれディズニーランドに行った時のテンションや態度の差を示す動画が「おもしろすぎる」と話題になったことで一気にフォロワーが増え、Vineの動画にも各国語でコメントが付いた。アカウントを開設してからほんの2週間ほどのことだった。
 あっという間に世界中から注目を浴びるようになった現状を、「普段、休み時間に教室でやってるようなことを切り取っただけですけどね、まさかこんなにウケるなんて」とあっけらかんと笑う。彼氏の前と友達の前での女子の態度の違い、「雪の日」「宿題」などを題材にした小学生・中学生・高校生のリアクションの違いなど、誰もが「あるある」「わかる」と思える日常のシーンを切り取っているシリーズが好評だ。ネタは普段からストックしているわけではなく、撮ると決めた時に勢いにまかせてまとめて数個作成するという。
●うれしいのは気が合う友達ができたこと
 幼いころから人を笑わせるのが好きで、学校の先生や友人、祖母や母、兄など身近な人の口調や仕草を次々ものまねしていた。声色や表情を変化させて複数のキャラクターを数秒ずつ演じ分けるおなじみのシリーズも、「こんなことあったよな~、をこれまでの経験から引っ張り出して」作り上げているという。「考えすぎると思いつかない」と言いつつ「ネタがなくなるってことはないと思います」。
 多くの人に見てもらえること、数秒で笑ってもらえることはうれしいと話すが、有名になりたい欲や成り上がろうとする気持ちは特段ない。Vineを始めて一番よかったことは? という質問には、フォロワーが増えたことでも注目を浴びるようになったことでもなく「学校の外に同世代の気が合う友達ができたこと」と話す。
 「自分がVineに投稿するきっかけになった憧れの子も含めて数人のVine投稿者でLINEグループを作ってチャットしてるんです。話してるのはくだらないことで……キス顔や変顔の自撮りをお互いにあげたり。多分、面白いと思う感性が似てるんですよね。実際にオフラインで会ってる子も何人もいます。Vineを始めて、いい友達ができてよかったです」(大関さん)
●“顔出し”は怖くない
 昨年相次いだ、コンビニや飲食店での不謹慎行為による炎上事件を筆頭に、スマートフォンやSNSの普及に伴う青少年のネット利用に関する事件も目立つ。大関さん自身は“顔出し”で動画を載せることには当初から抵抗や恐怖はなかったという。彼女のVine仲間も全員が顔を出している投稿者だ。
 「当然、特に親には伝えずに始めたんですけどいつのまにかバレてて。母や大学生の兄には『顔も名前も出して大丈夫なの?』って最初はかなり心配されました。でも、悪いことや危ないことはしていないし、見た人を笑わせているだけなので、問題になりようがないよなって。隠す必要を感じないというか……。誤解されそうなことは悪ふざけレベルでも絶対やめようって気持ちではいます。判断するのは自分じゃなくて見てる人じゃないですか。細かいことで言うと、屋外でも家の前でも場所が特定されるような場所では撮らない、とか自分ルールは決めてます。まぁ、引きこもって撮ってるとほとんど自分の部屋しか映らないんですけどね」
 海外ユーザーによるVineの人気動画の中には、動物や子どものほのぼのした動画、アイデアが光る一発ネタなどに並んで、電車内やスーパーマーケットでふざけたり、街中で通行人に過激なドッキリをしかけるなど迷惑行為寸前に見えるものもある。
 「そういうのが無邪気にLike(いいね)されて拡散してるのを見ると、海外とは温度感が違うなとは思います。お国柄なんですかね。Vine仲間とも『これ、日本だったらすぐ炎上するよね』とか話します。顔出し自体には怖さはないですが、お互いに気をつけてる感じはあるかも」
 Vineはもちろん、Twitterやツイキャスでも顔を出して発信しているため、買い物中に声をかけられたり、写真を頼まれることもあるという。同世代に大人気の彼女には、10万人以上いるフォロワーから「コラ画像」がよく送られている。「修学旅行中、寝顔が朝青龍に似てるって言われたって話を動画の中でしたら、私の顔を力士に当てはめたやつがたくさん来て。17歳女子に対してひどくないですか? ……いや、遊んでくれてうれしいんですけど!」
●娯楽はほとんどスマホの中
 大関さんが初めて自分の携帯電話を持ったのは高校生入学直前で、周囲の友達と比べて早くもなかった。もちろん初めて持った携帯電話がスマートフォン。友人とアプリを教え合ったり、端末で動画を見るのは当たり前だ。PCは普段ほとんど使わず、暇な時間を過ごす娯楽のほとんどはiPhoneを通してだという。インターネットやガジェットに強く興味を持ってきたわけでもなかった。
 「よく見るサイト、は特に思いつかない……Twitterのタイムラインに流れてきたものにアクセスする感じ。RTされてきた画像や動画を見たり、URLに飛んだり」と話す通り、一番ヘビーに使っているツールはTwitter。Vineの動画はアプリ上でURLの遷移なく再生できるのも最初に興味を持った大きな要因という。拡散力も強く、RTやお気に入り、リプライで反応がダイレクトに見られるのも気に入っている点だ。
●「普通ですよ、普通」
 好きなアーティストは「神聖かまってちゃん」「One Direction」、好きな漫画は「進撃の巨人」「浦安鉄筋家族」、好きな映画は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ、好きな芸能人は「岡田将生くんと山崎邦正さん」、よく見るテレビは「そんなに見ないけど……『キスマイBUSAIKU!?』は毎週母と並んで見てます」、「もうすぐ高3なんて今日で習い事やめるんです」――時折冗談を交えながら明るく話す。
 「悩みかー、そうですね、うーん、これから彼氏できなかったらどうしようって。えっ、笑いごとじゃないですよ。だって、いいなって思った人に『あ、あの6秒の』って言われたらもうそこで『あ、終わったな』じゃないですか! 動画では叫んだり変な顔したりしてますけど普段あんなにテンション高くないんですよ~。もう、普通の高校生です、本当に普通すぎて」
 Vineの魅力の1つは、世界中の人の「普通」があふれていることと言う。「Vineの楽しさを一言で言うと、なんだろう、見ればわかります! 見なきゃ伝わらない。6秒の動画をたくさん見ていくうちに、自分でもやりたい気持ちになってくるんです。身近なものを気負わずに気軽に上げられるのがいいところ。でも、短い時間の中でも案外しゃべれるし動けることが分かると工夫しがいがある」
 Vineを通して外国語のコメントを読んだり日常的に英語の会話や音声を聞くようになったことで、もともと持っていた海外への興味は強まり、「iPhoneから世界が広がった」という。
 「『普通の高校生』が友達を笑わせる感覚でたくさんの人に笑ってもらってるってすごくないですか? 海外の人なんて何言ってるかすらわかってないですもんね。『勢いがいい』って、なんだそのコメント! とりあえず面白い顔と面白い声してればいいんだろ! みたいな(笑)。世界中の人を笑顔にできてる……っていうとかっこつけすぎですけど、楽しんでくれてるのがわかるし、私もやっててすごく楽しい。特に目標もなく、ただ楽しくこれからもマイペースに続けていきたいです」

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